>物語は変化ですが、例えば先日観たマンチェスター・バイ・ザ・シーという映画の主人公は…
…そもそも主人公が原因で、同情できません。(しかも、最後まで変わりませんでした)
…それでも敢えてこういう魅力のない主人公を据えるとしたら、どうやって彼のこの先を観たいと感じさせればいいのでしょうか。変化の振れ幅が激しいほどドラマチックになりますが、匙加減が難しいとふと思い、書き込ませていただきました。
よくある手ですが、
「主人公以外の人物が変化するようなドラマ」を作れば、
この先を見たいと思わせることが出来ます。
つまり、主人公Aへの興味ではなく、
他の人物Bへの興味で引っ張るパターンです。
バディもの、ヒーローものによく見られます。
探偵物やヒーローものでは、
すでに完成されたすごいヒーローが主役になることがあり、
ちょっとやそっとでは変化しません。
なので、それより弱くて吸収するスポンジのような人を、
実質の主人公Bに設定することがあります。
探偵物では、依頼人のほうが実質の主人公だったりすることは、
よくあることです。
弱い依頼人が、依頼から解決の事件で何か小さな活躍をする事で、
依頼する前より良い変化をしていると、
なんだかスッキリするものです。
バディものでは、真ん中にいるAより、
相棒Bがいろいろ立ち回って、変化を経験することが多く、
その成長がメインドラマになったりします。
また、
共感できない、酷くて変化しない主人公だとしても、
物語の最初の方で、
「このAは一生変化しないが、
勝手に関わる相手が変化してしまう、
不思議な存在である」
ということを示すと、
Aの変化が焦点にならず、
関わる相手、BやCのドラマに焦点が移るので、
Aにかまける必要がなくなるでしょう。
最初の方で「これはそういうものだ」と示すことで、
「だとしたらどういう面白さがあるのか?」
の一例を見せて、
「もっとすごいことになるよ」とヒキを作っていくことです。
それは冒頭(遅くとも8分以内)にわかるといいでしょう。
「この物語の仕組み(楽しみ方)はこうである」
を示すほうが、
観客も居処を見つけやすいでしょう。
上手なチュートリアルが参考になるかもしれません。
ディズニーのアトラクションとか、
任天堂ゲームの1面とか。
「これはそういうものだ」と理解できれば、
「じゃあこの先はどうなる?」
の見方が分かってくるというものです。
極端な例では、
「強化遠近法」という独自のルールを使ったゲームに、
Museum of Simulation Technologyという個人制作ゲームがあります。
https://www.hmv.co.jp/newsdetail/article/1606245027/
非常に言葉で伝えにくいので、映像を見てください。
それがどういうものか分かれば、
次の仕掛けがたのしみになるものです。
また、ストーリー上の仕組みではなく、
テクニックで躱す手もなくはない。
もしそれを監督しなければならないとしたら、
僕はたとえば、
「彼は誰にも見せないが、
一人で木彫りの人形を作っていて、
100人のジオラマを完成させようとしている」
みたいなのを、
随所に挟んで時計がわりに使うと思います。
彼の表面に見える言動と違う軸をつくって、
そっちを見るべきものに変えてしまう、
という小技ですね。
(それが何を意味するのかとかは、本編を見てないのでわかりませんが)
私は大岡様の仰る変化を、狭義に考えすぎていたようです。主人公が変わったか変わらないかではなく、物語としての変化が描かれていなくてはいけない、という理解で合っているでしょうか。
強化遠近法拝見しました。とてもシュールです。ホラー要素を加えて切迫感を持たせたら、もっと面白くなる気がします。
話は変わりますが、うしおととらの作者、藤田和日郎さんが書かれた「読者ハ読ムナ(笑)」という物語論が発売されているのですが、大岡様がこのブログに書かれていることと通じるものがあり、とても面白かったです(キャラクターのプロフィールをいくら作っても、物語は走らない等)。お時間がありましたら、是非。
クレジットの一番目に来て、一番アップが多く、
一番出番があって、一番スターがやっていて、
最初から出ずっぱりだとしても、
主人公とは限らないということです。
もちろんその人が主人公のほうが理想であり、理論的解答ですが、
教科書と実戦は違うのはどこの世界でも同じでしょう。
型通りに組手は行かないものです。
荒木飛呂彦の漫画論も面白かったですよ。
皆さんどこかしらで何かしらの物語論を読むなり名作から吸収するなりして、
自分なりの抽出物を作るのだと思います。