日本語入力には、いくつかの不可逆な壁があるように見える。
その壁を超えられない人は無理で、
逆に超えた人にはなぜ超えられないのか分からない。
超えた人は超えられない人を馬鹿にせず、
超えた人たちだけで分かち合うしかないが、
他に超えられる人がいるかもしれないので、
その人に向けて発信した方が仲間が増えるかもしれない。
超えられない人は、
超えられる人もいることを理解し、
超えられない自分を劣ると卑下することなく、
同じ目的を達成する別のやり方がないか調べたり、
ないならば自分で作ればよい。
その壁の前で、壁の向こうよりも優れた部分があれば、
どちらが優秀というわけでもない。
配列は所詮道具だ。
配列の優劣よりも、
書かれた文章の優劣の方がよっぽど大事だ。
いくつかの壁を見てみる。
1. ブラインドタッチの壁
2. カナ配列の壁
3. 同時打鍵の壁
4. シフト面の壁
5. 薬指小指の壁
6. 4段の壁
7. 清濁別置の壁
難易度順に並べたような気もするが、
人によって前後する要素が多いので、
必ずしもこの順ではないと考える。
ひとつひとつ見ていく。
1. ブラインドタッチの壁
日本人のうち、ブラインドタッチできるのは、
30%程度という調査がある。
しかしスマホ世代はPCに触れる機会があまりなく、
今後ますます下がることは予測される。
ホームポジション遵守、指には担当キーがあること、
打ったらホームに戻すこと、
画像暗記ではなく、運動記憶として身体で覚えること、
などのいくつかのコツを理解すれば、
この壁は超えられると思う。
しかし、
奇妙に左に傾いた物理キー配列、
左小指を最も使い、手の器用さと乖離のあるqwertyローマ字、
ホームポジションを崩さないと打てないBS、エンター、カーソルなどを、
日本語入力に使わないといけないIME操作、
のみっつが、
ブラインドタッチの壁を意味なく高くしていると僕は考える。
だからこそこの壁を低くするために、
格子配列の勧めと、
指の器用度に合わせた頻度分布、
IME操作も30キー範囲に入れた薙刀式を僕は開発して、
推奨している。
(格子配列の導入には現在は自作キーボードが不可欠で、
このハードルの高さは否めないが、出来ない範囲ではない。
半田以外のqmkやパーツ集めの壁もあるので、
色々調べてからやるのを勧めるが)
ブラインドタッチは、
キーボードと長く付き合うには不可欠の方法であるが、
それを享受出来ている人がすでに少なく、
現状のブラインドタッチがそもそもおかしいと言う人はさらに少ない。
壁を超えた人と、超えてない人の間の、
断絶は大きいと思う。
僕は、別の超え方があるよと発信したい。
2. カナ配列の壁
ローマ字は効率が悪い。
カナ配列のほうが効率が良い。
しかしローマ字は記憶負担が少なく、
カナは記憶負担が高い。
このジレンマがある。
ただし、効率の悪いカナ配列(例: JISカナ)より、
効率の良いローマ字配列(例: けいならべ)の方が、
効率は良いと思う。
打鍵数だけで比べれば、カナ<ローマ字。
指の動きの複雑さでいえば、カナ>ローマ字。
カナ配列のベストはまだ決まっていない。
打鍵数をローマ字よりどれだけ減らせるか、
指の動きの複雑さをどれだけなるべく減らせるか、
という開発競争が、カナ配列の歴史そのものだろう。
僕の場合は、
打鍵数削減のためにローマ字を捨てた。
また、
ローマ字で発生する脳内発声が、
カナ配列ではなくなり、
手書きと同じ静かな状態
(僕は手書きで脳内発声がない)になったため、
カナ配列の壁を超えられた。
僕から見れば、
脳内発声が邪魔で、打鍵数が多いローマ字に、
何の意味もないと思う。
カナ配列でそうじゃない人もいるし、
ローマ字配列でそうじゃない人もいるだろう。
色々な事情が壁の前にある。
