2019年10月24日

スプレッドの何が良くないか

広げることに酔っていること。

旅行ガイドを広げてワクワクしていることに似ている。
仮に日帰りならば、一箇所しか行けないのに。


スプレッドとは、
ある条件下のバージョン違いを広げて、
ひとつずつ示していくことだ。

広げた瞬間が一番ワクワクして、
それらを眺めることにもワクワクするが、
実際それを一個ずつ展開していくと実に退屈だ。

(その最たるものは、
「We are little zombies」の、4人の生い立ちのパートだろう。
苦痛のレベルに達したスプレッドを体験しておくべき)

なぜだろう?

「広げた瞬間」がピークで、
一個一個の体験は実に小さいからだ。

つまり、
「広げた瞬間の出落ち」がスプレッドなのである。


「最強の八将軍登場」がピークで、
ひとつずつはそんなに面白くないのは、
そうした理由だ。

その地獄巡りがストーリーになっている、
つまり1が2へと変化し、3へと変化し、
それらが必然性という強い糸で関係しているなら、
それは面白くなる。

しかし大抵は、
1が終わったらまた別の1がはじまり、
終わったらまた別の1がはじまる、
展開していない感覚になるから、
面白くないのである。

(ちなみに原作「風魔の小次郎」の八将軍は、
それを察したのか、1対1ではなく、複数の戦いになり、
8でなく3にブロックを圧縮している。
(項羽戦、霧風戦、飛鳥武蔵を挟んで、最終決戦)
その間に仲間が死に、聖剣が登場するなどの、
主筋の展開があるような構造を取っていることに注意されたい)


仮にガイドブックに載っていることは、
どこへ行っても一日かかるようなものだとしよう。
それらを並べてワクワクしている時が一番ワクワクする。
実際の旅行は一日だけなのに。
仮に3日、7日にしたとしても、
初日のような体験が毎日続くだけで、
そのうち飽きてくる。

それは、ガイドブックを広げた時のワクワクとは、
質が異なることに留意されたい。


週刊連載で四天王などに話をスプレッドするのは、
あくまで引き延ばしのテクニックに過ぎない。

映画シナリオは最短距離で進むべきで、
寄り道などしている場合ではない。

スプレッド展開とは、
終わりのない、ただの寄り道だ。
posted by おおおかとしひこ at 02:34| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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