感染のおそろしさは、直感と異なることである。
これは幾何級数的爆発とか、指数関数的爆発とかいわれるが、
理系以外の人たちにはピンと来ないかもしれない。
もと理系として、どう直感と違うかわかりやすく書いておく。
感染の過程を、
「1人の感染者から、平均2人にうつる」と単純化してみよう。
(2回うつしたら他の人にはうつさず、
2回うつすまで感染は終わらないとする。
これは、
「複数の人から同時にうつされる」を計算上除外するためだ)
簡単のために、日本人を1億人としよう。
仮に、一日2人にうつすとして、
何日で全員感染となるか、予測してみよう。
直感では、1億÷2=5000万日が予測される。
仮に10人の感染者が一気に入国したとしても、
1億÷20=500万日だと。
これが違うんだな。
なぜなら、
うつされた2人は、4人にうつし、
その4人は8人にうつすからだ。
倍々ゲーム(バイバイン)になるのである。
じゃあ、1人の感染者から一日で2人うつしたら、
全員感染まで何日か?
2^x>1億となるxを求めよという問題だ。
これは高校理系数学では、log関数で解く。
過程はすっとばして結果だけ書くと、
27日だ。
直感の5000万日よりも、もんのすごく速い。
10人の感染者からはじめるとどうだ?
21日である。
1人から始めるより10倍早くなるわけでもないのが、
直感と異なるところである。
これがダイプリでの初期行動だ。
直感では、
「なるべく少ない数に感染者を減らす」を目的とするように思えるが、
そこは関係なく、
「初期感染者が10倍になろうとも、
この船から出さずに感染爆発を防げば、
どうということはない」
という俯瞰があったと考えられる。
(結果的にそうだったのかもしれないが)
ちなみに、
2人を2.5人にしてみよう。
ちょっと増えただけだから、
27日が2/2.5倍の、約22日になると直感では思う。
しかし19日という答えが出る。
直感より速くなってしまうのである。
ちなみに3にすれば16日。
これが倍々ゲームの恐ろしさだ。
複利の恐ろしさと言ったら、一部の文系には伝わるかもね。
借金が怖いのは、直感と違うスケール感になっているところだ。
リボ払いがなかなか終わらないのはこうした理由である。
我々の直感は、
難しい言葉で言うと、線形性を帯びている。
ざっくりいうと、A×B=Cの形をしているものだ。
小学校で習う計算はすべてこの形だ。
だから何事もこの法則で「予測」を立ててしまう。
1億人の中に汚染者が1人いても、
5000万日あるだろと。
違う。たった27日しかない。
事態は線形ではなく、2^xの形をしている。
この、「事態が加速度的にやってくる」
のが倍々ゲームの恐ろしさである。
(多胡輝の「頭の体操」の中に、
Q. 10分で倍に増える、非常に小さい菌がある。
容器の中にひとついれ、容器の半分に増えるまで100日かかった。
容器一杯になるまであとどれくらいか?
A. 10分
という問題があった)
で。
今のところの調査では、この数字は2でなく、4だと言われている。
しかし1日ではなく何日かかるかはまだわかっていない。
このへんが専門家の予測が根本的に難しい理由だ。
統計を取れる十分な時間がないからである。
マスコミは、
幾何級数とか指数関数とかいう、
理系にしか伝わらない言葉で伝えるのはどうかと思う。
これらの議論をした上で、
「借金が雪だるま式に膨れ上がるように感染者が増える。
借金の複利はせいぜい10%だが、コロナは200%だ」
とでも書けば、
「あと何日で蔓延するのか」
「無自覚感染者が街に出歩くことがどれだけ危険か」
を伝えられるのではないか。
正しく恐れよ、という言葉は、
直感と異なる幾何級数的指数関数的危機である、
予測が直感的ではない、ということなのだが、
それは言葉がわからない人には伝わらない。
なので解説した。
じゃあどうすればいいかというと、
うつされる2人にならなければいいし、
無自覚感染で2人にうつさなければいい。
これを全員がやれば、広がらないわけだ。
5000万日では済まず27日になることを、
理解しておくだけでいいと思う。
2020年04月05日
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