2019年12月11日

上手な説明

ストーリーにおける説明は、
たったふたつに集約するべきだと思う。

「今、何をしなければならないか」
「何故そうしなければならないか」
だ。


勿論、
世界の仕組み、道具の仕組み、組織の仕組み、
手続きの仕組み、人間関係、今の気持ち、
過去にあったこと、
などの説明は必要ならば必要だ。

「それを理解しないと話を理解できない」
ものについては、
時間をとって説明するべきだ。

下手で長くても、
なくて分からないよりましだから、
誠実にやればみんなわかってくれる。

ここは上手な人は上手で、
うまく省略したり、
たとえ話を使ったりして、
聞き手の負担を減らし、想像が膨らむようにすることができる。

しかしそれ以前にもっと重要なことは、
説明するべきことの最小限を見極めることで、
あなたを愛していることを説明するときに、
DNAの二重螺旋構造を説明しても意味がない。

(もっとも、
なぜDNAは二重螺旋構造なのか?
二重で世界を縛るためにある。
僕と君は世界を二人で固定するための、
ぴったりした存在なのだ、
などのような口説きが重要ならば、
二重螺旋構造の説明はあったほうが良い)

あるいは、映画は絵で見せるものだから、
百聞は一見にしかずのものは、
言葉で言うよりも見せたほうが速く伝わる。
「見ろ!あいつらは銃を持っている!」
という説明台詞よりも、
あいつらが威嚇射撃をする方がよっぽど速く、恐怖を伝えられる。
餅つきの仕方を言葉で説明するより、
やって見せた方がわかりやすい。


で、本題。

説明をすることで何を達成するべきかなのだ。

その内容を理解しておしまい、では、
物語における説明の役割を果たしていない、
ということが重要だ。

そのことを理解したとして、
「何をするべきか/すればいいか/しなければならないか」
に繋がるかどうか?
なのである。

あることを理解しました。
で?
になることを避けよう、ということだ。

僕はあなたが好きです!
はいわかりました、で?
になってはいけない。

僕はあなたが好きです!恋人になりたいです!
僕はあなたが好きです!舐め回したいです!
僕はあなたが好きです!殺していいですか!

のように、
「反応(リ-アクション)を促す何か」
がないと、
説明があるだけ無駄なのだ。

ダメな告白が成功しないのは、
「で、何をすればいいか」
「なぜそれをしなければならないか」
がないからだ。
相手も自分にある程度好意があり、
明日デートしませんかならば、
「はい」と言いやすい。

自分の気持ちを説明しておしまいでは、
ストーリー(=展開)が生まれないのである。


つまり、うまい説明とは、
決して説明そのものにあるのではなく、
説明がターニングポイントになっているかどうかで決まる。

「そのことを知ったからには、
行動Aをする必要がある。Bゆえに」
ということがあるかどうかなのだ。

(もちろん、
「そのことを知ったからには、
AかBかCをしなければならない。
しかし現段階ではわからない」というハング状態を作ることも、
以後の展開を作ることもできる)


あなたの説明は上手かい?

その説明を聞いた登場人物は、
「で? 俺は何をすればいいんだ?」と聞くか?
それとも、
「じゃあ、俺は○○しよう。たいへんだな」と言うか?

前者が下手な説明で、
後者が上手な説明だ。


そして、この説明を聞いたあなたは、
自分の書いた説明場面や、名作の説明部のあとをチェックする。
構造を把握するために。
行動を促し、その理由が自明な説明が、正しい説明だ。
posted by おおおかとしひこ at 11:14| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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