究極最終版をやっと一気読みできたのだが、
風魔の面白さは、密度なんだなあと思う。
週刊連載ゆえのテンポの良さは、
ストーリーの転換(ターニングポイントと技術的にいう)
に支えられていると感じた。
たとえば八将軍勢揃いしたところ。
普通ならこれから戦いが始まるための顔見せに過ぎないのに、
そこに突然小次郎が割って入って(ターニングポイント)、
ストーリーを速くする。
と思いきや風魔一族も現れ(ターニングポイント)、
しかも不知火が死ぬ(ターニングポイント)。
こうと思わせてその先を行くのが、
とても速い。
さらには一旦引いた(ターニングポイント)と思ったら、
一人、すなわち白虎に追いつかれる(ターニングポイント)。
さらには項羽は死ぬ(ターニングポイント)し、
紫炎も死ぬ(ターニングポイント)し、
白虎は項羽の顔を盗む(ターニングポイント)。
この怒涛のストーリーの折れ線の、
密度が非常に濃いと感じた。
これは車田先生の、
豪快で単純な線なのに、繊細で密度が濃い絵柄と、
関係しているように思う。
適度に省略が効いた豪快さ、
セリフや擬音の勢いと、
細かい密度の繊細さが、互いを補っていると思う。
省略が効いているからこその折れ線の速さで、
それは週刊連載(大体19pなんだっけ)の、
テンポを知り尽くした感覚なのかも知れない。
これを30分13話に再構成することは、
事実上不可能だ。
1話あたりの密度、折れ線の感覚が違う。
30分の集中力と漫画3分程度の集中力が、
違いすぎると感じた。
(実写ドラマにしてはよくやった方だとは思うけど)
今回アオリが再現されたことで、
より「次週に続く」感が出て、
メリハリが効き、
あの週刊連載の「なにい?」「テンポはええよ!」
「速くもクライマックス!」
の感じがとてもわかりやすかった。
そうそう、こんな感じで振り回されてたなあと。
この時の振り回し方は、
「前倒し」という方法論かも知れない。
まだたっぷりあると思わせて、
どんどん使って行く感じ。
風魔の疾走感の正体は、そういうことかもと思う。
キャラの無駄使い(?)も、
前倒しによる圧縮によって、
ものすごく速く過ぎ去った感じになるのかも知れない。
それがあとに寂寥感や無常感になってくるのかもね。
(これは狙ってやったことか、偶然かはわからない)
で、それはある種のストーリードーピングで、
そのテンションが切れる時が来るわけだ。
華悪崇編で何回かそういう瞬間があり、
反乱編でブツ切れになったわけで。
絵柄の変化も影響していると思う。
夜叉編のような繊細なペンワークは、
反乱編にはほとんどなかったし。
密度の高まりが、そうやって失われていったのだろう。
それでも聖闘士星矢で復活できたのは、
テンポ感を変えてきたからなのだな、
と今ならはっきりと分かる。
(ギャラクシアントーナメントで、
またダメかって思ったけど)
JC版では、
「一続きのように編集する」ような意図が感じられた。
連載版と違って、全ページで一話みたいな編集。
一巻の終わりがちょうど「風魔一族!」という大ターニングポイントで、
めっちゃワクワクしたものだ。
(そういえばそのコマのシルエットは、
竜魔、項羽、劉鵬に訂正されてたね。
JC版初版では少なくとも全然違うシルエットだった)
実写版DVD一巻の終わりは、そこを当然意識している。
テンポ感、ターニングポイントは、
全体尺から逆算される。
文庫版は文庫版で区切りが違うから、
またテンポ感は違うかも知れない。
(今貸してるので手元にない…)
原作の版って、
ジャンプ連載版
JC版
文庫版
コンビニコミックス版(ドラマ化の時の)
究極最終版
だよね。
なんか全部比較したくなってきたぞ…
ジャンプ版をどうやって入手するかだな。
JC版(ほぼ初版)は実家にあるはず…
2019年11月21日
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