テーマを考えます。
アラギは化け物を退治した。
ミカは新しい恋?を見つけた。
これになんの意味があるのか、ということです。
とくに意味がない、という逃げを打つべきではありません。
そしてコメディというジャンルなので、
深刻なテーマを語るのは相応しくありません。
(キレの良い深いテーマに刺すコメディは、
風刺とかブラックコメディと言われますが、
この作品の方向性ではないでしょう)
テーマなどなくてよい、という逆張り主張はここでは認めません。
そうやって爆死していった詰まらない映画をたくさん見ると良いでしょう。
僕は「テーマがあると、全体がまとまる」
という積極的な考え方をします。
テーマは作者の主張でもなく、
この時代を鋭く切る意見でもありません。
化け物退治コメディは、
こういうことでした、ちゃんちゃん、
という「こういうこと」があれば、
「納得する」ということにすぎません。
「見た目より実力だ」は、ラブコメでよく使われるテーマです。
「自信や勇気」もラブストーリーでよく使われるモチーフでしょう。
そのテーマが古臭いから存在価値がないかというと、
実はそうではなく、
「そのようにまとまっているからこそ、
スカートの中の化け物退治という特殊性が、
とても際立つ」
と考えるべきです。
なぜなら、そのようなテーマを、
「スカートの中の化け物退治」
というモチーフで描いた組み合わせの作品は、
世界に一本もないからです。
勿論、他のテーマでも構いません。
要は、
「このモチーフは、このテーマを描くのにぴったりだ」
になっていればまとまりが良いと思います。
「なるほど、このテーマをこのモチーフで描くのは、
斬新だぞ」になるのが理想でしょう。
「今まで誰も考えつかなかったが、
言われてみるとたしかに相応しい」という発見
(コロンブスの卵)こそが、
この作品の発見になるはずです。
それってなんでしょうかね。
前記事において、
設定を色々煮詰めてみました。
それは、感情移入という入り口のことも考えつつ、
テーマというゴールのことも考えていたのです。
元のバージョンでは、
利用できる何かがなかったので、
足すしかないと思って色々と足してみました。
あれが必ずしも正解ではないと思います。
なにかテーマに繋がればいいなと思って、
発散し続けてみたわけです。
しかしあれだけでは、
「化け物退治をスカートの中でやる」
というクライマックスで、
なんらかのテーマを表現できるものがない気がします。
そこで、その当の化け物のことをもう少し考えます。
悪役は、アンタゴニストといわれ、
敵対者という役割を演じます。
物語によっては、必ずしも悪や敵とは限らない
(母、上司、ライバルなどもありえる)ので、
敵やライバルなどをひっくるめて敵対者というのでしょう。
敵対者は、主人公と真逆の性質をもちます。
それを倒すことで、
敵対者は間違っていて、主人公は正しかったのだ、
とテーマを語ることが可能です。
主人公サイドでテーマが見つからない場合、
敵対者からテーマを探すことは、
よくあるわけです。
敵対者が無差別殺人ならば、主人公は「人にはそれぞれ価値がある」に、
敵対者がクールならば、主人公は「熱血」になるでしょう。
そして主人公側の考え方が、テーマとなるわけです。
ラブコメの場合、
お互いがお互いの敵対者になることはよくあります。
価値観の相違こそがラブコメ的なトラブルの原因になり、
それを乗り越えることこそが愛だからです。
しかしこのストーリーの場合、
アラギとミカの価値観の相違とそれを乗り越えることが、
テーマになるとも思えません。
悪役の、カゲを考えましょう。
敵対者というほどではありません。
なんらかの主張や考え方があり、
パンツを乗っ取っているわけではない。
コメディだから無くてもいいんですが、
あったとしたらどうなるかを考えてみます。
ライトアップを生かすために、
スカートの中に潜り込んだことに理由をつけるために、
「夜を好み、光を嫌う」性質を設定しました。
これが使えそうです。
