RTC2019での手元を、会場で撮ったと思われる、
横からの短い動画を見た。
ああ、割と上から突き刺すように打っていて、
僕の物理的運動と違うぞ、ということがわかった。
仮にこれをスタンダード打ちということにしよう。
手首をつけようが浮かそうが、
パームレストを使おうが使うまいが、
そことは関係なく、
「手を構えた時、
掌は斜め30度くらいに起こされ、
指は丸めた状態(いわゆる猫の手)になり、
親指の関節も同様に丸め、
指を上から落とすように打つ」
やり方だ。
キーとの接触点は指先。
更に極端な親指シフトでは、
爪と指の間の肉の部分で打つ、
などと表現されることもあるくらい。
これは伝統的なピアノの打ち方と同じ。
ピアノでは打鍵の強さが音の大きさに比例するため、
フォルテやフォルテシモを弾くときは、
浮かせた腕の重さや体を使って弾く必要がある。
猫の手に保ち指先を落とすような打ち方は、
腕の重さを使うための手の内だ。
キーボードも最初これを模して作られたから、
メカニカル、メンブレン、静電容量式での打鍵は、
似たようなことになったのだろう。
去年は現場観戦したのだが、
その打鍵音は異常に煩かった。
隣でやってたら蹴りを入れるレベル。
30gだと指が壊れる。みんなハードヒッターで45gでも軽いかもな勢い。
短距離走がマッチョになるのと同じ原理で、
力を使って指が痙攣するくらい速く動かすためだろう。
僕の打ち方はこうではない。
いわゆる撫で打ちというやつだ。
僕はMacで育ったので、パンタグラフ歴が長かった。
押下圧は55g程度とはいえ、
ストロークが短く、凹みのない平たいキーでは、
指先で打ったら痛くなる。
なので、
「掌は水平気味に構えて、
指も水平気味に構えて、
指紋を取る部分でキーを押す。
Z軸方向の運動よりも、XY平面上に指を動かし、
曲線でキーに触れ、結果的にキーが押し下げられる」
という打ち方になった。
最初からブラインドタッチを学んでいればそうならなかったかも知れないが、
サイトメソッドだったので、
4本指で鍵盤を次々に渡るには、
飛び石を飛ぶような運動の方が合理的だったわけだ。
押す、押下する、というよりも、
擦る、という動詞の方が合うと思う。
(昔懐かしハイパーオリンピックでは、
こすり打ちが僕は得意だった)
だからブラインドタッチに矯正した今でも、
Z方向の移動量よりも、
XY平面上の移動量の方が大きい意識がある。
2mmのアクチュエーション移動よりも、
指の擦り量の方が大きいと。
実際はキー表面の摩擦で、2mmも動かないのだろう。
おそらく僕が求めるキーの押下圧は、
キー表面の摩擦力よりも少ないべきだと思っている節がある。
ちなみにノートPC(パンタグラフ)による打鍵動画を見たことがあるが、
僕のような撫で打ちであった。
つまり、世の中には少なくとも二種類の打鍵法がある。
スタンダード打ちと、撫で打ちだ。
(ピアノや親指シフトはスタンダードの分派としよう)
薙刀式の設計では、指の繋がりがまるで筆で書いているように、
線が繋がることを意識した。
それは僕自身の、Z方向よりもXY方向の意識が強いことの表れかも知れない。
で、RTC2019。
中継では手元は上からだったため多くを判断できないが、
去年の観戦経験からすると、
撫で打ち派はほとんどいなかったように思う。
撫で打ち派は短距離走に向かないのかしら。
運動の軌跡も長いのかも知れない。
ただ長距離走で考えると、
ストップアンドゴーが多いよりも、
運動全体が滑らかにつながっている方が効率的な気がする。
短時間でのストップアンドゴーを繰り返すための大きな手と長い指は、
短距離走でマッチョになるべきということと関係ありそうだ。
また、スタンダード打ちとはいえ、
上段、最上段は前に撫でるような打ち方になる。
撫で打ちとはいえ、
下段は上から打ちおろすスタンダード法になる。
(薙刀式では右中指下段に頻出の「ん」があるため、
とくにそれがよくわかる)
大きくいうと掌とキーボード面(それがオールフラットだろうが、
シリンドリカルだろうが)のなす角度によって、
指先の動きが違うということだろうか?
短い指をもち(TYや最上段は捨てた)、
長文を書いていく僕には、
撫で打ちが向いていて、
それに合わせて物理キーボードセッティングも、
論理配列による指の軌跡の繋がりも、
作ってきた可能性が高い。
こういう立場からの発言である、
ということは今後もご理解いただきたい。
僕と似たような手や打ち方の人は、
スタンダード打ちが前提の世界がとても息苦しいと思う。
互いに互いの価値観を押し付け合わず、
相互理解してすみ分けていきたいものだ。
ということで薙刀式の次の動画は、
真俯瞰じゃない角度からの撮影を考えている。
三脚と長玉が必要だな。
自分もタイピングは決して早くはないのですが、やはり指が真っ直ぐ伸びた状態より、指を曲げて、なるべくキートップに対して指が直角にちかいくらい立っている方が、速く打てることが多い気がします。
撫でる動作より、突く動作の方が指のスピードがつきやすいのかもと思いました。自分もパンタグラフだと撫で打ちにするので、キーストロークのある通常キーとはかわりますね。
なるほど、そうなんですね。
僕は逆にスタンダード打ちが出来ないのかもしれません。
SAのキーキャップはスタンダード打ちに特化したキーキャップで、
指先を包み込むように誘導してくれて、
しかもABSなのでタッチが柔らかいため、
大変気に入っています。
とはいえ、長いこと打つのはこれだとしんどいなあと思っていて、
短文打ちはこれで行こうなどと使い分けている感じ。
スタンダード打ちは疲れませんか?
僕は2000字も書けばお腹いっぱいになってしまいます。
ただ指を立てるときは、まさに短距離走的な意図して早く打とうとしてるときだと思うので、長く打つときというか普段がら指を意識的に立てるというほどでもない気もします。これは人によって全然違うんだとは思いますが。
実際このへんは誰も自覚していないことのような気がしたので、
記事化して整理してみたのです。
僕自身は指を立てずに打つので、
「指立てたら痛いだろ」とずっと思っていました。
人によって違うのはよいとして、
「想定されない打ち方で打っても心地よくない可能性」
があるなあと思ったので。
(たとえばかえであすかはノーパソの狭ピッチで開発されたので、
撫で打ちかつ狭ピッチに特化しているかもしれません)
僕がqwertyが苦手なのも、ひょっとしたら指を立てるのが嫌だから、
という可能性があります。