仮想現実では、思ったことが具現化する。
コールドスリープを繰り返しながら何世代も続く宇宙移民船。
超能力を手に入れたと思ったら、敵にもいた。
重力変動下の世界では、重力兵器が生まれる。
なんでもいいんだけど、
こういう魅力的な世界観は、映画の魅力の一つだ。
しかし、これとストーリーはほとんど関係ない。
なぜなら、
同一の世界観を使って、
別の人物の別のストーリーを書くことが出来るからである。
たとえば、ガンダムの世界設定を用いて、
いくつの主人公とストーリーのバージョンがあるというのだ。
魅力的な世界を作ることは非常に魅力のある行為だが、
我々が苦心するストーリーとは、
なんら、ほぼ、関係ないと断言しても良い。
なぜなら、
殆どのストーリーは、
現実で起こることに置き換えることが、
大体できるからだ。
たとえば「アイアンジャイアント」は、
鉄の巨人と出会った少年の話で、
それをめぐるナチスと戦う世界観なのだが、
その世界観と関係なく骨格だけを抽出すれば、
「捨て犬を拾った少年」の世界に置き換えられる。
逆に言えば、
「捨て犬を拾った少年」を、
アイアンジャイアントの世界観に放り込んだものが、
「アイアンジャイアント」という映画なのだ。
だから、結局、
ストーリーというのは、
日常の、この世界でも成立する何かを、
その世界観で増幅したに過ぎない。
語られるものは、
人間の気持ちであり、
人間関係の対立であり、
伏線や行動や結果や小道具やターニングポイントなのだから、
ストーリーそのものには世界観は関係ないのだ。
世界観は精々ガジェットに過ぎない。
もしあなたが、
世界観を構築することが、
堪らなく面白くて、
そんなことばかり夢想しているならば、
それはそれで貴重なので記録しておくべきだ。
しかしその間、
ストーリーはひとつも出来ていないことに注意されたい。
ストーリーの構築は、
世界観構築とは、まったく別の次元の出来事だ。
このことが分かってくると、
現実でも成立するストーリーAを、
世界観Bの中に放り込むと面白いぞ、
などという発想をすることが出来る。
あるいは、Aを放り込むと面白そうな世界Cをクリエイトしてみようと、
発想することも可能だ。
逆に、世界観XでストーリーPQRなどを思いつき、
シリーズ化することもできるかも知れない。
あるいは、
ある映画から世界観XとストーリーAを分離して、
YやBに置き換えることを頭の中でできるようになるかも知れない。
まったく別の話に見える複数の映画から、
ストーリーの骨格だけを抜き出して比較することも、
可能になるだろう。
世界観とストーリーは別だ。
だから、組み合わせることを選ぶ自由があるぞ。
(追記:
「めちゃくちゃ魅力的な世界観なのに、
ストーリーが全然詰まらない映画」の例。
「スチームボーイ」「オネアミスの翼」
「ワイルドワイルドウェスト」
これらを見れば、
世界観は映画そのものではないことが理解できるだろう)
こんばんは
ウイルスが蔓延する世界とか、地震が多い世界とかは題材するのは駄目なのでしょうか?
風刺的になりえて自重した方が良いのでしょうか?
僕は不謹慎も芸術だと思ってるので、駄目とかいいとかはないと考えます。
問題は、「地震こわいぜーひゃっほう」「ウイルスやばいぜーひゃっほう」
と、世界観を楽しんで終わりの遊園地になることだと考えます。
問題は「そこでどんなストーリーがあるのか」
「そのストーリー全体でどんな意味があるのか」
「それがこれまで作られたあらゆるストーリーと比べて、
どこが新しく優れていて、どこは平凡か」
だと考えます。
追記に「すげえ世界観なのに駄目な映画」の例をあげました。
「ワイルドワイルドウェスト」とか、予告で凄い楽しみだったのになあ。
世界観に酔うとああなってしまいがち。
未見ですが、世界各国の都市がハウルの城みたいになってる、
「移動都市/モータルエンジン」も同じ匂いがする。
そういえばハウルも世界観だけのクソ映画だったなあ。
そこだけ気になったのであしからずご了承ください。
ショッカーもナチスなので、
ナチス的なイメージの科学組織くらいの意味で読解しておいてください。
子供から見れば軍隊もナチスも同じくらいの粒度で。