2020年01月16日

最初に「真の問題」を描く

主人公が登場するのは、比較的最初の場面である。
シーン1かどうかはストーリーによるが、
シーン2には出るだろう。
3がギリか。
10とかなら、それは語り方が間違っている。
これは「誰の」話かを考えれば、その人は第一行目に来るのが普通だ。
(遅らせるのは焦らしテクに過ぎない)

さて、初登場時には何を描くべきか。


主人公の基本的な設定であることは間違いない。
しかし、一番最初にやるべきことは、
第一印象である。

それがどうあるべきかを考えるのだ。

ダメな奴ならどうダメな奴なのか、
いい奴ならどういい奴なのか、
わずか一行でそれを示すことから書かなくてはならない。

上司に怒られているなら、
どういう内容で怒られているのかまでが、
その主人公の第一印象だ。
「挨拶がなっていない」
「書類不備」
「お得意に文句を言ったのは正義だが客商売として間違っている」
「俺の女に手を出したな」
などでは、全く違う主人公像になるだろう。

いい奴だとしても、
「電車で席を譲る」
「泣いてる子供のそばにいてあげる」
「金貸してといわれて断りきれない」
などでは、
全く主人公像は変わって来るだろう。

そして、それを印象深くするためには、
真の問題とそれが表裏一体であることが重要だ。

たとえば、上の例ならば、
「お得意に文句を言ったのは正義だが客商売として間違っている」
ということが、
主人公の真の問題であるということになる。
正義感が強いことはいいことなのだが、
柔軟性に欠けてるとか、TPOがなってないとか、
客商売の真髄を理解してないとか、
そういうことが真の問題の候補だ。

どれを選ぶかはストーリーによる。
その真の問題を最終的に克服するのが、
実は真のストーリーの解決だと僕は考えている。

ストーリーにこれまたよるが、
「客商売の真髄を理解していない」が問題とすれば、
「客商売の真髄がわかったとき」
真の解決になることになるわけだ。
(これまたストーリーによるが、
客商売コンテストが開催されるのかも知れない)


ストーリーとは、
ある問題の発生とその解決のことだが、
その問題はこのシーンの前後に起こる。
たとえば「隕石が降ってきて、宇宙人が攻めて来る」
などである。
これを解決するために主人公が巻き込まれ、
主人公自体が事態の解決に乗り出すまでが第一幕
(開始30分)だ。
宇宙人侵略の解決をしなければならないのは可及的速やかな問題だが、
それと同時に、主人公は真の問題も解決しなければ、
ほんとうに問題を解決したことにならない。

この例で言えば、
「宇宙人侵略を解決しつつ、
客商売の真髄を理解しなければならない」
ということになる。

ということは、これは、
「宇宙人相手に客商売の真髄を知り、
彼らを客にして一儲けする話」
だということになるわけだ。


この場合、宇宙人侵略が外的問題、
客商売の真髄がわかっていないことが、
内的問題と言われる。

しかし僕は、「真の問題」と言い換えたほうが、
扱いやすいのではないかと考える。

問題はふたつある。
事件と、真の問題だ。
事件は宇宙人侵略、
真の問題は客商売の真髄をわかってないこと。

クライマックスは宇宙人相手に商売を成功させること、
おそらくその前に「わかったぞ」
というシーンがあるはずだ。
それが真の問題が主人公の中で解決した瞬間であり、
それを絵で見てわかる形にするのが、
クライマックスの第三幕ということになる。

つまり「わかったぞ」は第二ターニングポイントか、
その前にあることになるわけだ。


このように、
事件と真の問題、というように言葉を与えると、
外的問題、内的問題という対比的な関係よりも、
内包であるように扱うことができるかもしれない。
そして真の解決とは、両者のアウフヘーベンであることも、
予想できるというものだ。


で、やっと本題だが、
主人公の初登場シーンで、
第一印象を与えながら、
彼または彼女の、「真の問題」をうまく描くべきだ、
ということだ。

彼はカッコイイレーサー、
しかし心の奥底にはトラウマがあり…とか、
彼女は可愛いアイドル、
でも秘密がある…とか、
彼は平凡なサラリーマン、
そしてぐうたらだ、とか、
二面性を持って描くのがよいだろう。

最後の例は際立った二面性がないので、
のちのち苦労するパターンだ。
活躍する場所が難しく、御都合主義になりかねない。


リライトで大事なことは、
このようになるような、
主人公の初登場エピソードを、
練りまくれということ。
ここが強くないと、決して面白くならない。

こいつはこういう奴。
面白い奴がやってきた。
優秀な脚本は初登場の一文字目から面白く、
数行以内に真の問題にたどり着く。

そこから、やっと、
名前や職業や基本的人間関係や、
生活してる場所やいつか叶えたい目標などの、
いわゆる「設定」をすればいいだけ。
そんなのは、「よく知らない人を応援できない」
という我々の不安を払拭するものであれば、
なんでもいいとすら僕は思う。

こういうところに住んでて、こういう職業で、
こういう人間関係で、
こういう名前でこういうビジュアルで、
こういう好みで、
という設定は、それだけで魅力がある場合もあるが、
所詮はガワだ。

ストーリーに必要なものは、
第一印象と真の問題だ。
それさえできていれば良い。

そんな主人公が、あんな事件に出会い?!
と次に進められれば、
主人公の初登場に関しては成功だと言える。


そして当然のことだけど、
その「真の問題」が、
私たちも抱える似たような問題だから、
感情移入が起こるのだ。
ガワに惚れることとは、関係がない。
posted by おおおかとしひこ at 13:11| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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