ストーリーはどうやったら出来上がるのか、
いまだに僕はわからない。
しかし確実なやり方がひとつある。
混沌のスープをつくる方法だ。
やり方は簡単で、
白紙を一枚用意して、
思いついたアイデアを書き込むだけだ。
ストックしてたものでもいいし、
今思いついたやつでもいい。
箇条書きにするよりは、フリーレイアウトで書くべきだ。
気になることは真ん中に書いてもいいし、
補足的なことは端に書いてもいい。
順番は気にしない。
斜めに書いても縦書き横書き混在でもいい。
日本語でなくてもいいかもしれない。
そのうち、何かと何かに線を引きたくなるだろう。
関連を見つけるからだ。
何かに丸をつけたり、下線を引いたりするだろう。
重要なこととそうでないことが分かってくるからだ。
何がメインで何がサブか、
ごちゃごちゃしたメモ書きから浮かび上がってくるものだ。
これをやるコツは、
A4程度の「白紙一枚」を使うことである。
罫線は禁止。アットランダムな空間をつくるためである。
二枚(以上)は禁止。世界をここの中に限定するためである。
色んな思いつきが出てきても、
紙を変えてはいけない。
その紙の中だけで考えること。
そのうち、呪いの文書のようになってくるので、
また白紙一枚を用意する。
その白紙に、
今のアイデアのメインを書く。
サブのアイデアも書く。
細かいディテールは前の紙のどこかにあるから、
サルベージは可能なので書かない。
今やるべきことは、
アイデアの骨格を作ることだ。
だからディテールよりも、
大きな構造について、アイデアを書いてゆく。
それもそのうちディテールや細かい文字で埋まってくる。
そうしたら、
その紙に「2」とナンバリングして、
最初の紙に「1」とナンバリングして、
また白紙一枚を持ってくる。
で、
いまあるアイデアの形のようなものを、
あらためて白紙に書いてみる。
以下、補足的な何かをまた思いつくから、
足してゆく。
アイデアの自己組織化である。
創発ともいう。
生命は、遺伝子のプールの中で自己組織化して誕生したという。
一度スパークを得たら、
あとは科学法則に従って発展しただけだという。
ウィルスの構造を見ていると、
さもありなんと思う。
アイデアは、点から線へ発展して、
線同士を結びつけた、網目になってゆく。
時間的発展や変化もあるだろうから、
動いてゆく網目になる。
アイデアは生命に似ている。
可塑性があり、一旦生命を得たら勝手に動き出す。
これをストーリーとして使える形にするには、
以下の背骨が必要だ。
問題はどうやって起こったのか?
それは誰によってどのように解決したのか?
なぜその人はその問題を解決しようと思ったのか?
なぜその人は他の人と違い、解決できたのか?
つまり、
「主人公は、問題を解決する」
という、物語の背骨である。
アイデアにそれが足りなければ、
その足りない部分を重点的に補足発展させよう。
もちろん、一人きりで解決できないなら、
協力者のことについて考えてもいいし、
それを妨げる敵について考えてもいい。
それが成立する世界観を、いろいろ変えてみてもいい。
アイデアは可塑性があるので、
この段階であればいくらでも組み合わせられる。
こうしているうちに、
ナンバリングされた何枚ものアイデアが出来上がる。
ひとつのアイデアは練られ、進化し、何度もコピーされる。
コピーするときには、白紙から書くのがコツで、
前のを見ないで書くと良い。
そうすると本質だけを書こうとするので、
そこでうまく淘汰が行われる。
これらを何世代もやる。
ナンバリングは5を超え、10を超えるかもしれない。
関連されたものは沢山に増え、
そろそろ一枚に収まりきれないかもしれない。
あるいは、
たとえば6で出たアイデアを発展させて7、8を書いたが、
5から別方向へ発展させたのが9、
のような、系統樹の枝分かれが存在するかも知れない。
それらを統合して10で、7の枝番が11、
ということもあるだろう。
その系統樹だけを整理した紙を作っても良い。
アイデア同士の優劣を選んだり、
あるいは「これはこう考えたのだとしたら、
それはそうは考えられないか」などを思いつくこともできるからだ。
で、これらを練っているうちに、
「そろそろストーリーとして書き出してみよう」
という日がやってくる。
アイデア遺伝子のスープは、
プロットという生命体として受肉するわけだ。
プロットに書き出すと、
足りないことがあることに気づく。
それらはまた同様に考えれば良い。
「○○はどうすべきか?」
と白紙の真ん中に書けば、
また何かを思いつき、紙が埋まってゆく。
こうして、プロットはいつの間にか出来る。
世界観やキャラクターのディテールも出来始めているだろう。
それは別個にメモして、
ストーリーのプロットとは区別できるようにしておくこと。
ディテールを思いつくことは簡単で、
根本のアイデアを思いつくことは難しいから、
ディテールを思いつくことの方が楽で楽しいため、
そちらに逃避しがちだからである。
今はディテールを思いつく時間帯ではなく、
ストーリーを考える時間帯である、
と自覚するには、ノートを分けるとよい。
ストーリーのアイデアが、ディテールに対して足りないと、
物理的に見えるだろう。
ログラインを書いてみよう。
短文プロットと長文プロットを書いてみよう。
カード法を試してみよう。
順番を変えたり、アイデアの取捨選択を視覚的に補助できる。
メモしてもいい。しかし偶然に出会うならカードのシャッフルは有効だ。
こうして、
白紙に最初にあった染みのようだったアイデアは、
勝手に進化して、ストーリーという有機的因果関係にまでなる。
これらを更におもしろくするためには、
テヅカチャートがかなり有効だ。
途中の展開部を練るのに使える。
ナンバリングされた紙の中には、
捨てたアイデアもあるだろう。
それは大切にとっておき、
次回作に使ってもいいし、
改稿の際に助けてもらってもいい。
勿論、すっかり忘れて捨ててしまっても良い。
僕は、これらをファイリングして持っている。
困ったら見返す。
自分がどのようにしてアイデアを発展させてきたか分かれば、
自分が突き当たった問題の対処法を俯瞰できるからだ。
偶然、
生命の発生と進化過程に似たやり方を、
僕は自分で編み出してきた。
参考にされたい。
2020年04月28日
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