第一世代が、今までなかったものを初めてつくり、
ああでもないこうでもない、これがいいぞ、やっぱこれか、
などと工夫してある程度の完成品を作る世代だとして。
それを経験してない世代が第二世代。
つまり、既にあるものを「どうやらいいらしい」と噂だけ聞いて、
使っていくだけの世代と仮定する。
第一世代のつくったものを、
完璧な理解で使うわけではない。
自分の文脈で使うだけだから、
改良もしない。
合わなかったら捨てるだけのことだ。
使うそれは、完璧とは限らない。
ある程度の欠点が必ずある。
それを作るときには想像もしてなかった欠点もあとで見つかるし、
こういう使い方は想定してなかった、
ということもある。
仮に、左右分割キーボードがそれに当たるとしよう。
第一世代は、
これまでの一体化型キーボードでは背中が丸まり、
肩こりに悩まされていた。
これを解決したのが左右分割だ。
しかしこれは何もかも解決する夢の道具ではない。
ケーブルの取り回しが面倒だし、
Bluetoothにすれば遅延や電池の問題
(反応が良いことと電力消費は比例。
たくさん積めば重くなる)があるし、
ブラインドタッチが前提だ。
第一持ち運びが面倒だ。
僕はタブレットとそのケース、
左右キーボード、間のケーブル2本(マグネットコネクタ付)、マウスと、
それらのケース、
計2ケース持ち歩くことになる。
第一世代なら、これらの欠点を承知しながらも、
「一体型を持ち歩いてずっと打ってて肩こりに悩まされること、がない」
ことを利点と考える。
「他はないのか?」と工夫して、
とりあえずたどり着いた標準だからだ。
しかし第二世代はどうだろう。
仮にそんなに長時間打たない人が使っても、
左右分割は面倒なだけだ。
ブラインドタッチが出来ない人は、
視線を左右に渡らせ、かつ画面も見ないといけないから、
余計肩が凝るだろう。
これがいいはずがないと放り出して、
一体型キーボードに戻ってしまうに違いない。
第二世代はつまり第一世代の前提と異なる文脈からやってくる。
「なんだかいいらしい」と伝えるのではなく、
「肩甲骨が開くからいい」と最低でも伝えるべきだ。
そこには「肩が丸まる長時間はキツイ」が裏に含まれているからだ。
qwertyローマ字の第一世代は、
「カナ入力(JISカナ)よりまし」
という前提があったかも知れないが、
第二世代はカナ入力自体を知らない。
あまつさえカナ印字のないキーボードが、
そろそろデファクトスタンダードになってるんじゃない?
PC入力は、第三世代なのか第四世代なのか知らないけど、
「カナ入力よりまし」だから、qwertyローマ字を使っているとは思えない。
ましてや、「日本語入力には複数やり方がある」
ことも知らないかも知れない。
「PCで日本語を入力する唯一の方法がqwertyローマ字である」
とすら思っているかも知れない。
マイクロソフトのワードは、デファクトスタンダードのエディタだが、
エンジニアとライターをのぞけば、
ほぼ100%が、
「PCで日本語を入力する唯一の方法が、
qwertyローマ字でワードを使うこと
(メールや検索窓は別)」
だと思っている可能性は高い。
秀丸エディタ?さくらエディタ?メリー?iText ?TATEditor?
そんなものインストール禁止!
ってなるんじゃないかな。
(PCはインストールして使っていくのが前提だろうに、
セキュリティとか言い出してから腫物になってしまったね。
この問題はまた別の問題だが、
セキュリティ第二世代になってしまったといえようか)
デファクトスタンダードは、
こうして、
第一世代の考えたこと、やったこと、
何を覆そうとしてそれをしたか、
承知していた欠点、知らなかった欠点、
などを継がずに、
出来上がるのではないか?
qwerty配列の物理がなぜ左にずれているのか?
タイプライターのハンマー(キーの下についていて、
奥の活字と繋がっている棒)の干渉を避けるために、
段でずらしたからである。
「ブラインドタッチの空間把握に便利だから」ではない。
(格子配列やコラムスタッガードのほうが、
圧倒的に空間把握が楽である)
タイプライターのハンマーを知らない第二世代が、
「こうなっているから」とそれをそのまま使ったのが、
第三第四と受け継がれて、
もうわけがわからなくなっているだけだ。
qwertyローマ字の前に、
M式、親指シフト、JISカナ、新JIS、物理漢直パネルがあったことは、
第二世代以降は知らない。
連文節変換や予測入力がなかったことを知る世代も、
そのうちいなくなるだろう。
車のペダルもかつて三つあったことを知らない世代も増えるのだろう。
こうして、第何世代かが、
よくわからないものをよくわからないまま使う、
漫画のような光景が、
今のPC入力ではないかと僕は思う。
変換キーも無変換キーも何に使うか、
5%の人も知らないのでは?
XFERとNFERを知ってるのはもっと少ないでしょう。
レガシーがレガシーとして継がれていないと、
デファクトスタンダードは覆らないのではないか?
「これはこうするためにあるのだとしたら、
こう改良すればもっとこうなるのでは?」
が思いつかない限り、
デファクトスタンダードは覆らない。
qwerty配列の左ズレはハンマー避けの為にあると知れば、
「もうそんなんいらんやんけ」と、
誰もが思うだろう。
「ズレが丁度ブラインドタッチにいいんだよ」派には、
格子配列やコラムスタッガードや3Dキーボードがオススメだろう。
そもそもキーボードで文字入力することが、
やめるべきことかも知れない説もあるけれど、
音声入力が使えない場面は多いし、
新下駄や飛鳥や薙刀式などの新配列で打てば、
音声入力より確実でイライラしない。
(速度は練度による)
キーボードの物理と、入力の論理が、
今見直されている。
僕からはそう見えている。
デファクトスタンダードを崩せるのは、
「これなんのためにこうなってるんだっけ」
を疑問に思い、知ることで、
次に改良することだと思う。
僕はリアルフォースやhhkbが文字入力装置の最高峰だとは全く思っていない。
伝統的qwertyの最高峰だとは思うが、
コルネやミニアックスに全然負けていると思う。
個人開発だから供給量が少ないだけで、
量産できれば欲しい人はもっといるだろう。
メンテができる人向けだから、
ほんとに普及するには、
ナショナルのお店のような、きめ細かい基地サービスが混みになるだろうけど。
遊舎工房がいつかそうなったら、面白いんだけどなあ。
そういう意味で、僕は今時代の最先端のひとつに確実にいる。
日本の大企業が倒れるまであと少しだろう。
公的資金投入が切れれば、カンフル無しで生き続けられない患者に戻るだけだ。
その時、デファクトスタンダードの壁が、
ベルリンの壁のように崩れると思う。
字を書くことは、
人間の本質のひとつだ。
おそらくこれからしばらくは、フリックがデファクトスタンダードになる。
それで「長い思考」の伝承が途切れつつあり、
180字の思考が第二世代になってしまうかもしれないね。
僕は、薙刀式とミニアックスとその他を使って、
糞みたいな無用の道具には触らない。
第一世代で居続ければ、
無教養で思考停止の第二世代にならなくて済むと思う。
2019年11月17日
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