2020年02月26日

記号化してみる

複雑なストーリーを把握する方法。
二種類の記号化がある。


ひとつは、人物を記号化する方法。

名前をなしにする、顔をなしにする。
男1、女1、敵、みたいな単純な名前にしてみる。

ビジュアルの助けが必要なら、
ピクトグラムで考えてみよう。

それは、たとえ顔が丸で、手足が棒でついた、
ピクトグラムであったとしても面白い話か?

そうすると、「話そのもの」を取り出せる。

どういう事件をどう解決する話なのか。
なぜそれが起こったのか。
なぜ主人公はそれを解決しようとしたのか。
なぜ解決できたのか。
解決し終えて、何が残ったのか、何が変わったのか。
途中途中の場面は、なぜいいのか。なにが面白いのか。
この展開の何が面白いのか。何が心憎いのか。
この場面の何が悲しくて切ないのか。どうしてか。
この怒りの場面の何が…

などと、
ピクトグラムであったとしても、
これらの問いに答えられる必要がある。

つまり、人物が記号だったとしても、
それは面白いストーリーか、をチェックできる。


もうひとつは、
何かの決定的なことが起こる場面を、
全部じゃんけんにしてみる方法である。

勝つか負けるかあいこかは、ストーリーの展開次第として、
「この架空世界ではじゃんけんで全て物事が決まる」
と設定して、
何かを決定する際には全部じゃんけんに変えてみるのだ。

クライマックスがわかりやすい。
最初の第一歩は、じゃんけんに負けたところから始まるかもしれない。
途中の展開では、勝ったり負けたりするだろう。

こうすることによって、
なぜじゃんけんをしなければならないか、
勝ったらどうなり、負けたらどうなるかを、
整理することが可能になるわけだ。

そして、頭から尻までの、
じゃんけん勝敗表を眺めることで、
「これは全勝ちのストーリーである」とか、
「負けがちであったが、最後大勝負で勝ち、人生大逆転した」とか、
「勝った負けたは大体同じだが、ラスト僅差でまくった」とか、
「最後は勝ったものの、人生の勝利だろうか(ビターエンド)」とか、
「今までの勝ちを台無しにする負け終わり(バッドエンド)」とか、
「全負けのろくでもない話」とか、
そのストーリーの種類を判定できるだろう。

とくに人気のあるタイプは、
「負けがちであったが、最後大勝負で勝ち、人生大逆転した」
であろう。

最後の勝ちがこれまでの負けこみを全部清算する形になっているか、
負けこみばかりでなく、ちょいちょい勝って希望を持たせたり、
逆にせっかく勝ってきたのに、一回の負けで台無しになったり、
などの展開をチェック出来るだろう。

ハリウッド映画が面白いのは、
この勝ち負けベースで展開が練られていることだ。

もちろん単純な敵との勝負事ではなく、
心の前進後退などでじゃんけんの勝ち負けに喩えて考えることも可能だ。

これは特に中盤の展開がうまく行っているか、
というチェックに僕は使っている。
中盤の展開が面白くない原因は、
ここで勝ちも負けも起こっていないことがよくあるからだ。

(映画「いけちゃんとぼく」の中盤の脚本的失敗。
原因はCG予算削減で、子供たちだけでストーリーを作らなければいけなかったのだが、
ただいけちゃんの出現場面を削減したために、
展開がなくなってしまったことだと、
今ならはっきりわかる)


もちろん、
センタークエスチョンに対しての、
勝ち負けの話だから、
センタークエスチョンがなんなのかハッキリしていない、
ストーリー以前のストーリーにはこのじゃんけん法は使えないぞ。



人物を記号化する。
展開を記号化する。
これらをやってみると、見えてくるものがある。
何が足りていて何が足りないか、
同じく記号化してみた名作と見比べると、
わかるかも知れない。

名作の研究は、このようにして、
自分のシナリオとの比較で勉強になるのである。


で、
ストーリーが良くなったら、
その上に、人間の強烈な魅力や、
展開の妙を、ガワとして被せるのだ。
骨格だけいいブスじゃあパーフェクトではない。
posted by おおおかとしひこ at 09:36| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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