2019年11月03日

男女で見方が大きく変わるかもしれない(「ジョーカー」批評5)

後輩(女性)がジョーカーを見て、
アレの何がいいのか分からないと、論戦を仕掛けてきた。
「もっと現実は傷つけられる。
この程度に傷つけられて、
なんの努力もしないやつが、
ジョーカーになって満足など、生ぬるいのではないか」
という感想だった。


同様の感想を、この女性も持っていた。
https://note.mu/kasa_sora/n/n8554d186e08e
つまり、
世の中の女性が置かれている立場は、
恐らく我々男が想像するよりも過酷なのかもしれない。
あの程度で傷つくとは、生ぬるいと、
現実でなんとか戦おうとしている女性は思うのかもしれない。

努力しても得られない現状があるから、
「本来与えられたはずのものが与えられない」
という苦しみを、生ぬるいと思うのかもしれない。

我々男子には、まだ絶望が足りないかもしれない。
男子の社会は、マウントが女子よりきつい。
あれが男子の最底辺で、
男のプライドが最も傷つけられている状態だといっても、
女子は信じないかもしれない。

現代の男は、この状態になると、
何を努力しても抜け出せない、
その泥沼が問題だということを、
どう説明していいかわからない。
そもそもどこから何を努力していいか分からない。
女子もそうかもしれないが、そこまで僕は女子の人生を知らない。

現代の女子のほうが輝いて見えるが、
それは努力した女子なのか、
少し考える。


ただ、アーサーは少なくとも二人の女子に理解されなかった。
ホテルに連れ込まれそうになった女子は、
男子にも理解できるし、訴えることも出来そうだ。

世の中に捕まるところを持たなくなり、
コースから外れてしまって、
訴えても理解されない男子のことは、
女子は理解しないかもだ。
その、誰にも理解されない、
断絶の物語だったかもしれない。
posted by おおおかとしひこ at 01:57| Comment(6) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
健全な人の視点だと思いました。
自分が健全で普通だからこそ、
「この程度」「なんの努力もしないで…」と思えるのでしょう。
でもこの世界には普通の努力ができない人がいます。
「この程度」で死ぬほど傷ついてしまう人もいます。
健常者から見たらそういう人たちは「異常者」でしょう。
でも、どんな時代や社会でも、そういう
異常者は絶対に存在するし、いなくなることもない。
そういう層が怪物になってしまう様を描いているからこそ
ジョーカーという映画は恐ろしいし意味があると思うのです。
Posted by ナイフ at 2019年11月03日 21:17
ナイフさんコメントありがとうございます。

僕は後輩は、
「努力しろ」と言われ、もっと傷ついてきて、
しかも報われてない人間だから、
余計に癇に障ったのでは、と深読みしています。

さらにいうと、
「普通なんていない。
世の中には三種類の人間がいる。
上級国民と、だめなやつらと、その中でラッキーカードを引いてジョーカーになるやつだ」
ということを、この映画は言っているように感じました。
比率は、1:9:0.000001くらいな感じで。
Posted by おおおかとしひこ at 2019年11月03日 21:56
ははは。

アーサーが最後に諦めたように

「……理解できないさ」

と言う理由が分かる。


弱者は普通に生きようとしている。

しかし、弱者の事を理解しない強者たちに追い詰められて、

馬鹿げた理由で犯罪者になってしまう。


犯罪が起きてもなお、

強者たちは弱者を理解しない。


だから弱者も強者たちに理解してもらうのを諦め、

報復に出て、本当の悪人になってしまう。



そんな話を120分かけて見てもなお、

アーサーを理解しない人たちがいる。



「……理解できないさ」というセリフは、

対面しているカウンセラーに対するものであると同時に、

この作品を理解できなかった人たちに対する嫌味や皮肉である。



この作品を理解できない人がいる限り

悪人は生まれ続けるだろう。


この作品を観て

「悪人を生み出さないために、弱者を理解して力になってあげよう」

とならないのが悲しい。

Posted by 無理解が悪人を生む at 2021年10月24日 05:28
>無理解が悪人を生むさん

コメントありがとうございます。

あとで知ったのですが、
アメリカではこのような弱者男性が、
トランプ政権を支持したのだそうです。
Qアノンはそうした部分の尖った部分なのでしょうかね。
選挙戦での突撃ぶりは、多くのジョーカー達によるものだったのかも知れません。
バイデン政権になってから、彼らはどこへ行ったのかは分かりません。

日本では、20代男子の3割が童貞なのだそうです。
氷河期から非正規問題を経て、這い上がれない格差社会。
共産主義革命は遥か昔の理論になってしまい、
弱者を踏みにじる新自由主義の天下なんですかね。

僕は男なので彼らのことを肌で感じますが、
弱者女性はどうなんでしょ。
女同士は女同士でマウント取り合ってるように見えます。

格差是正に対して、「必死で働かないやつらを救う必要はない」
という論調があるのも、
新自由主義だなあと思います。
Posted by おおおかとしひこ at 2021年10月24日 09:22
私の伝え方がよくなかったですし、女性への配慮もありませんでした。

それぞれの立場・それぞれの人に・それぞれの理解されない苦しみがあると思います。

身近に苦しんでいる人がいたら理解して力になってあげてください。
Posted by 無理解が悪人を生む at 2021年10月27日 16:55
>無理解が悪人を生むさん

僕は「理解できない」を前提にした方がいいと思ってますね。
忖度や配慮を無限にやるのは無理だと思うので。

理解できないし仲良くもなれないけど、
最低限ここは守りましょう、
で運営していくのが真の多様性社会だと考えます。
敵や殺人鬼が隣にいても構わない、という考え方ですね。
それが幸福な社会か、
という問題は残りますが。
Posted by おおおかとしひこ at 2021年10月27日 17:04
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