3/20に死ぬんだっけ。
ハードル上がっちゃったなあ。
4コマの内容はしょうもないのに、
何故か盛り上がった理由は、
劇的アイロニーを使っているからである。
劇的アイロニーは、
何も「すげえ皮肉」という意味ではなく、
dramatic ironyの直訳である。
僕は訳語が間違っていると思っていて、
「劇の上での齟齬」と訳すべきだと思っている。
どういうことかというと、
「登場人物の知っている情報と、
観客の知っている情報が違う」
状態のことをいう。
このうち有名なのはヒッチコックの例で、
「テーブルで談笑している登場人物を描いておき、
観客だけがテーブルの下に置かれた時限爆弾のことを知っている」
という状況を描く例だ。
ある時間になったら爆発することを観客は知っているのに、
登場人物は知らないものだから、
しょうもない会話をしている場合じゃないぞ!と、
ハラハラする仕組みになっているわけだ。
解説するまでもあるまい。
「100日後に死ぬワニ」は、
まさにこのような状態である。
観客だけは3/20に死ぬことを知っているが、
ワニたちはそれを知らない。
その状況だ。
だから盛り上がる。
そんなしょうもない4コマやってる場合か、
しかしそれこそが、かけがえのない日常なのか、
などなどなど。
同様のことは、「君の名は」でも見られた。
(新海じゃなくてオリジナルのほうね)
すれ違う二人が、橋の上と下で待ち合わせをしていて、
「会えない」というハラハラを楽しむものだ。
観客は状況を分かっているのに、
登場人物は知らない状況に追い込むことで、
観客は「速く気づいて!」というハラハラを楽しむことになる仕掛けだ。
片思いものとかでもよくあるよね。
勿論逆もある。
登場人物が知っている情報があり、
観客はまだそれをしらされない状態である。
「俺はそれを知っているぞ」と先回りしている犯人とか。
「分ったぞ!」と先に答えを見つける天才キャラとか。
この場合、観客はその答えを知りたくて、
その先をハラハラしながら見ることになる。
どちらも劇的アイロニーという。
アイロニーとは「逆の状態」くらいの広い意味で、
「皮肉」はそのうちの一部の意味である。
なので誤解を生むので、
僕は「劇の上での齟齬」とでも訳したほうがいいと思う。
「100日後に死ぬワニ」がそれを利用していることは明白で、
意図的かどうかは分らないが、
タイトルの勝利と言えよう。
もっとも落ちがしょうもなかったら、
めためたに炎上するので、
やり逃げは出来ない状況に追い込まれていることはたしかだ。
「3/20に発売されるどうぶつの森の世界へ転生する」
という最終回予測がネタ的に面白かった。
まあ、どんなことをやってもハードルが上がりすぎているので、
今から炎上を楽しみにしている次第である。
「劇の上での齟齬」は、
他にもいろいろ使えるテクニックだ。
ただでさえ誤解はドラマの基本である。
それを登場人物同士だけでなく、
観客も巻き込むスタイルになるわけだね。
色んな工夫をして、
観客を巻き込んで欲しい。
よくあるもし明日死ぬとしたら何をする?の100日後バーじゃんなのかと。
>むしろあれはワニ自身も自分が100日後に死ぬことをわかっていて、それでも何気ない日常を過ごしていることに魅力を感じる漫画だとばかり思っていた。
どちらとも言ってないので、
それと劇的アイロニーとは異なります。
「どちらとも言ってない」はまた別のスタイルになりますね。
生観客入れての第四の壁ルールですけどね。
子供だから第四の壁を破ってしまうという。
志村が知らないことを観客が知っていて、
ハラハラ?するという意味では劇的アイロニーです。
(後半は志村が聞こえてるかどうかをネタにしてたので、
意図的に第四の壁を破ったりしてました)