2020年02月28日

【薙刀式】参入障壁

井上明人さんの記事。
キーボードの「沼」から、プラットフォームの「速度」を考える
https://slowinternet.jp/article/20200220/

参入障壁が高いと、入ってくる人は選別される。
ある種の高級クラブみたいに自動的になるだろうなあ。


僕は、参入障壁は技術の過多ではなく、
熱心さであると思っている。

それをどれくらいやりたいか、
という動機が強いほど、
技術的障壁など簡単に超えられる。

僕は配列沼と自キ沼にいるけど、
参入障壁を超えたのは、
「技術を持ってるから」ではなくて、
「それが必要だったから」だ。

どこにもないから自分で作るしかないが、
自分には理想がある程度見えているなら、
作るしかないし、
使ってみて駄目だったらなかったことにして壊せばいいし、
(勿論、やっぱ駄目でしたの報告はいる。
何故駄目だったかは、周囲の役に立つ)
使ってみて改良できるならすればいいし、
使ってみて良い部分があれば、
ここが良いよと勧めればいい。
同じく、「必要としてる人」に役に立つだろう。

これは、石器時代に似ているかもしれない。
発明をしては他人に勧め、
駄目だった部分を共有し、
良い部分も共有し、
自分の事情に使えれば反映し、
使えなくても知識として持っておけば、
似たケースに使えるかもしれない。

似たような動機を抱える人は、
これらの先駆者の情報が役に立つ。

インターネットの民間利用は、
科学論文の共有(検索)からはじまった。
同時に、情報共有できる掲示板と個人通信のメールがあった。
僕は'93頃から京大内、大学間を結ぶインターネットを使っていた。

この初期の、情報共有の文化が、
配列沼にも自キ沼にもあるように思う。
(タイパー沼はよく分からないので省略)


参入障壁はもうひとつあって、
内部が仲良くなって馴れ合い、
新規さんが敬遠する雰囲気になることなのだが、
大体コミュ障ばかりだから(笑)、
一部を除きご新規歓迎の雰囲気は崩れていないと思う。
三年ROMれという変な古参もいないし、
何を調べればいいか大抵教えてくれる。
調べ力がない人は軽蔑される傾向にあるから、
そこが参入障壁とも言えるかもしれない。

つまりこの沼は、
「疑問に思った人たちが集まった、
調べ力の人たちの行き着くところ」
ということで、
学会に近い構造になっていると思う。

自キイベントが楽しいのは、
学会発表が沢山あり、
成果物を触って確認し、
量産物があれば買い、
自分の疑問点を直接聞いて、
その場で調べることが出来ることだと、僕は思う。



僕の強烈な動機は、
「自分がものを書く道具として、
現行キーボードも現行配列も役に立たない、
にも関わらず強制される」
であった。

会社貸与PCしか使ってなかったので、
まず個人PCを買うところから始めた。
Windowsデビューからだ。

qwertyローマ字に疑問があったから、
配列をローマ字カタナ式、
カナ薙刀式と作ってきた。
(ほんとはIMEも作りたいがその調べ方がわからぬ)
DvorakJとかえうちがあったから、
設計と追試だけに専念できた。作者に感謝だ。

hhkbを買い、NiZを買い、
世間で最高級とされる物理キーボードを使ったが、
満足できなかった。
「左右対称かつ左右分離の物理であるべき」を実現するために、
ミニマリズムのMiniAxeを購入。
やったこともない半田付けの道具を買うところからはじめた。
遊舎工房のオープンが大きい。
スイッチを触って比較できるのが大きかった。

木工も覚えた。
自作パームレストで沢山の木材を勉強したので、
チークがケース作りやキーキャップに良いとわかった。

だが更なる形のキーキャップを作るためにBlenderを覚えて、
3Dプリントに30万は使ったかな。

キースイッチを自分好みにカスタマイズするため、
バネの改良もはじめる。
打鍵方法や姿勢のことも見直し、
空中庭園バビロンも作って使っている。

ナイロン樹脂を染めるために、
鍋や網なども買い、極性のある物質を染める化学原理なども少しかじった。

そうそう、AutoHotKeyやqmk_firmwareも、
一から勉強したな。端っこが分かった程度だけど。




すべては、
「自分がものを書く道具として、
現行キーボードも現行配列も役に立たない」
が動機だ。

勿論その前提として、
「おれは猛烈に書きたい」がある。

手書きでよければ、PC以降は全部必要ない。
そして僕の手書きは900字/10分を超える、
タイパー入口並の創作文速度である。

これをデジタル化するために、
ブラインドタッチ習得からはじめて、
ここ4年くらい工夫してきたわけで、
すぐに行けると思ったが全く見えず、
最近ようやくエンドゲームが見えてきた感じ。


参入障壁を超えるのは、情熱だ。
僕は「現状がおかしい、もっと良くなるべきだ」
という情熱だけでここまでやってきた。

それは既に、ベストの紙とベストのボールペンと、
ベストの手書きを確立していたからで、
それを超えるデジタル入力法でない限り、
僕はイイネとは決して言わない。

タイパー沼を覗いても、
僕の想定より遥かに速く、
あまり参考にならなかったので出入りはしなかった。

配列沼は、色んなやり方を知るのに大変役に立ったが、
速度基準をタイパーのような猛烈さにしていることには、
そろそろ疑問が出てきた。

自キ沼は、常に面白い技術が生まれているが、
ハード沼に近くて、ソフト(論理配列)沼と中々融合しない。



調べ力がある人、強烈な動機がある人。
これらだけが参入障壁を超え、
そうじゃない人は超えないのは、面白い。
一種の秘密クラブかも知れず、
紳士同士の同好の士の集まりとは、そうしたものかもね。
盆栽とか釣りとかに近いのかも。

自キ沼も配列沼もタイパー沼も、
「改良」が趣味なところが面白い。

石器時代の科学のはじまりに似ていると思う。

爆発的に流布するのは、
ひとつの形式に定まったときで、
おそらく定格論争が起きて、
標準システムを政治が決めたときだろう。

だがそれに反旗を翻しているのが、
そもそもの配列沼や自キ沼なので、
本質的に反政府主義者の梁山泊なのだ。


男子はみんな梁山泊やトキワ荘が好きなんじゃないかな。
時代を変えるほどの力があるかは分からないが、
確実に何かがここで起こっている面白さはある。
posted by おおおかとしひこ at 11:19| Comment(0) | カタナ式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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