たとえば、「タクシーに乗って会社に着く」を書いてみよう。
タクシーを探す俺。
しばらく待つとタクシーが走ってきた。
右手を上げる。
タクシーは横断歩道を避け止まり、ドアが開く。
乗り込む俺。
「第一京浜の、ゆりかもめのガード下あたりへ」
「新橋ね。上から行きます?下で?」
「どっちが混んでます?」
「変わらないかな」
「じゃあ下で」
「道は?」
「お任せします」
タクシーが会社の前に着く。
とりあえず頭から書いてみた。
当然ながら、沢山の省略が可能だ。
タクシーを止める所いる?
なくても話は通じる。
タクシーに乗り込む俺。
「第一京浜の、ゆりかもめのガード下あたりへ」
「新橋ね。上から行きます?下で?」
「どっちが混んでます?」
「変わらないかな」
「じゃあ下で」
「道は?」
「お任せします」
タクシーが会社の前に着く。
会話もどうでもいいよね。切ってみよう。
タクシーに乗り込む俺。
「第一京浜の、ゆりかもめのガード下あたりへ」
「新橋ね」
タクシーが会社の前に着く。
だいぶスッキリした。
さらに切る方法もあるよ。
タクシーが会社の前に着く。
だけでもいい。
「結果だけ描く」方法だ。
タクシーに乗り込み、行き先を言う描写がなかったとしても、
結果だけ示せばそれがあったことくらい、
人は想像できる。
前のビルから会社へタクシーで移動したことがわかればいいわけだ。
さらに極端に言うと、
○会議室
に俺が入ってくる。
「いやあ道混んでて」
タクシーを描写しなくたっていいわけだ。
じゃあどれが適切か?
「あとで使うかどうか」だと思う。
タクシー内の何かが伏線になるならば、
タクシー内の描写はあったほうがいい。
探すところがあとで使われるほど重要な場面なら、
その場面は必要だろう。
ということは、今書いている時には決まらず、
「未来のことで今の詳細が決まる」という現象が起こっている。
(これを時間遡行のSFに発展させても良い。
普通は過去の因果が現在に影響するが、
これは逆だ)
じゃあどう考えれば良いか?
答えは最初に書いてある。
これらは全て、
「タクシーに乗って会社に着く」
であらすじ化できる。
頭からしか書けない人は、
おそらくイメージしてそれを全部書かないと気が済まない人だ。
そのスタイル以外を学ぼうというのがこの趣旨だ。
イメージなんかどうでもいい。
湧いた端からドブに捨てろ。
今はイメージする時間ではない。
あらすじで物を考える時だ。
たとえば、
急がないと間に合わない
タクシーで会社に着く
会議をする、そこでタクシーを拾った場所の話になり、
それが会議の行方に関係する重大なことだとわかる
どこでタクシーを拾ったか思い出せない
みんなで拾った場所に行くことになる
みたいなストーリーを作っているかどうかという時には、
タクシーの車内の会話は不要で、
拾う場面は重要ということになる。
逆に、
そのタクシー運転手が犯人と非常に似ている、
なんてストーリーならば、
タクシー内の会話場面は重要な情報を含む伏線だ。
このあらすじでものを作っている時には、
拾う場面のイメージもどうでもよく、
車内の会話イメージもどうでもよい。
タクシーを拾い、会社に着いたことだけが重要だ。
あらすじでストーリーを作るには、
省略することだ。
省略して、事実関係だけを書くことだ。
頭から書かないとイメージ出来ないのだとしたら、
「イメージで書くのではない」
ということを学びなさい。
動線、行動、動機(行動の理由)、目的、
人間関係や事実関係などで考えるのだ。
そうして最後までそれらが繋がった時、
はじめてイメージをする。
どういう絵で行こうかなと。
イメージを介さない物語の作り方が出来るようになれば、
「頭から書かないと分からない」
なんてことはただの拙劣だということがわかるだろう。
2019年12月22日
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