謎を提示して、それを探求していくことは、
ストーリーでよくあることだ。
それをうまく書くには、
「いまどこまでが謎で、どこまでが分かっているのか」
を正確にとらえておくことだ。
新しい謎をつくり、それを追及していくうちに、
新しいことがわかり、展開していくことは、
ストーリーの醍醐味でもある。
それはどうやってつくるべきだろうか?
「こういう状態からはじまって、
こういうことを知り……」
と計画を立てていく。
「実は全貌はこういうことだったのだ」
と全体の「設定」をするのは当然として、
「この時点で、ここまでしかわかっていない」
「この時点でこれを知り、
それを前提としたこのような行動が当然となる」
という「計画」を立てることである。
たとえば、
ある犯罪を暴こうとする話なら、
「手がかり1」「手がかり2」
「最初辿り着いた仮説」
「それをひっくり返す手がかり3」
「誤った逮捕で真犯人を逃した可能性」
「最初の手がかり1が誤っていた」
「その仮説に基づいて新たな手がかり4を入手」
「真犯人に接触」
などの展開があるだろう。
これらを「知っている前提」と、
「知らない前提」を、
自分の中で整理できているかが、
ストーリーをスムーズに整理出来るか、
ということと関係する。
全貌を分ってしまうと、
なかなか途中の「これを知っていて、これを知らない状態」
を想像することが難しい。
これゆえ、
「最初から順番に書かないと分からない」
として、ストーリーを練ることなく、
ただ書きだしてしまって、
失敗することは稀によくあることだ。
そうではなく、
頭の中で自由にストーリーの時刻をうごかして、
「この時点ではこれを知っていて、これを知っていない」
という状況を、想像しきれるか、
ということが大事だ。
犯人追及のストーリーばかりではなく、
たとえば世界の真実を知っていく、
マトリックスでもそうなっていることをチェックされたい。
ネオがこの世界の在り方に疑問を抱いている初期状態
白いウサギで呼び出されたとき
口を塞がれ海老を放り込まれたとき
赤い薬と青い薬の選択を迫られたとき
ビルを飛ぼうとしているとき
カンフーを学んでいるとき
裏切者タンクを知らない状態のとき
エージェントとの闘いで、ようやく覚醒したとき
これらの状態で、
「マトリックスの何をネオが知っているか」
を確認しよう。
人は、あることを知ったら、
世界が変わってしまい、
知る前にはなかなか戻ることは難しい。
観客はそうでよいが、
作者はそうはいかない。
リライトしたり、ストーリーを再編成しなければいけないからだ。
その為には、
どの時点で、何を知っていて、何を知らないかの、
リストを書きだし、
混同しないようにしたり、
知る順番を変えたほうが、
これを省略したほうが、
これを追加したほうが、
おもしろくなるぞ、
などと判断できるようになっているのがベストだ。
そのためには、どういう情報を与え、
どういうことを把握(誤解も含む)させるか、
という表が必要だろう。
この整理が出来ていないのに、
自由に情報を与え、混乱させ、楽しませる、
ストーリーのコントロールができるはずがない。
練られたストーリーは、
このようなことを整理しながら、
何回も書き直されている。
一発書きではたどり着けないやり方で、
練られているのだ。
謎はストーリーの推進力だ。
上手に使えば、
謎がどんどん明かされ、
世界の一端が見えていく話はおもしろい。
上手に使えなければ、
混乱するだけの一発芸にしかならないだろう。
「この時点でこのキャラクターはこれを知っていて、これを知らない」
ということはとても大事だ。
もちろん、謎を追及する話だけではなく、
「誰と誰がつきあっている」
「実は部長が横流ししている」
などの情報や秘密の共有などは、
ふつうのストーリーにも必要な部分だ。
「どの時点でどう知ったか」も重要。
すでに知っている体なのか、
きちんと知るシーンを作るのかは、
作者のコントロール下である。
知らない時点なのに知っている前提で動くのは変だとか、
知っているはずなのに知らない前提で動くのは変だとか、
そのようなシナリオ上の誤りは検出していかないといけない。
(初稿では分っていても、リライトしまくっていくと、
それらが混同することが、とても多い)
その為の一気読みなどのチェックは重要である。
2019年09月22日
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