2019年12月20日

お話の作り方

ものすごく単純にいうと、
「不幸から幸福になる」を造ればよい。


不幸な状態の人がいる。
何かがあって、最終的に幸福になる。
その間にあるものがお話だ。

もちろん、ハッピーエンドにかぎる。
(そうでないもの、バッドエンドやビターエンドは、
ハッピーエンドの発展形だと考えれば、
まずは基本のハッピーエンドが書ければ書けるようになるだろう。
問題はハッピーエンドが書けないくせに、
バッドエンドやビターエンドのほうがカッコイイと思って書いてしまう逆張りで、
どっちも書けて初めてまともにストーリーを書ける腕がある)


ハッピーエンドのお話には、
いくつかのルールがある。

守らなければならない法律というよりは、
これを破ってもたいして面白くならない、
という経験則だ。
(もちろん、若いうちはその経験則を学ぶために、
わざとルールを破って失敗する、
間違う経験も重要だ。
ひょっとしたら誰も発見していない、
新しいルールを見つけることになるかもしれないし)


1 自力で幸福になること
2 それがなんの意味をなすかが分ること

煎じ詰めれば、この二つになるかもしれない。



1 自力で幸福になること

単純にラッキーで幸福になる話は面白くない。
他人に幸せにしてもらう話は面白くない。

自分が行った結果不幸になろうが、
自分のせいでない不幸であろうが、
その不幸な状態を自力で幸福にしない限り、
面白くない話だ。
なぜかというと、
「勝手に幸せになってろ」と思われておしまいだからだ。
人はお話に人生の答えを見たい。
幸せには法則があると信じたいわけだ。

初心者が陥る典型のメアリースーは、
他人に幸せにしてもらいたい願望がもろに出てしまったものだ。
たいていは迷路に入ったややこしい自我を表現しているように描かれるが、
煎じ詰めれば、自分が自力で幸せになれない言い訳を延々しているだけのものだったりする。

自力で幸福を得ようとするだけではだめだ。
最初に不幸でなければならない。
幸福なやつがさらに幸福になろうとするのは、
面白くない。
嫉妬でしかないからだ。
一回どん底に落ちてから、スターダムに這い上がるものが最上だ。

どうやって?
それを創作するのがストーリー作りである。

人は物語に人生の答えを求めている。
嘘くさいものや説教くさいものはいらない。
本当にそれがありそうで、
(その設定ならいけるという範囲で)
真実そうに見えれば、
それは面白い話だと思われる。
(リアルが重要なのではない。
ほんとうっぽいリアリティーが重要だ。
ファンタジーはリアルでないからこそ、
リアリティがあるべきだ)

明らかに架空の世界なのに、
ほんとうっぽい不幸から、
ほんとうっぽいやり方で、
ほんとうっぽい幸福を掴み取る話は、
一番面白い。


2 それがなんの意味をなすかが分ること

ただそれが適当なものでも面白くはない。
それに意味があることが重要だ。
ただ不幸から苦労して脱出しました、
という話では面白くない。
その時は面白いかもしれないが、
最終的に何も残らない。

つまり、話は、残らなければならない。

(ただのから騒ぎや、ただ面白い時間を過ごしたショウであるよりも、
物語はもっと価値をもてる。
なんなら、一生大事にできる物語になれる)

残り方は色々あるが、
もっともいいものは、
「人生はこうすべきである」と結論づけられる何かであるべきだ。

なぜ不幸になったのか。
なぜ幸福になれたのか。
その間に何があったのか。

つまり、不幸になった原因が、人生にとってよくなくて、
幸福になった原因が、人生にとって大事なものである、
ということになっているべきだ。

そのストーリーに意味がある、ということは、
そのストーリーの成功、つまり幸福のなり方に意味があるということだ。

これは1とも関係があるが、
単純に宝くじが当たって不幸を脱出したならば、
意味のないストーリーだ。
宝くじを当たるまで買え、
という意味になってしまい、
なんら人生に関係ないからだ。

結局、意味とは、
我々の人生に寄与する、教訓や役に立つことが、
あるかないかだ。
そしてそれは、
不幸から幸福への駆け上がりにこそ表現されているから、
ストーリーは素晴らしいのである。



たったこれだけのことが守られていれば、
そのストーリーは面白いだろう。
それがとても面白いか、とか、名作になるかは、
腕次第だ。
しかし、そうなっていないストーリーは面白くないだろう。
勝手に幸福になったり、意味のない終わり方ならば、
見て損したとなるに違いない。


不幸が幸福になっていない物語は面白いだろうか。
原則がないので、個別の出来で決まると思われる。
よくできたバッドエンドは、
よくできたハッピーエンドの逆になる。
背理法で同じことをやっているだけだからだ。
ビターエンドはその中間で、
豪快な結論が出にくい問題を扱うことに向いている。
しかし、グレーの結論よりも白黒はっきりつけたほうが、絶対面白い。



不幸が幸福になること。

単純なこれだけが、出来ているだろうか?
ちゃんとできていたら、面白く、意味があるものになっている。

初心者はここから逃げて誤魔化して、やっぱり面白くない話を書いて、
途中で放り出して、
どうやったらいいのかわからなくなっている。
posted by おおおかとしひこ at 00:34| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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