職業柄、「風魔の小次郎」の二次絵を多く見るのだが(笑、
エロだろうがそうでなかろうが、
描き手は女性の方が多いと思う。
そこでいつも気になるのが、学ランを描けてないことだ。
学ランはかなり分厚い。
春物のコートより分厚い。
硬質とまではいわないが、着ててシワの寄りに窮屈になる。
もともと軍服の転用だ。
丈夫であることが第一で、
「着てて柔らか」なんてなにそれの服だ。
ズボンはまだましで、上着よりは柔らかい。
中高生のときはよくケツがツルツルテカテカにる。
大体二着くらいしか持ってないからそうなる。
そもそも制服というのは、
貧乏人でも真っ当な格好をするための、
揃え服であるから、
そんなに数買ってもしょうがないものだ。
我々学ラン経験者男子は、
このような皮膚感覚を持っているから、
ひらひらする薄そうな学ランの絵を見ると、
残念な気持ちになってしまう。
襟がコートみたいになってる学ランも、
気持ちは分かるがガッカリする。
詰襟にプラスチックの白いカラーが内側にあり、
玉状のフックにパチンと留めてあり、
外れることを知る女子も少ないかもだ。
(プラスチックは汗染みを詰襟に移さないため。
たまに拭く。
しかし僕みたいに首を締め付けられるのが嫌な男子や、
そもそも白いのがダセエとして、
外して黒い内襟にする男子も多かった。
当然汗が染み、めっちゃ臭くなる。
また、プラを留めるための玉状のフックが邪魔なので、
これをニッパーなどで切らなければいけない。
また、校章や学年章を、キリで穴を開けて、
ネジで留める構造になっていることも知らないかも)
学ランでなかった男子は同様に、
この感覚がないかもしれない。
こういった皮膚感覚があると、
「まちがった」学ラン描写にはものすごく違和感がある。
あーはいはいあなたのファンタジーですね、
と距離を取ってしまい、
「ほんとうには何が表現したかったのか」
まで汲み取る努力を捨ててしまう。
これは、リアリティに関する観客の気持ちの話をしている。
あなたの作品にこの学ランのようなものが出てきたら、
観客はこのように思うという話である。
学ランよりも有名なのは、
弓道警察だろうか。
弓道部は萌えだけど、弓道の描写が間違いがちだから、
フルツッコミが入りまくる。
銃火器の扱いも同様だ。
正月のキムタクドラマ「教場」での、
「安易に人に銃口を向ける」様は大炎上したそうだ。
ハリウッドの射撃場で知ったことは、
「人に銃口を向けることは(弾があるかどうか他人からわからないため)
殺人未遂が適用される」ということだ。
これは都市伝説レベルで、法的確認を取ったわけではない。
当時の教官も冗談で言ったかもだ。
しかし安易に銃口を向けて大変なことになるより、
殺人未遂適用と冗談でも戒めるほうが、
ずっと良い社会になることは確実だ。
ピアノに関しても、リアリティがよく要求される。
音楽経験者は大抵クラスに一人以上いるわけだし。
(小学校のクラスわけで、
1クラスに一人はピアノ経験者がいるように、
うまく割りふろうというのは有名な話)
医療と法曹以外の職業ドラマは、
大抵はファンタジーレベルだということは、
日本の脚本力の低下を嘆く材料に相応しい。
もしあなたが医療法曹以外の職業についていたら、
自分の職業がドラマ化されたときは見ない方が賢明かもね。
それくらい、取材が軽視されている。
取材費がないのもある。
取材費は昔は経費だったが、
それすらもリストラされて、自腹取材が増えてきた。
ネットで分かる内容は、豊富だが浅い。
突っ込んで話を聞くには、本人と会って話さないといけない。
一人じゃなくて、複数に話を聞くべきだろう。
飲み屋や交通費くらいなら安いものだが、
外国にしかないものを取材したり、
高価なものの話を書くには、
それ相応の取材費がいる。
また、時間のかかる取材には、人をその間動かし続ける人件費がかかる。
いくら?100万?50万?2万?
経費で落ちずに自腹になればなるほど、
貧すれば鈍するの世界になってゆく。
さて、ようやく本題だ。
リアリティとファンタジーの境目はどうすればよいか?
リアリティだけにせよ、だけでは無味乾燥だ。
まるまるファンタジーは地に足がつかない。
僕は、リアル側の人たちが、
「ちゃんと取材した上で嘘をついている」
ことがわかれば良いと思う。
そして、
「こんなことリアルにはないけれど、
もしあるとしたら面白いな」
になるのがベストだと思う。
銃を扱う人間が、
「こんなことリアルにはないけれど、
安易に銃口を人に向けるシーンがあって、
面白いなと思う」
になっていれば良いと思う。
「教場」の問題のシーンは見てないので、
それに該当するかは知らない。
そもそも、リアルとの差異を想像して冷めるのは、
物語として失敗だ。
もっと夢中にさせないとだめだ。
夢中とはリアルからの浮遊のことで、
その離陸は、上手に段階を踏んだほうがいいんじゃないかということだ。
(テレビはそのシーンだけ突然に見ることもあるので、
製作者はかわいそうだとは思う。
「前後を見て判断してください」と強く言えないのが不利で、
件の炎上はそこだけ切り取って叫んでるかも知れないし、
そうじゃないかも知れない)
などと、
「まちがった学ラン」を見ながら思いました。
映画刀剣乱舞における、間違った殺陣でも同じことを思ったなあ。
男対象ではないと分かりつつ、BLにおけるやおい穴もおかしな文化だと思う。
もちろん、
我々男子も、思い込みによる都合のいいヒロインや、
グラビアアイドルに興奮しているわけで、
50:50かも知れない。
いずれにせよ、
優れた創作とは、
リアルでもあり、ファンタジーでもある。
「分からないでもない」から、
「それ!」になるように、
うまく誘導していくのが、
創作者の務めであり、腕だということは自覚しておこう。
2020年01月18日
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