2020年03月13日

The Only Neat Thing to Do

タイトルの件で「たったひとつの冴えたやり方」を思い出し、
未読だったので読んでみた。めちゃめちゃすごいやんけ。

neat: こぎれいな、こざっぱりした、適切な、均整のとれた

などの意味らしいが、
この原題を「冴えた」と切れた言葉で訳出した、
浅倉久志という人はすごいと思った。
それこそがもっともneatな仕事だと思う。
(平凡な直訳なら、「やるべき唯一の綺麗なこと」だぞ?)

ネタバレなしで脚本論を語るとしよう。


このタイトルの素晴らしさは、
「このやり方とはなんだろう?」
ととても気になることだ。

さらに重要なのは、
問題が明示されていないことだ。

「ピタゴラスの定理を証明する、
たったひとつの冴えたやり方」とか、
「人口増加問題を解決する、
たったひとつの冴えたやり方」とか、
「新型コロナを滅亡させた、
たったひとつの冴えたやり方」
のように、
問題がタイトルに入ってしまうと、
読むまでに予想大会が始まってしまう。

Aかな、Bかな、などとなっているときに、
Xだとなったとしても、
「Aの方がいいじゃん」となってしまい、
「なるほどそれはたったひとつの冴えたやり方だ!」
と全員が納得することはないだろう。

だからあえて隠したままにしておく。
しかしオチをとてもとても気にさせるタイトルになっている。

つまりこれは、
この回答を知ったときに、
全員が驚き、成る程と思い、そして感動のあまり号泣しなければならない、
という、
難易度ウルトラCの無茶振りなのだ。

これを難なくやってしまった、
このタイトルと内容の関係が素晴らしい。

そしてそのテーマ性こそが、
このやり方を知ったときに鮮やかに浮かび上がってくる。
もの凄い難事業を、
軽い文体(80年代女子高生調が微妙に入っているのは、時代だね)
でやってのける凄まじさ。


これが名作に値するということなのだ。



僕はたまたまこの名作を知らずに生きてきた。
勿体ないことをした。
しかし読んだことがない人は、
真の名作に会える幸福があるぞ。



もしタイトルと内容とテーマと、
ネタバレとヒキを考えるときに悩んだら、
この小説を読んでみるといい。

ハヤカワ文庫でたかが900円。
(中篇集三本の中の、第一話がそれ)
それでこの秘密を知れるなら安いものだ。

100万円払っても惜しくない、
たったひとつの冴えたやり方とは。

是非その目で確認されたい。
posted by おおおかとしひこ at 16:29| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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