カナ配列を難しいんじゃないかとためらう人は、
比較的易しいカナ配列、
たとえば新JIS、月配列あたりを使ってみて、
カナいけるぞ、なのかどうかを判断されたい。
(この先沢山の壁を超えられるなら、新下駄と飛鳥が、
効率も速度も難易度も最高峰クラスだと僕は思う)
なお親指シフトは勧めない。
qwertyローマ字のような欠点がたくさんあると思う。
その壁を超えられない人は、
効率の良いローマ字配列、
たとえばSKY、けいならべ、カタナ式などを触ってみるといいと思う。
3. 同時打鍵の壁
同時打鍵は相性がある。
右手はできても左手はできないとか。
同時打鍵は、
少ない物理キーで沢山の内容を使い分ける為にある。
同時打鍵を用いない配列にする手もある。
同時打鍵でも比較的優しいのは、
人差し指同時打鍵の薙刀式だと考えている。
僕個人は、親指の同時打鍵はあまり合わなかった。
親指よりも、順手と逆手の使い分けの、交差が合わなかった。
相性があるのはほんとだ。
4. シフト面の壁
少ない物理キーに沢山のカナや機能キーを載せるため、
カナ配列はシフトを使う。
単打面、シフト面1、シフト面2…
などという言い方をする。
シフト面が2でダメな人もいるし、
シフト面5ぐらいいける人もいるし、
シフト面があるだけで辛い人もいるかもだ。
薙刀式は、カナに関してはシフト面1だが、
機能キーに関して2面、
自分定義の単語登録(固有名詞推奨)を1面持つ。
カナ部分だけ使っても問題ないので、
だとすると易しい部類だろう。
5. 薬指小指の壁
僕は物理的にこの壁を超えられない。
右薬指は案外器用で、準中指くらいには動くけれど、
残りの、左小指薬指、右小指が弱い。
人差し指ほど自分の意思で動かないし、疲労も半端ない。
最新の薙刀式では、左小指薬指、右小指の使用頻度は、
2%、4%、3%に落とした。
これより1%でもあげると悲鳴をあげるギリギリだ。
たとえばqwertyローマ字の左小指使用率は12%。
僕はqwertyローマ字で、薙刀式の1/6しか書けない。
逆に言うと、qwertyローマ字は6倍の枷を僕にかける。
qwertyローマ字に恨みのある僕の立場もわかるだろう。
壁が立ちはだかっても、
そこに壁があるとわかるだけのことだ。
横を通ったり下を潜れば良いと僕は思う。
6. 4段の壁
数字段をブラインドタッチできるかどうかは、
個人差がとても大きい。
僕は4段以上は諦めた。
QTYも小指外も諦めた。
(Pは薬指で対処した)
範囲が広ければ沢山のカナを単打に出来る利点がある。
範囲とシフトはトレードオフだ。
16ピッチにするなどして、キーボード自身を小さくする手もあるが、
自作キーボードではまだ研究が進んでいない。
僕自身の話をすると、
一つの指に3までしか自由にならないので、
4の担当は多すぎると思う。
人差し指は比較的沢山の担当ができるから、
人差し指と中指だけ小さなキーにして、
10個くらい並べられたらいいなと思っている。
7. 清濁別置の壁
先日も議論した。
出来る人はできるし、出来ない人はできない。
出来る人はやればいいし、出来ない人は無理にすることはないと思う。
目的に対して、手段は最適化されるべきだ。
勿論ギリギリの最適化ではなく、
ある程度待ちを広くしておいたほうが、
言葉を扱う時の基本だと思う。
様々なやり方があると知ることと、
自分の壁を知ることと、
両方やるといいと思う。
ブラインドタッチの壁で立ち止まる人は、
フリックでも音声入力でもいいと思う。
理想は手書き→AI読み取りかもなあ。
僕はかな漢字変換こそ無駄だと思うので。
(漢直の壁もありますね)
2020年01月23日
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