2019年12月30日

ケツを持つこと

どんな面白そうな冒頭を思いついたとしても、
結末まで出来ていないと、書き始めてはいけない。

なぜなら、
結末まで書けない事件と、
結末までケツを持てる事件があると、
僕は思うからだ。


たとえば、今年の令和発表の時に流れたツイッターで、
「平成最後の日の24時から、
次の日の元号発表の12時までの12時間、
元号の空白を狙って、
未来から時間犯罪者がやってくる」
というのはめちゃくちゃワクワクした。

実際には平成はそのあとも続き、
一ヶ月後に改元というオチだったのだが、
「元号空白の12時間」
という設定が異常に面白かった。

もしこのような架空が許されるとして、
あなたならどのような時間犯罪ミステリー
(あるいはタイムトラベルもの)を書く?

最初の設定は凝ることが可能かもしれないけど、
多分面白い展開を思いつかないと僕は思う。

更にいうと、おそらくすごい結末までたどり着けないと思う。


なぜか?
これは、設定の出落ちだからだ。

設定の出落ちというのは僕の造語だが、
つまりは、
「一体どうなるんだ?分からんぞ!」
というワクワクのことだと思う。

これが分からなすぎると、落ちまで書けない、
というのが僕の仮説だ。

この設定の出落ちAをそうさせないためには、
Aそのものに結末を暗示させるようなBを加えると良い。
たとえば、
「時効成立を有耶無耶にする」とか、
そのようなものだ。
このBを加えれば「時効成立を阻止する」が目的となり、
「時効成立を阻止できるか?」がセンタークエスチョンになり、
「時効成立を阻止した」が結末になる。

しかし容易に想像できる通り、
これは、
よくあるストーリーの形式になってしまい、
新しい形の時間犯罪の、
冒頭の設定の面白さからスケールダウンしてしまうことだ。

勿論、スケールダウンしたからこそ、結末までの、
一本の線を引けることになるわけだ。

設定の出落ちAがあるとき、
いかにして、
結末まで引ける線で、
かつスケールダウンしないBを思い付けるのか、
というところが、
非常に難しい。

ケツまで責任を取れるもので、
よくある雛形にならないものというのが、
大変難しいのだ。

だから、
Aの面白さから、どうやってもBでスケールダウンしてしまう。

これは入れ子にすることができて、
AにBを加えたとき、
Bも設定の出落ちにすることもできる。
じゃあそれのケツを持つCを思いつかなければならず、
ハードルはさらに上がるわけ。

じゃあCも設定の出落ちにしてしまい、さらに重ね、
ABCDE…のケツを持つXを思いつかなければならない…
うーできないよー

ってなって、挫折するパターンが多いと、
僕は考えている。


つまり原因は、
ケツ持ちができもしないAにある。


すげえ面白そうなAを考えるのは、
誰にでも出来る。
我々は、
ケツまで責任を取れる、
なおかつ「元号空白を利用した時間犯罪」に匹敵する、
面白い事件を考えなければならない。
posted by おおおかとしひこ at 12:06| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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