カゲは陰湿である。これが敵対者の主張になりそうです。
これを払うのは陽気である。
仮に、これが主人公サイドの正解になると考えます。
ということは、
ミカは「くよくよ考えること」が癖になっている陰キャだとしましょう。
テーマの逆から入ると、もっとも変化を経験できます。
物語の構造は、感性で作るのではなく論理で作ります。
僕はときどき回路の設計のような、理系の仕事のように思う時があります。
で、彼女は、くよくよする性格ゆえにこれまで恋を失敗してきたと。
今回も考えすぎて、シバタとの恋に失敗するわけです。
あるいは、カゲの乗っ取りによって陰キャが加速してもいい。
コメディのネタとしてつくれそう。
それが陰から光にうまく転じる話にすれば、
テーマを「陰湿から陽気へ」となりそうです。
しかし「陽気はたいせつだ」というテーマは、
この設定内ではしんどそうだと思います。
アラギの方をだいぶ重くしてしまいました。
すこし変形して、
「モテるためには自分を殺さなければならないと悩んでいたが、
スカートをついにめくられてアラギの顔面に蹴りを入れる。
『ウチの世界線にはそんな自由な女はいない』と、
アラギは言い、恋に落ちる」
というストーリーにすれば、
「自分を解放しよう」というテーマに落とせそうです。
要素が揃ってきました。
敵対者のアンチテーゼは影を好むこと。
人間に置き換えれば、自分を殺し、自分を隠すこと。
その逆のテーマは、自分を堂々と主張すること。
感情移入としては、ミカにできそうです。
自分を殺して嘘をつくことがそんなに重要か?
と悩んだことのない人はいないからです。
アラギ側の世界をもう少し掘りましょう。
自由な女はそんなにいない世界ということは、
なんにせよカゲの影響が強い世界だということになります。
前のバージョンでは、
光に包まれているがゆえにカゲが逃げ出したことにしましたが、
逆にして、
カゲ(一族?)に負けそうな世界だと設定します。
カゲたちはその世界を支配しつつあるけど、
さらに次元転移装置で、「別の世界」があることを知ったと。
そこにたまたまやってきたのが、
偶然ミカのパンツだったとすれば、
全体がうまく繋がりそうです。
全体を俯瞰しましょう。
時系列で考えます。
(ストーリーのはじまりまでに起こっていたこと)
カゲたちは、アラギの世界を支配しつつある。
アラギの妻、次元転移装置を完成。
カゲはそれを奪い、妻を殺す。
アラギはもうひとつ残されていた次元転移装置を使い、
復讐のために追う。
(ここからストーリーのはじまり)
ミカはシバタとのデート(ライトアップ)のために急いでいる。
カゲにスカートに侵入される。
追ってきたアラギに、スカートをめくられそうになる。
(スカートをめくるめくらないの攻防戦、
ミカの過去、アラギの事情がわかってくる)
クライマックス。
シバタに幻滅し、恋は終わる。
そしてついにスカートをめくった瞬間、
ライトアップ点灯。ミカは蹴りを入れる。
光を嫌ってスカートの中から出てきたカゲを倒す。
アラギの様子が変だ。
「こんな自由な女、ウチの世界にはいなかった」と恋に落ちる。
「なかなかのイケメンだし、まいいか」
これで大体骨は通りそうです。
このあと、中盤をもう少し展開しやすいように考えることにします。
このように、
設定とは、テーマを語りやすくするための、
論理的な必要条件だと考えるとわかりやすいです。
初心者の人は、
世界設定や人物設定を作っているだけで楽しいので、
ついついそこに耽溺してしまいがちです。
また、世界や人物が出来たら、ストーリーは勝手に出来る、
とも勘違いしています。
そうではないのです。
ストーリーやテーマ(結論)が出来るように、
逆算で設定をつくるのです。
いわば、結論のための前振りが設定です。
物語に手慣れた人ならば、
冒頭の主人公の悩みを見ただけで、
結論はその逆になるのだと予想できます。
(逆に、その読みを一回忘れさせれるために、
中盤のあれこれがあるのです。
忘れた頃に冒頭の悩みに戻ってきて、
これまでのことが解決した、となるのが円環の閉じ方です)
