2020年04月28日

混沌の中から出来上がる秩序

ストーリーはどうやったら出来上がるのか、
いまだに僕はわからない。
しかし確実なやり方がひとつある。

混沌のスープをつくる方法だ。


やり方は簡単で、
白紙を一枚用意して、
思いついたアイデアを書き込むだけだ。

ストックしてたものでもいいし、
今思いついたやつでもいい。

箇条書きにするよりは、フリーレイアウトで書くべきだ。
気になることは真ん中に書いてもいいし、
補足的なことは端に書いてもいい。
順番は気にしない。
斜めに書いても縦書き横書き混在でもいい。
日本語でなくてもいいかもしれない。


そのうち、何かと何かに線を引きたくなるだろう。
関連を見つけるからだ。

何かに丸をつけたり、下線を引いたりするだろう。
重要なこととそうでないことが分かってくるからだ。

何がメインで何がサブか、
ごちゃごちゃしたメモ書きから浮かび上がってくるものだ。


これをやるコツは、
A4程度の「白紙一枚」を使うことである。

罫線は禁止。アットランダムな空間をつくるためである。
二枚(以上)は禁止。世界をここの中に限定するためである。

色んな思いつきが出てきても、
紙を変えてはいけない。
その紙の中だけで考えること。

そのうち、呪いの文書のようになってくるので、
また白紙一枚を用意する。

その白紙に、
今のアイデアのメインを書く。
サブのアイデアも書く。

細かいディテールは前の紙のどこかにあるから、
サルベージは可能なので書かない。
今やるべきことは、
アイデアの骨格を作ることだ。

だからディテールよりも、
大きな構造について、アイデアを書いてゆく。

それもそのうちディテールや細かい文字で埋まってくる。

そうしたら、
その紙に「2」とナンバリングして、
最初の紙に「1」とナンバリングして、
また白紙一枚を持ってくる。

で、
いまあるアイデアの形のようなものを、
あらためて白紙に書いてみる。

以下、補足的な何かをまた思いつくから、
足してゆく。


アイデアの自己組織化である。
創発ともいう。

生命は、遺伝子のプールの中で自己組織化して誕生したという。
一度スパークを得たら、
あとは科学法則に従って発展しただけだという。
ウィルスの構造を見ていると、
さもありなんと思う。


アイデアは、点から線へ発展して、
線同士を結びつけた、網目になってゆく。
時間的発展や変化もあるだろうから、
動いてゆく網目になる。

アイデアは生命に似ている。
可塑性があり、一旦生命を得たら勝手に動き出す。


これをストーリーとして使える形にするには、
以下の背骨が必要だ。

問題はどうやって起こったのか?
それは誰によってどのように解決したのか?
なぜその人はその問題を解決しようと思ったのか?
なぜその人は他の人と違い、解決できたのか?

つまり、
「主人公は、問題を解決する」
という、物語の背骨である。

アイデアにそれが足りなければ、
その足りない部分を重点的に補足発展させよう。


もちろん、一人きりで解決できないなら、
協力者のことについて考えてもいいし、
それを妨げる敵について考えてもいい。
それが成立する世界観を、いろいろ変えてみてもいい。

アイデアは可塑性があるので、
この段階であればいくらでも組み合わせられる。



こうしているうちに、
ナンバリングされた何枚ものアイデアが出来上がる。
ひとつのアイデアは練られ、進化し、何度もコピーされる。

コピーするときには、白紙から書くのがコツで、
前のを見ないで書くと良い。
そうすると本質だけを書こうとするので、
そこでうまく淘汰が行われる。

これらを何世代もやる。
ナンバリングは5を超え、10を超えるかもしれない。
関連されたものは沢山に増え、
そろそろ一枚に収まりきれないかもしれない。

あるいは、
たとえば6で出たアイデアを発展させて7、8を書いたが、
5から別方向へ発展させたのが9、
のような、系統樹の枝分かれが存在するかも知れない。
それらを統合して10で、7の枝番が11、
ということもあるだろう。

その系統樹だけを整理した紙を作っても良い。
アイデア同士の優劣を選んだり、
あるいは「これはこう考えたのだとしたら、
それはそうは考えられないか」などを思いつくこともできるからだ。


で、これらを練っているうちに、
「そろそろストーリーとして書き出してみよう」
という日がやってくる。

アイデア遺伝子のスープは、
プロットという生命体として受肉するわけだ。


プロットに書き出すと、
足りないことがあることに気づく。
それらはまた同様に考えれば良い。

「○○はどうすべきか?」
と白紙の真ん中に書けば、
また何かを思いつき、紙が埋まってゆく。


こうして、プロットはいつの間にか出来る。

世界観やキャラクターのディテールも出来始めているだろう。
それは別個にメモして、
ストーリーのプロットとは区別できるようにしておくこと。
ディテールを思いつくことは簡単で、
根本のアイデアを思いつくことは難しいから、
ディテールを思いつくことの方が楽で楽しいため、
そちらに逃避しがちだからである。

今はディテールを思いつく時間帯ではなく、
ストーリーを考える時間帯である、
と自覚するには、ノートを分けるとよい。
ストーリーのアイデアが、ディテールに対して足りないと、
物理的に見えるだろう。


ログラインを書いてみよう。
短文プロットと長文プロットを書いてみよう。

カード法を試してみよう。
順番を変えたり、アイデアの取捨選択を視覚的に補助できる。

メモしてもいい。しかし偶然に出会うならカードのシャッフルは有効だ。


こうして、
白紙に最初にあった染みのようだったアイデアは、
勝手に進化して、ストーリーという有機的因果関係にまでなる。

これらを更におもしろくするためには、
テヅカチャートがかなり有効だ。
途中の展開部を練るのに使える。


ナンバリングされた紙の中には、
捨てたアイデアもあるだろう。

それは大切にとっておき、
次回作に使ってもいいし、
改稿の際に助けてもらってもいい。

勿論、すっかり忘れて捨ててしまっても良い。


僕は、これらをファイリングして持っている。
困ったら見返す。
自分がどのようにしてアイデアを発展させてきたか分かれば、
自分が突き当たった問題の対処法を俯瞰できるからだ。


偶然、
生命の発生と進化過程に似たやり方を、
僕は自分で編み出してきた。

参考にされたい。
posted by おおおかとしひこ at 10:37| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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