一言で自分の話をまとめるのは、物凄く難しい。
あれも入れたいしこれも入れたいとなって長くなる。
しかしあなたの話の本質をまとめる事は、
何が本当の背骨で、何が人を惹きつけるのかについて、
検討する事だ。
相変わらずロッキーを例にとろう。
ロッキーはどういう話?
色んな回答がある。別解を作ることもできそうだ。
シンキングタイム。
僕はこのようにまとめるかな。
「ボクシングで、負け犬が己を示す」話。
「ボクシングで」の部分がガワの魅力の部分。
「負け犬が己を示す」が本質のプロット。
これはログラインにも使えるし、
プレスリリースにも使えるし、
ツタヤの棚の一言あらすじにも、
YouTubeのタイトルにも使える。
他にも「ボクシングで、負け犬が己を示す」話はあるかもしれないが、
「このジャンルでのベスト」は、「ロッキー」だと思う。
(「ボクシングで、殺人を解決する」話、
「チェスで、負け犬が己を示す」話などの変形ではなく、
「ボクシングで、負け犬が己を示す」話の中のベストという意味)
つまり、
ここでやろうとしていることは、
あなたのストーリーのオリジナリティをも、
あぶり出そうとしていることになる。
その一言で言えるジャンルの、
同工異曲が沢山あるとしたら、
その中でベストであるような、
なにかを見つけなさいということだ。
仮に、
「男が敵を倒す」話を書いたとしても、
そのまとめ方なら他に名作が死ぬほどありそうだ。
しかし、
「男が屁で敵を倒す」話なら、
他にジャンルかぶりはなさそうだから、
もしあなたがそういう話を書いたのだとしたら、
そのジャンルで最高傑作である可能性がある。
つまり、
他と被ってない、どういう面白さがあるのか?
ということを、どうにかしてまとめる事をやろう、
ということなのである。
そこには、プロットの本質と、
ガワのマリアージュが恐らく必要で、
その本質をそのガワで表現している事は、
すごく面白そうだという予告になるべきだと思う。
このまとめ方のスタイルは、
脚本の専門家向けではなく、
脚本が読めない人に、表紙に一行でメモされるとしたら、
ということを想定したものだ。
口コミで伝わりやすい短さが必要で、
キービジュアル(ガワ)が想像しやすいものがベストだろう。
これをそのままコピペされて、
新聞記事に引用される場面まで想定しよう。
その映画を見てない新聞記者が、
その映画を見てない大衆へ伝える場面で使われる言葉であると。
それはキャッチコピーでもログラインでもなく、
「俺監督の最新作で、
『○○○○○○○○○○』のようなストーリーだ」
なんて二行程度で紹介されるまとめ記事を想像すると良い。
当然周囲には何本も映画記事があり、
他にスポーツ記事や芸能記事やエロ記事があるような、
雑多な中の、エアポケットのような場所で、
をなるべく想像しよう。
そんな時に、微妙な事は伝えられない。
だから、最も強い、ガワのキービジュアルと、
力強いプロット(動詞一語を含む)の、
マリアージュを見せておくのだ。
こういうことを何パターンか考えることで、
「自分のストーリーの本質とはなにか」
「外から見えてどう見えるのか」
を考えることになる。
翻って自分の「てんぐ探偵」を書こうとして、
「妖怪『心の闇』に囚われた人が、
天狗少年とともに心に火を灯す話」
などと書いてみたのだが、
これ、妖怪が落ちる瞬間、
「心に火が灯る」というキービジュアルがあった方が、
わかりやすくならないか?
などと、今気付いてしまった。
ああ、そういうことだったのか、と今腑に落ちた。
こうやって、既にあるものを外から見て、
改稿への手がかりを作ることも出来るわけなのだ。
(まじでこれはいいかもしれない)
勿論、プロットにあたる部分は、
逆境とそれを乗り越えるための動詞があるべきだ。
ガワにあたる部分は新しいものがベストだが、
古典的なものでも、
プロットとのマリアージュが面白そうであれば、
ヒキが強くなるだろう。
たとえば「サイコメトラーEIJI」は、
「サイコメトラーが、難事件を解決する」
以外に一言で説明できないが、
「サイコメトラー」という要素が新しかったから、
新しく見えたのである。
(実際の探偵事件のプロットがそこまで面白くなかったのが、
名作にまで昇華できなかった原因だろう)
これが、
「IQ300の天才物理学者が、難事件を解決する」
になったら、急にどこかでありそうになる。
ということは、もっと突っ込んで考えなければならない。
「天才物理学者が、ケプラーの法則を用いて殺人事件を解決する」
とかになると、「どういうこと?」というヒキが生まれ、
これは一言でまとめたものの中では強くなるだろう。
(実際にケプラーの法則では殺人事件は解決出来ないから、
あくまで例だ。
逆に、ケプラーの法則で解決できる迷宮入り殺人事件を作れれば、
江戸川乱歩賞まちがいなしだ)
「それはどういう話?」に答える、
もっとも的確な答えを考えよう。
間に専門家が噛まない、
素人が素人にコピペして流通するレベルの言葉を考えよう。
そのとき、アイデアは整理され、
外から見た骨格を、意識することができる。
「ということは、こうあるといいのに(こうあるべき)」
も見えてくるかもしれないよ。
2019年11月27日
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