2019年11月27日

それはどういう話?

一言で自分の話をまとめるのは、物凄く難しい。
あれも入れたいしこれも入れたいとなって長くなる。

しかしあなたの話の本質をまとめる事は、
何が本当の背骨で、何が人を惹きつけるのかについて、
検討する事だ。


相変わらずロッキーを例にとろう。

ロッキーはどういう話?

色んな回答がある。別解を作ることもできそうだ。
シンキングタイム。












僕はこのようにまとめるかな。

「ボクシングで、負け犬が己を示す」話。

「ボクシングで」の部分がガワの魅力の部分。
「負け犬が己を示す」が本質のプロット。
これはログラインにも使えるし、
プレスリリースにも使えるし、
ツタヤの棚の一言あらすじにも、
YouTubeのタイトルにも使える。


他にも「ボクシングで、負け犬が己を示す」話はあるかもしれないが、
「このジャンルでのベスト」は、「ロッキー」だと思う。
(「ボクシングで、殺人を解決する」話、
「チェスで、負け犬が己を示す」話などの変形ではなく、
「ボクシングで、負け犬が己を示す」話の中のベストという意味)

つまり、
ここでやろうとしていることは、
あなたのストーリーのオリジナリティをも、
あぶり出そうとしていることになる。
その一言で言えるジャンルの、
同工異曲が沢山あるとしたら、
その中でベストであるような、
なにかを見つけなさいということだ。

仮に、
「男が敵を倒す」話を書いたとしても、
そのまとめ方なら他に名作が死ぬほどありそうだ。
しかし、
「男が屁で敵を倒す」話なら、
他にジャンルかぶりはなさそうだから、
もしあなたがそういう話を書いたのだとしたら、
そのジャンルで最高傑作である可能性がある。

つまり、
他と被ってない、どういう面白さがあるのか?
ということを、どうにかしてまとめる事をやろう、
ということなのである。


そこには、プロットの本質と、
ガワのマリアージュが恐らく必要で、
その本質をそのガワで表現している事は、
すごく面白そうだという予告になるべきだと思う。

このまとめ方のスタイルは、
脚本の専門家向けではなく、
脚本が読めない人に、表紙に一行でメモされるとしたら、
ということを想定したものだ。
口コミで伝わりやすい短さが必要で、
キービジュアル(ガワ)が想像しやすいものがベストだろう。
これをそのままコピペされて、
新聞記事に引用される場面まで想定しよう。
その映画を見てない新聞記者が、
その映画を見てない大衆へ伝える場面で使われる言葉であると。

それはキャッチコピーでもログラインでもなく、
「俺監督の最新作で、
『○○○○○○○○○○』のようなストーリーだ」
なんて二行程度で紹介されるまとめ記事を想像すると良い。
当然周囲には何本も映画記事があり、
他にスポーツ記事や芸能記事やエロ記事があるような、
雑多な中の、エアポケットのような場所で、
をなるべく想像しよう。

そんな時に、微妙な事は伝えられない。

だから、最も強い、ガワのキービジュアルと、
力強いプロット(動詞一語を含む)の、
マリアージュを見せておくのだ。


こういうことを何パターンか考えることで、
「自分のストーリーの本質とはなにか」
「外から見えてどう見えるのか」
を考えることになる。


翻って自分の「てんぐ探偵」を書こうとして、
「妖怪『心の闇』に囚われた人が、
天狗少年とともに心に火を灯す話」
などと書いてみたのだが、
これ、妖怪が落ちる瞬間、
「心に火が灯る」というキービジュアルがあった方が、
わかりやすくならないか?
などと、今気付いてしまった。

ああ、そういうことだったのか、と今腑に落ちた。

こうやって、既にあるものを外から見て、
改稿への手がかりを作ることも出来るわけなのだ。
(まじでこれはいいかもしれない)



勿論、プロットにあたる部分は、
逆境とそれを乗り越えるための動詞があるべきだ。
ガワにあたる部分は新しいものがベストだが、
古典的なものでも、
プロットとのマリアージュが面白そうであれば、
ヒキが強くなるだろう。

たとえば「サイコメトラーEIJI」は、
「サイコメトラーが、難事件を解決する」
以外に一言で説明できないが、
「サイコメトラー」という要素が新しかったから、
新しく見えたのである。
(実際の探偵事件のプロットがそこまで面白くなかったのが、
名作にまで昇華できなかった原因だろう)

これが、
「IQ300の天才物理学者が、難事件を解決する」
になったら、急にどこかでありそうになる。

ということは、もっと突っ込んで考えなければならない。
「天才物理学者が、ケプラーの法則を用いて殺人事件を解決する」
とかになると、「どういうこと?」というヒキが生まれ、
これは一言でまとめたものの中では強くなるだろう。
(実際にケプラーの法則では殺人事件は解決出来ないから、
あくまで例だ。
逆に、ケプラーの法則で解決できる迷宮入り殺人事件を作れれば、
江戸川乱歩賞まちがいなしだ)


「それはどういう話?」に答える、
もっとも的確な答えを考えよう。
間に専門家が噛まない、
素人が素人にコピペして流通するレベルの言葉を考えよう。

そのとき、アイデアは整理され、
外から見た骨格を、意識することができる。
「ということは、こうあるといいのに(こうあるべき)」
も見えてくるかもしれないよ。
posted by おおおかとしひこ at 11:29| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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