2019年11月29日

初登場シーン

主人公を含め、
キャラクターの第一印象を決めるのは初登場シーンであるが、
出落ちになってはいけない。

挫折する多くの人は、第一印象だけ設定しておいて、
その後何にも活用できないことにあると言って過言ではない。
今回はとくにサブキャラについてこれを考えよう。


僕のオススメは、
まずそのキャラクターの設定をつくり、
そのうち最も大事な「目的」をつくり、
ストーリーラインを考え、
そのサブキャラの落ちまで考えてから、
改めて最後に第一印象を決めるエピソードを創作することだ。


仮に、
「空中から落ちてきた姫君」というのをファーストエピソードで思いついたとする。
これはラピュタのシータだ。

ここから性格などをある程度後付けで考えることは可能だが、
彼女の過去や目的を、
この時点から創作することはとても難しい。
飛行石を持つ王族の末裔、
ぐらいは考えついたとしても、
結局「悪の王にアイテムを狙われ、
あまつさえ結婚を迫られている」
という、カリオストロのクラリスと、
大差ないキャラクターになってしまっている。

シータとクラリスの何がキャラクター的に違うか、
という議論をしても答えはほぼない。
つまりシータはクラリスの使い回しだ。

もちろん、あなたが意図した使い回しをしたいのであれば別だが、
オリジナルのストーリーはオリジナルのキャラクターたちで勝負すべきだ。

つまり、
シータはサブキャラとして、
キャラクターメイキングに失敗しているといえる。


もしシータのサブキャラとしてのサブプロットを考えるならば、
ラナ(未来少年コナン)の、
海中キスに匹敵するような、
クラリスの屋根の上でルパンを抱きとめて落下を防ぐような、
中盤の活躍エピソードを創作できただろう。
「そうでなくては、
そのキャラの存在する意味がない」
と、本能でわかるからだ。

ところが初登場シーンをいい感じに作ってしまうと、
そこで創作した気になってしまう。
これが厄介なのだ。

だから、
「どう登場したかは置いといて、
中盤どういう活躍をして、
どういう行動をして、
なにが目的で、
最終的にその人の目的は達成されるのか?」
を、
先に考えるべきなのだ。

そのキャラクターの本編はその部分であり、
初登場シーンにないことは明白だからである。


この、サブキャラのプロットライン、
すなわちサブプロットを作れたとき、
初めて印象的な初登場シーンを考えれば良い。

そうすれば、
その初登場シーンで、その後使うべき伏線を逆算で仕込むべきだな、
ということを思いつけるからである。

シータの登場シーン、
「空中からゆっくり降りてくる」は、
とても絵になるしイコンになるほどの素晴らしい絵だけど、
それは伏線にもなんにもなっていない。
(たとえばシータはラピュタに残るから、
形見の飛行石をパズーの首にかけて別れるとしよう。
パズーはまるで最初にシータが降りてきたように、
ゆっくりと地上に降りてくる、
などのシーンをつくれば(地上に降りたら飛行石はバルスの影響で割れる)、
シータの登場シーンは伏線となったわけだ)

仮に頭と尻を上のように円環を閉じるように作っても、
間に「独自の活躍」がない時点で、
シータはクラリスやラナより出来は悪いと僕は思う。
(その代わり空賊ババアが活躍してしまっている)


もっとも、
大抵は初登場シーンを思いついてしまい、
その後書きたくなる原動力になることはままある。
だからそのやり方を否定するものではない。

だが、初登場シーンだけで終わってるキャラクターは、
いる意味がほとんどないことに気づかれたい。

その人は、どう登場したかではなく、
どのような行動をしたかで描かれるべきで、
それは独自の活躍の場面があるということだ。

で、それと初登場シーンがリンクしていれば、
伏線を綺麗に回収できるわけである。



初登場シーンから、中盤や落ちをひねり出しても良い。(難易度大)

初登場シーンを仮につくり、
中盤や落ちをつくり、
初登場シーンをそれに合うように書き換えても良い。(難易度中)

書き換えるのではなく、
映画史に残る印象的な初登場シーンを、
全部作り終えたあとで創作しても良い。(難易度大)

どんなやり方にせよ、
うまくいくのは、後者ふたつだ。
posted by おおおかとしひこ at 13:59| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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