ストーリーはどこから始まるのか。
「いつもと違う何か」があったところからではないか。
ストーリーは「事件とその解決」が大きな背骨だが、
いきなり事件が起こるところから始まらない。
予兆、異変のようなところから始まる。
突然宇宙人の大艦隊はやってこない。
一隻がやって来る。
一隻が来るところから始めてもいいが、
もっと自然な不自然から始める手もある。
たとえば、
スマホの電波障害などが日常的異変だろうか。
今まで送っていた日常が、
少しだけ違うことが起こる。
その綻びをうまく描くと、
その深い裂け目にどんどん入っていくことになる。
逆に、
「最初はただの小さな異変だと思っていたのが、
実は大事件の予兆であったのだ」
となるのが最も面白いパターンだ。
最初の異変は、
我々の興味を引くためのものだけでなく、
伏線でもあったわけだ。
たとえば探偵もので、
「いつもの依頼人と違う奴が来た」
などがあるとしよう。
どこか怯えていて、焦点も定まらない。
後日、その依頼人が殺害されたことがわかる。
彼は追われていた。巨大組織に。
そしてその組織との闘いが、
本来ストーリーで描く大事件なわけだ。
いきなりそうした組織を出しても、
あまりにも日常とかけ離れていて、
世界に入り込むことは難しい。
だから、ほんの小さな異変が、
どんどん拡大していくようにする。
上の例ではたとえば、
依頼人が帰ったあと、
秘書が「あの人変じゃなかったですか?
お茶4杯も飲んで行きましたよ」
と気づくとか。
「喉が渇いてたんだろ」
「それにしても普通4杯も飲みます?」
なんてしておいて、
喉が乾くのは○○のせいだったのだ、
などと後にわかってくれば、
伏線かつ導入になっているわけである。
このような、
後に使う、しかもちょっとした、
しかも印象に残る、
「いつもと違う何か」を作ろう。
そこからどんどんストーリーは雪だるま式に膨れ上がる。
その芯になるのが、
その最初の異変というわけだ。
まだ正体はわからないが、ただ日常と違うこと。
なんか変だな、まあいいか、くらいだが、
その変の正体を追っかけていくと、
何か大事態につながっていること。
たとえば女が浮気を疑うのは、
具体的なほかの女の証拠が出て来た時ではなく、
「いつもと違うことがあったとき」
だそうだ。
こんな風にずるずると話が展開していくその最初の瑕疵が、
うまく小さな違和感だと面白いわけだ。
なぜなら、その小さな違和感ぐらいならば、
我々の日常の延長だからである。
我々は、
我々の日常の範囲内の「いつもと違うこと」から、
いつのまにか天地を揺るがす事件に入り込んでいく。
2020年01月19日
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