今回は、結論「自由に生きよう」のために、
「モテようと取り繕うことで必死」なミカを設定すればよいのです。
決して、次元転移装置や闇を好むなどの、
設定からこの物語は作れないでしょう。
なんなら、次元転移装置はなくたって、
宇宙船に変えて、カゲもアラギも異星人にしても、
この本筋は変わりません。
タイムマシンにして未来人としても同様です。
次元転移装置の設定とか、
「ミカはがさつ」とかの設定に拘るだけ無駄ということがわかるでしょう。
がさつなのは本性だとしても、
それがストーリーの何を生むのかで考えると、
何も生みません。
設定は、ストーリーの前振りです。
結論からの逆算の前振りなので、
落ちもない前振りなんて、ただの空振りにすぎません。
ということで、
プロット、結論、そのための設定は、三位一体です。
それと、登場人物の設定や、目的や、感情移入も三位一体です。
これらは、
順番につくるものではなく、
今示したように、
やりながら練りながら、全体を作っていくものです。
最初は粘土のように柔らかく考えておいて、
芯が出来たら、そのまわりを計算が合うようにつくっていくのです。
設定はつまり、テーマの逆構造だとも極論できます。
これを利用して、どう逆転して結論へ導くかが、
ストーリーだとも言えるでしょう。
今回はメインプロットが、
形はできているものの面白くなかったので、
どうすれば面白くなるかを考えました。
ストーリーを改変するにあたって、
設定を練れば何か思いつくかも、
という出発点でした。
なぜこうしたかは僕にもわかりません。
単なる勘です。
最初に手をつけるところが違えば、
また別のストーリーが生まれたかもしれません。
結果論でいきましょう。
なんとなく面白くなりそうです。
頭とケツが出来たので、
間を面白くしていきましょう。
今回の場合「スカートの中に化け物が潜んでいたら?」
「それを倒すために真面目な捜査官が必死こいてスカートをめくろうとしたら?」
というガワをまず思いつきました。
なのでそれに合ったテーマを何とか考えてみました。
一応「男は顔じゃない」ことをテーマにしてみたのですが
あまりしっくりきませんでした。
このガワならこのテーマ以外考えられない
あるいは逆に
このテーマならこのガワ以外考えられない
ここまで煮詰めるのが非常に難しいです。
というか、どういう思考プロセスを踏んでいけば
そこまでたどり着けるのかが現段階で見えません。
今回の大岡先生の思考プロセスを読んで
「なるほどこうして考えていけばいいのか…」と少しだけわかりました。
ガワを先に思いついたにしろ
テーマを先に思いついたにしろ(これはあんまりないですけど)
上手くこの二つを結び付けられるようにしたいです。
これからどう修正していかれるのか楽しみにしております。
仮に「男は顔じゃない」をテーマにした場合、
「スカートをめくる実行力こそが男の魅力なのだ」
などのような、モチーフを使ってテーマを表現できれば、
正解だと考えます。
で、もちろんこれはいまいちなので、
採択はされないでしょう。
「そのテーマを、そのガワを用いて表現できるか」
がチェックポイントになると思います。
逆に、あるテーマを表現するのに、
ものすごく面白いガワを思いつけるか、
が初手の段階で大事なんですね。
鶏と卵の関係なんですが。
だから、出来たあとに煮詰めてもだめで、
「同時に出来る」のが理想で、
「同時にできた時が、思いついた時」
と考えるといいかもしれません。
その意味では、「スカートの中で化け物退治すること」を思いつくことは、
「半分できた!」ではなく、
「ひとつも思いついたことになっていない」
と考えるべきでしょう。
ネタバレになりますが、
すでに最後まで原稿は書いたのですが、
「おみごと」のレベルまで到達できませんでした。
それでも入選レベルではなく佳作レベルくらいまでは、
なんとかなったと思うので、
「出来た状態にする」という部分にはなにが必要か、
というのが今後の議論の方向性になります。