これは映画じゃないよ。ゲーム実況動画じゃん。
BGMにちょうどいいレベル。
僕は手持ち酔いがひどく、
飛行機が突っ込んでくる所で5分ハコを出た。
初めてだ。
酔う人は、氷いりのドリンクをおすすめする。
氷舐めながらだと、酔いにくいよまじ。
映画にとって編集の価値を思い出させるものであった。
以下ネタバレ。
編集によってできることが1カット縛りなので、
出来ていない。
いつもならすぐに出来るのに、
出来てないことが多すぎて。
・周囲の状況をそれぞれのアップを重ねて見せること
これが出来ないので一々僕らが周りを見渡して注意しないといけなくなる。
それが、一人称視点のドキドキと一致する大筋ではあるのだが、
途中でめんどくさくなってくる。
僕は馬の死体あたりで、
「はいここ馬の死体見てください、酷いですねー」
というカメラの動きがすごく気になり、
アップで抜いた方が落ち着いてみれるし、
と思ってしまった。
・フィックスだと、構図で視線移動できる
手前舐め奥ピンだと、奥を見てください、
という絵になるよね。
つまり四角のフレームは、見るべきところと見なくてもいいところに整理されている。
だから実質情報量が減ってるのだ。
しかしこの場合、塹壕で左右はずいぶん切られているものの
(ここは工夫を褒めたい)、
逆にディテールをよく観察することになり、
非常に疲れた。
ドイツ軍撤退場所のネズミが酷かったね。
視線誘導が出来てないから、
何をしてるかわからなくて、
字幕見てるうちに爆発してしまった。
じゃあ字幕付きラジオドラマでええやん、って思う。
・切り返しは偉大
人物移動によってずいぶん工夫していたものの、
(バードマンではカメラが回り込むことしか出来てなかった)
結局切り返すにはカメラが回り込まないといけないところがかなり多く、
(バックショットから追っかけて、
人物立ち止まり、カメラ追い越して回り込んで正面へ、
とかがわりと多かった)
あのレンズでの回り込みは酔いの原因にかなりなってる。
「回り込み」は、通常の映画ではとてもショックを受けた時とか、
特殊な効果の時にしか使わず、
一本で多くても2回だろう。
たかが切り返しを撮るために何回回り込んどんねん。
ショックがあったわけでもないのに。
ああいうときは人物に立ち止まらせて、
体を振り向かせる理由をつくるんじゃ、へたくそ。
(時計を見る、タバコを吸う、誰かに呼び止められる、
何かを聞く、誰かを通りすがらせてその人に声をかけるなど)
・状況を示すカットはカメラを上げる
しかし人物へ行く時にカメラは降りなければならず、
降りるまで退屈の間がある。
たしかに川から滝は面白かったけど、
そこからカメラが降りるまで退屈があった。
伝令先の塹壕で、全体の状況を示したのは良かったが、
そこからカメラが降りるまでかかったのが退屈だった。
普通なら人物のヨリにパッと切り返すよね。
降りる→回り込んで人物の正面、
が終わるまで我々は待たないといけない。
それが非常に拙劣で退屈。
・入ったり出たりするまで待たないといけない
マッケンジー大佐の作戦室の出入りとか、
ほんまいらない間だよね。
そこからテントいくまでかかりすぎやで。
「ご苦労だった」から即テントに繋ぐやん普通。
兄を探し切るまでのドキドキは、
そんなに長くなくていいよね。
会ってからのドラマが本番なんだから。
・北はどっちだ
カメラがぐるぐる回ると、
その空間での北(基準方向。この映画の場合は、
どっちが敵側でどっちが味方側か)が、
混乱して、これが酔いの原因になっていると思った。
地下鉄でぐるぐる回らされるとややこしいのと同じだ。
わしは京都で学生やっとったんや。
東西南北感じながら生きとんねん。
視線の方向についてもどこを見てるのかわからないところが多く、
つまりはイマジナリラインが大混乱している。
回り込みの危険性はそこだよね。
こういう時は、
味方側下手シモテ、敵側上手カミテ、と画面に対して左右を決めて、
そちらへ進めば進行している、
などと決めることが多いのだが、
僕はすでに鉄条網のシークエンスで方向感覚を失い、
今どっちに進んでるのか混乱していた。
「味方はすぐ後ろにいる」という感覚が、
映像から感じられなかったためだ。
これは二陣営の対立という基本的文脈に対して、
失敗した演出だと思う。
ああ、カミシモって大事だね。
ほとんど技術論になってしまった。
映画が編集で獲得してきたことを全部捨てるとこうなる、
という失敗の見本市としては、必見だ。
ところで、この作品の価値ってなんだろうか?
届けました、はいおしまい。
伝令して、友のメダルを渡しました、おしまい。
それだけ。
二時間かけたら、もっと偉大なことが映画では出来る。
それがただのお使いゲームに成り下がった。
FPS(ファーストパーソンシューティングゲーム)
ならぬ、
ファーストパーソンお使いゲームだ。
人のお使い見て何が楽しいんや。
自分が操作できるキャラでゲームしたいわ。
ゲーム実況動画なら、
有名人がやってるから、適当に流し見しても楽しい。
つまりこの作品は、
本田翼の実況より価値が低い。
お使いの末、1600人が助かったことが価値あることか?
メダルを届けたからすごいのか?
それが、戦争の何を描いているというのだ。
物語としてなんにも価値がない。
友情のために走り、一回やめよかなと悪魔に囁かれたメロスのほうが、
価値がある物語だと思う。
2020年02月19日
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