「なぜか?」
人は問う生き物である。
「こうだ」となってスッキリする。
このジャンルにはふたつある。
科学と、物語である。
(単純な一対一対応をクイズと呼ぶが、
単純なのでここでは省略)
科学と物語の差はなんだろうか。
科学は、問うことに対して答えがあるとは限らない。
なぜ宇宙はできたのか?
いつできたのか?
どうやってできたのか?
宇宙は終わるのか?
などについては、昔から問われるが答えは出ていない。
一方、
空はなぜ青いのか?
一年で太陽の位置が動くのは何故か?
磁石が北を向くのは何故か?
月へ行くには何を準備すればいいか?
「このクラスに同じ誕生日の人がいる」に賭けるには、
1クラス何人からが有利になるか?
などについては、答えが出ている。
科学とは、
問いと答えの組のことであり、
「なぜならば」という理論の組である。
しかし、すべての問いに対して、
こうだという答えがあるわけではない。
あることに答えが出れば、
じゃああれは?と思うのが人間で、
その全てに対して答えは出ていない。
つまり科学は、
未解決の問い、
解決された問いとその答え、
なぜならばという理論、
この三つの組で出来ている。
これを、「開いた集合」ということにしよう。
物語は、「閉じた集合」でなければならない。
すべての問いに、納得のいく答えがなければならない。
未解決の問いは存在してはならないし、
なぜならばという理屈に齟齬や矛盾や、
期待外れがあってはならない。
物語は、
「なぜ?」に対して、
「なるほど!」を、
うまく与えるエンターテイメントだ。
その最たるものはミステリーだと想像することはできる。
しかしミステリーばかりが謎解きではない。
ミステリージャンルでないものにだって、
問いと答えはある。
「この興味ある状況において、どのように解決するのか?」
は、最大の謎解きだと言ってもよい。
センタークエスチョン、
たとえば「地球は救われるのか?」「彼女のハートはゲット出来るのか?」
などは、最終的に「イエス」になるのが物語というものだが、
「じゃあどうやって?」は、
最大に謎でなければならない。
「自明である」とか、「二手三手で解決できる」
では面白くない。
謎が解決してしまうからだ。
ぎりぎりわからないものを、
ぎりぎりかけて解いていく、
物語とはすべからくミステリーなのである。
狭義のミステリーは、犯人、殺人の方法、
アリバイなどの問いに明快な答えを用意するジャンルであるが、
殺人以外の何かも追求していくという意味で、
物語とは広義のミステリーである。
あの人がこう言った意図は何か、
これを解決するたった一つのやり方とは、
あの組織の目的は何か、
なぜやつはこうしたのか、
渡した手紙の内容、
考えついた作戦。
いろんなところに、問いを仕込むことができる。
そしてそれが、
「見事に噛み合って、ひとつの理論をなす」
から、
物語はすっきりして、
「おもしろい」
となるのではないか?
ストーリーの魅力は、
キャラクターやシチュエーションにだけあるのではない。
こうした、
時間軸を追った、
問いのリストと答えのリスト、
そして「なぜならば」の理屈。
それらが噛み合って、
はじめて物語たりえる。
科学と物語の違いは、
科学は開いた集合で、
物語は閉じた集合であること。
科学の答えと理論は、納得いけばそれでよいが、
物語の答えと理論は、おもしろく腑に落ちなければならない。
科学のキャラクターやシチュエーションは魅力的である必要はないが、
物語のそれは、魅力に溢れるべきである。
そして、科学と物語の最大の違いは、
「何もかもわかった」ときに、
それにどんな意味があるのか、
科学は答えないが、
物語は答える、
ことにあるのではないだろうか。
フジテレビの主催する、ヤングシナリオ大賞というコンクールの応募締め切りが今月末にあるのですが、私はそれに応募しようとある作品の執筆に取り組んでいました。
途中何回かくじけそうになる度に、こちらのブログからヒントを頂き昨日無事に65分の作品を最後まで完成させ応募することが出来ました。
今回とにかく、こちらで提示されている「この不幸なる主人公は善人である」というアドバイスを意識して、何度も主人公の設定に最後まで微調整を重ねました。
コンクールにて、自分の作品が評価されるかはわかりませんが、投げ出さないで脱稿出来たのは、このブログのおかげだと感謝しています。
ありがとうございました。
とりあえずお疲れ様でした。
沢山の「なりたい人たち」はいるものの、
誰も脱稿までやりたがりません。
それは、自分が何者であるか見積もられるのが怖いからだと思います。
たかがコンクール。
これから何十本書くものの、たかが初期作品です。
以後筆を折るまで、「お前は誰か?」を問われ続け、
示し続けなければなりません。
この世界に、価値ある物語を書いてください。
コンクールに落ちようが合格しようが、
最終選考に残ろうがぼろくそに言われようが、
闘いはこれからです。