2020年03月29日

興行は水物

とよくいう。

「いい出来とは限らない」
「いい出来だと思ってたが受けなかった」
「大したものじゃないと思ってたのが受けた」
からだろうか。
これは作品と大衆の関係で理解できると思う。

そうじゃない、別の事情。


東京五輪が一年延期になったのは記憶に新しいが、
早くも7月開催で話が纏まりつつあるらしい。
なんでやねん。
暑すぎ問題で大ブーイングだったやんか。
今秋開催にするチャンスやんけ、てかなんでそうせえへんねん。

それは、「会場を押さえる関係」だ。
会場だけでなく、電波もだ。

わかりやすく会場だけで考える。

来年7月の会場を抑えるには、
どれくらい前から動かないといけないだろう?
僕はイベントの専門家ではないが、
一週間前では無理なことはわかる。

居酒屋に忘年会の予約入れるのだって、
二週間前じゃ遅いこともあるよね。
海外旅行は半年前?
国内旅行は一ヶ月前くらい?
から予約しないといけない気がする。

たとえば、野球場は、野球のためだけに貸してるわけじゃない。
東京ドームコンサートや、
親子スポーツ教室に貸したり、
あるいは映画やらCMの撮影に貸したりしている。
勿論プロ野球がメインだが、
それ以外の用途でも稼いでいるわけだ。

5万人規模の会場は、どれくらい前からスケジュールが決まっているのだろう。
あるスケジュールを動かしたら、
他方に迷惑がかかり、それが別の会場を抑え…
という玉突き連鎖があることは明白だ。
一週間に一日稼働すれば儲かるのか、
毎日稼働しないとペイしないかは会場によるだろうが。

つまり、
イベントは土地の奪い合いという原始的な勢力争いである。

来年の東京五輪7月開催情報は、
そのような争いの結果であることが予測される。
電波という土地の争いもその方向でやれ、
ということだろう。
(電波のほうが儲かるから、電波ありきかもだが)



さて興行論だ。

つまり、
イベントは、ハコのスケジュールが先に決まって、
ずいぶん長い間準備期間があって、
催し物、コンテンツがあとで完成する。

たとえば東宝シネマでは、
一年先まで放映スケジュールが決まっていて、
二年前までに、
女性向け○本、男性向け○本、子供向け○本などの、
上限が決まっている。
大作や小品のバランスまで決まっているかは知らない。
これをやってるのが、
制作部から評判の悪い調整部という部署らしい。

制作部は今作るべきだと主張しても、
二年先のハコが全部埋まってるから無理、
と調整部は返すのだそうだ。

明らかにこれは自由な映画作りを妨げているが、
興行の本質が先にハコを抑えることであれば、
致し方なしなのかも知れない。

理想は、
出来上がった面白い順でかけていけばいいと思うが、
安定した供給(質量ともに)が見込みが立たない以上、
見込めるスケジュールを作る部署として、
調整部が出来たのだろう。
相場師みたいな?


で、ようやく本題。

なぜ興行が水物なのか?

何年も前からの弾丸を、今打つからである。

予定していた出来とは限らない。
出来と儲けは、ずれることもある。

だから、「わからない」としか言いようがない。

だから、「わかるもの」、つまり原作ありとか、人気芸能人で、
担保を取りたがるのだろう。
人は、目をつぶって崖に向かって走れない。


興行が、ハコ先取り方式である以上、
過去に企画されたものしか流せない。

一方、ネットでは、
今出来たものが今流れる。

だから、ハコモノ興行は、
今後衰退するかも知れないね。
鮮度が違うんですもの。

鮮度に左右されない、鈍重な名作しか、
ハコモノではかからないかもしれない。


ということで、
東京五輪は7月に決まりそうで、
これから映画館に来る映画は、2、3年前に企画されたものだ。
ハコの調整が三ヶ月くらい前でよくなれば、
もっと柔軟になるだろうか?




(追記:
100日後に死ぬワニが、仮に20日目あたりで広告代理店の目に止まったとしよう。
広告代理店たちは、
80日後の感動的完結を期待して、
グッズを作り、PVを作り、ステマ計画をし、
書籍化や映画化に動き、カフェや追悼ショップを計画し、
ゲーム制作へ動いた。
80日後の見込みと、出来がずれていたわけだ。)
posted by おおおかとしひこ at 12:05| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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