2020年01月25日

【書評】「だから僕は、ググらない。」浅生鴨

え?これが本になるってことは、みんなこれを知らないってこと?
こんなん基本やん。
「歩くためには、右足の次に左足を出します」
くらい、「考える」ことの基本やで?

この本を読んでそう思わない人には、
強く勧めます。
野球において、ボールの握り方くらい重要。


これらのことが本になるということは、
最早この基本が、
色んなアイデアを生む会社で、
伝承されていないということだと、
逆に僕は危機感を覚えた。

僕はどうやって覚えたんだっけ、
って考えると、
連想や妄想は最初からしてたから、
それを客観的に見る目だとか、
どうひっくり返して見るかとか、
そういう「ほかのやり方」を学んだことが大きい。

そしてそれは、
「先輩も後輩もなく、
朝までタバコの煙の中でやるアイデア会議」
で学んだことだとはっきりと記憶する。

ほかの人の頭の中を見たり、
こういう時どうするのかは、
「一緒に空気を長いこと吸う」しかないと思う。


昭和(といっても平成だが)のやり方は、
「みんなで、出るまで粘る」
「出なかったらまた明日集まり、粘る」だから、
出し方をみんな工夫していた。

とにかく出さないと無間地獄。
出しても詰まらなけりゃ無間地獄。
他人の出した眼を誰か別の人が育てて、形にするのを、
リアルタイムで何万回と見ることになる。

その辛い時間が、
実は黄金タイムだったのだと明らかにわかる。


今、某クソ広告代理店のプランナーは、
この集まりをしていない。
一人でやってきた企画を持ち寄り、
クライアントに通りやすいかどうか議論し、
後日整えることしかしていない。

朝から晩まで、何が面白いのか議論したり、
そもそもそれ詰まらんから面白くなるまでやれや、
ということをしていない。

だから今の広告の多くはクソ化している。

つまらないと直接言われることは大変なショックだが、
「そもそも面白いアイデアは万に一である」
ということさえ、
経験しなければわからない。
つまり、9999回詰まらんと言われ、
1回おもしろいと言われる経験がない。

だから批判を恐れて、会議から若手が逃げる。
逃げるから、この真実を知らないまま育っている。

9999回のクソを捨ててないから、
それがスタンダードになる。

世間では、クソは無視される。
センシティブな取り扱いを間違えたものは炎上する。
成功したものは、アンチが湧く。
批判慣れしていないクソアイデアマンは、
無視されるほうを選ぶ。
「だってクライアントがいいっていったんだもん」と。

こうして、自己承認欲求の相手が、
世間ではなくクライアントになる。

そのクライアントが考えていることがクソだとしても、
批判できず、言いなりになることしかしない。

だから今、広告のほとんどは詰まらない。
クリエイター?
何かお創りになったの?
クライアントのちんこ舐めてるだけなのに?


僕のいる広告業界、映画業界の話だ。
恐らく、メーカーや企画業全般でも起こっていることだと思う。


それは物凄く単純で、
かつておもしろいものを作った時のコツが、
失伝しかかっているからだ。

それを防ぐことは簡単で、
みんなで朝から晩まで無限にやって、
おもしろいものが出来るまで終わらないだけのことだ。

そしてその場で、
詰まらないものは詰まらないといい、
面白いものは面白いといい、
面白くなるまで粘ることだ。

それは、「面白い」ということに対して、
最も誠実な態度だと僕は思う。

詰まらないと言われて傷つき、
残り9998のアイデアを出さなくなる若者なんか、
潰れてしまえ。
どうせ才能がないんだ。
才能とは、
10000回目の「面白い」を出せる力のことだ。
1回目に出ることもあるし、10000回目に出ることもあるし、
3回目に出てたことに5000回目で気づき、
それを育てることだって出来る。


これが失伝しかかっているな、
と、
この本を読んで思った。


若者よ。
会社の先輩がこういうことを教えてくれないなら、
会社にいる意味はない。
会社は、先輩にタダで会える場なのだ。
盗むには家に侵入しないといけないが、
最初から玄関が開いてるのが会社だ。

こういうことを教えてくれない会社には、
いる意味がないとすら思う。
だって一人でやってるのと同じだから。


アイデアは、9999回は面白くない。
ただの人の妄想だから。
それに手足をつけ、自立するまで変形するには、
さまざまなやり方がある。
この本はそれのリストである。

ていうか、大体俺が過去記事のどこかで書いたようなものばかりで、
パクったやろ、とすら思う。笑
いや、とても普遍的なやり方なのだろう。



著者の麻生氏とは一度仕事をしたきりだが、
律儀に著書を贈ってくれるので、
いつも励みになる。

作家にとっての年賀状は、作品だよね。
posted by おおおかとしひこ at 16:59| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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