敵の主張、主義をアンチテーゼという。
これをはっきり立てると、
ストーリーは面白くなる。
それは、「テーマの反対」だからだ。
背理法みたいなことだね。
逆にアンチテーゼがテーマと関係ないものになっていたら、
話の筋が通らない。
アンチテーゼが難しいのは、
テーマとペアにすると、
「いかにもよくあるストーリー」であることがばれてしまうことだ。
最も平凡なものは、
典型的な、正義vs悪だろうか。
だから現代の勧善懲悪は、
ひねりの効いた正義とひねりの効いた悪の戦いを描くことが多い。
しかし単なる逆張りになっては元も子もない。
「少しずらす」の塩梅がキモだと思う。
「金は全て買える」vs「買えないものがある」
はよくある平凡な対立だが、
テーマ側の「○○は金では買えない」を、
新規性のあるものに変更すると、
新しいストーリーやテーマ性になることがある。
愛や友情は普通だよね。
友達や彼女すらレンタル業があるくらい。
思い出も地位も実績も、金で買えないこともない。
創作は金で買えないね。
名誉もか。
この辺は新しいが、じゃあストーリーとしてどう作るのかを考えると、
なかなかに難しい。
自分の書ける範囲で、新しい○○に気づけば、
新しいストーリーになる可能性がある。
では、
アンチテーゼと主人公側は、
演説バトルをするのか?
ディベートで勝敗を決めるのか?
それをやっては元も子もない。
それぞれの主張と関係ないバトルをするのがベストだ。
仮に、
「なんでも金で買える」と主張し、
普段の行動がそんな敵がいるとして、
「○○は金では買えない」という主人公がいるとする。
だとすると、両者は、
金や○○と一切関係ないバトルをした方が面白くなる。
たとえば自転車レースをする。
たとえば将棋で戦う。
たとえば総合格闘技の地下トーナメントに出る。
何でも良い。
そして、金や○○の話を一切しなくても、
敵が破れる様を描けば、
我々観客は、
「ホラ、○○は金で買えないだろ?!」
と敵の敗北にスッキリするわけである。
アンチテーゼは悪だ。
ということは、悪魔のささやきがある。
「枕営業をすると出世するぞ」というささやきでもいいし、
「麻薬をやってセックスすると気持ちいいぞ」でもいい。
「ダイエットなんて我慢しなくていいんだ」かもだ。
色んな悪いささやき、しかし抗えない魅力があると、
面白くなってくる。
アンチテーゼは、一般に言われる悪の形をしているとは限らない。
アンチキリストは、最初は神の形で現れるというではないか。
色んなアンチテーゼがある。
それをどのように創作するかで、
背理法的に、
テーマが固まってくることもある。
どうにもテーマに落としづらい、
テーマがぼんやりしている、
などの問題があるのなら、
いっそアンチテーゼを明確にして、
補集合としてのテーマを考え直すのはどうか。
影が濃くなれば光が強く見える原理である。
SW?影が0のうんこ?
ちなみに、
今書いている話では、
アンチテーゼが曖昧で、
テーマだけあっても空回りしている感じが強かった。
アンチテーゼを明確にすることで、
「何と何が思想的に対立しているのか、
このバトルの勝利は、
どのような思想の敗北で、
どのような思想の勝利を間接的に意味しているのか」
が明確になり、
ようやく軸ができた感じが強まった。
かつて、テーマは、
「みんながなんとなく思っているがまだ言葉になっていないこと」
を選ぶと良いと書いた。
それこそが作家性であり、鉱山のカナリヤであり、
社会の木鐸である役目であると。
それはアンチテーゼにもいえる。
「みんながなんとなく思っているが、
まだ言葉になっていない、新しく、強烈な悪、誘惑」
を考え出すと、
テーマが逆側からわかることもある。
アンチテーゼは?
そこで明確に答えられないなら、
そこをハッキリさせてみよう。
ぼんやりしていた何かに、答えがもたらされるかもよ。
2019年12月31日
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