2020年03月17日

ノンストップライティングと憑依現象

マラソンライティング、
またはノンストップライティングについて、
薙刀式の項で少し書いたが、
脚本論としてもすこし書いておく。
自動書記や憑依という現象について。


誰もが、こうした現象を経験している。
次々に書くことが生まれて、
まるでだれか別の人に書かされているように思うような、
憑依状態の感じを。

キャラクターが勝手に行動して、
思っていたのと違う展開になってしまったとか、
用意していた結末よりずっといいものになったとか、
途中の展開で神アイデアが出てきたとか、
そういった経験だ。
あるいは書いても書いても出てくるので、
ただ記録するだけで精一杯、なんて状態。

なぜこういったことが起こるのか考えると、
トランス状態になるからではないかと思う。


トランス状態に関する研究などほとんど進んでいないと思うが、
定義的に言うと、
我々の顕在意識がある状態と、
眠って意識不明になった状態の間の状態、
と広く定義されている。

たしかに、モノを書く時の意識状態は、
普通の意識状態ではない。
あちらの世界に意識を飛ばして、
この世の常識やしがらみなどを飛ばした、
あちらの都合や事情でものを考えている。
だからこそ現実逃避になったりして、
サラリーマン作家の精神のバランス調整にいいと僕は考えている。
一種の箱庭治療になっていると。

書いているときだけではない。
ゲームに夢中になっているときとか、
読書に夢中になっているときとか、
そうした「夢中」状態になっているときは、
軽くトランスになっていると思う。
仕事でやらないといけないこととか、
人間関係のあれこれとか、
そういった現実のことは忘れているからである。

それは通常の精神状態ではないわけだ。

書く時も同じで、
通常の精神状態ではないと思う。
もちろん業務上のメールとか、
硬いものを書く時は通常の精神状態だと思うが、
もうすこし架空のものを書く時は、
あっちの世界に行ったままやっているのではないだろうか。
夢を見ているときに近いというか。


マラソンライティングという鍛え方がある。
10分間、もしくは20分間、
無呼吸走をする。
つまり、一度も筆を止めずに書く、
というルールで書く。

内容は物語でもいいが、難易度が高いので、
ブログとか、思っていることとか、日記がよい。
次第に書くことが無くなってきたら、
「書くことがない、目の前にはバスが通っていて、赤い。
それが停車した。
赤いと言えば、その前を赤いブルゾンの人が通り……」
などの目の前に見えているものを書きつづけても良い。

これはどういうことの訓練になるかというと、
トランス状態を作りやすくする訓練なのだ。

トランス状態を意識側から起こしていくことが、
普段の執筆だとすると、
手でトランス状態を覚えておく、
ということがノンストップライティングの目的だと、
僕は考えている。

その状態を手で覚えているならば、
その速度で書き続けることが、
トランス状態にすぐに入れるようになるということ。
この時物語世界に十分入っていれば、
憑依がおこりやすいと僕は考えている。

つまり、手の速さという、依り代を作っておくんだね。


注意すべきは、
憑依が起こったあとの原稿を見返す時で、、
パワーはあるのだが、
歪んだ感覚になっていることが多い。
ご都合とか、無理があるとか、破綻があるとか。

それを理性で判断して、
よりよき原稿に仕上げていくことが、
リライトの仕事かもしれない。
情熱と冷静の間で、原稿は出来上がる。


憑依状態、降りてくる状態は、
ひとつの原稿で一回程度しかないと思う。
そんなに何回もない。
それを大事にしつつ、
いざ来たら、大量に書けるように、
手を鍛えておくことは、
やっておくべきことだと思う。

それに手を慣れさせるために、
マラソンライティングはとても役に立つ。

僕は手書きを推奨する。
900字/10分くらい書けたら、
タイピングは必要ない。
薙刀式ならもう少し早く書けるが、
漢字変換不要の手書きのほうが文そのものに触れられるので、
トランス状態になりやすいと考えている。
タイピングはコンドームみたい。
生がいい。
posted by おおおかとしひこ at 16:39| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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