2020年01月31日

溶接

リライトをする時、
「前後はまるで弄らないが、
あるシークエンスだけまるまる書き換えて、
前後と接続する」
ようなことが稀によくある。

これを僕は、溶接と言っている。


以前書いたそのシークエンスがあまり面白くないとか、
リライトを進めた結果、
そこのシークエンスで達成されるべきことが、
それ以前に殆ど達成されてしまうことになったとか
(これも稀によくある)、
そのシークエンスを新しく思いついたシークエンスにすると、
もっと面白くなるとか。

色々な理由はあるにせよ、
新シークエンスを白から書くことになる。

どう書いたらいいか?
基本通りにやるしかない。

すなわち、
全体の流れはどういうものかを確認する。

全ストーリーでの、前半と後半の流れを確認し(1/2)、
前半の中での前後半の流れを確認し、
後半の中での前後半の流れを確認し(1/4)、
その中の前後半の流れを確認する(1/8)。

書くべきシークエンスが含まれる1/8の流れを確認した上で、
それが何シークエンスから成り立っているか確認して、
前までの流れ、
それ以降の流れがどうなるかを確認する。

で、
そのシークエンス内の流れを、
大まかな地図に書く。

リライト段階だと、
ひとつのポイントを決めただけで登場人物が勝手に喋り出すので、
縦書きで右から左に書くとして、
上半分にはポイント毎の流れ、
下半分には登場人物が勝手に喋ったセリフなどもメモしておく。

さらに、
前の流れからこのシークエンスに接続する、
ベストの流れを、
前のシークエンスのケツで作っておく。
(必要ならリライトしても良い)
同様に、
このシークエンスを受けた次のシークエンスの頭が、
どう接続すれば面白くなるかも考え、
リライトのアイデアを出しておく。

溶接というのはつまり、
前後を溶かしてまで、くっつけるイメージだ。

溶接が甘い場合、
つまり前後の溶かしが甘く、
うまく接続できない場合は、ぎくしゃくしたものになる。
溶接しすぎた場合、
全部が溶け合いメリハリがない、
だらだらとした流れになる。
やはりシークエンスの最後は、
キレのあるターニングポイントで終わるべきで、
そのエッジをぬるくするべきではない。

その塩梅は、経験値にも左右されると思う。
溶かしが甘いものや、
溶かしすぎた経験を積むことによって、
熟練の溶接工になるべきだろう。


僕らは配管工なのかもしれない。
常に流れは流れている。
それを制御し、流れそのものを設計するわけだ。
なんだ、俺たちはマリオだったのか。
(ルイージもいるよ)


溶接がうまいこといけば、
流れるように面白いシークエンスになだれ込む。
多少不味くても、新シークエンスが面白ければ、
あとは溶接部分を直せばいいだけだ。

リアルの溶接と違うのは、
何回やってもパイプは溶けてなくならないことだ。

一発で決められる溶接が理想だが、
最初からうまくいかないと覚悟して、
何回かリライトして、
より滑らかに、より面白く、より起伏をつくることを、
想定しておくといいだろう。
posted by おおおかとしひこ at 00:52| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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