2020年05月19日

プロットと構成を分離してみる

前記事の続き。

「ロッキー」を例に、両者を分離してみよう。


ロッキーのプロット


【一幕】みじめなボクサーロッキーに、世界戦のチャンス

ボクサーとしては歳をとってしまった、ロッキー。
地下試合でピンハネをされ、
イタリアンマフィアの借金取りをバイトとするが、
悪人ではない、優しい男だ。
(「指を折ってこい」と指示されるも、
「また今度金を作ってくるってさ」と嘘をつける男だ)

ある日ボクシングジムへ行くと、
「俺のロッカー」が新進気鋭の黒人ボクサーに勝手に使われている。
古株の自分の使うロッカーは、新人と同じ扱い。
文句をトレーナーのミッキーに言いに行くと、
その場で引退を考えろと言われる。
才能を無駄にしてこの歳までずるずるとやってきたことを責められる。

一方、ペットショップの地味な店員エイドリアンを口説こうとするも、
なかなかデートに応じてくれない。
そんなある日、
世界チャンピオンのアポロの試合相手が骨折。
急遽代役が必要に。
アポロはボクサー名鑑をめくり、
「イタリアの種馬」という名前だけでロッキーを指名。
「アメリカはチャンスの国。アメリカンドリームの機会だ」
と言うが、それはロッキーが最後に実現することになるのだ。

【二幕】試合決定から試合前夜まで

そんなことが進行しているとは露知らず、
ロッキーはついにエイドリアンをデートに誘い出す。
しかし貧乏なロッキーは、アイススケートを彼女に履かせ、
自分は靴で走るという。
そんなしょぼいデートだが、彼はついに「引退」を口にする。
その夜、二人は結ばれる。

アポロのジムから呼び出しがある。
きっと世界戦のスパリーングパートナーだろう、
名誉なことだと赴いたら、なんと試合のオファーだった。

その朝から一人特訓を始める。

練習場所もないので、友人ポーリーの精肉工場の冷凍庫で、
肉を叩いて特訓。精肉工場の宣伝の為とTVを呼んだポーリー。
そのインタビューでロッキーは「エイドリアン見てるかー?」
とチャラい様を見せる。

だがその様を彼女と見て、
ロッキーは自分が風車に挑むドンキホーテのように、
馬鹿にされていることを知る。
俺は何者でもない、ただのイタリアの種馬の名前だけだと。

だがトレーナーのいない状況では何も出来ない。
ミッキーにトレーナーについてくれと頼みに行く。
ミッキーは全盛期の写真自慢をするが、
「俺には全盛期はなかった」と感情を爆発させるロッキー。
二人は仲直りし、二人三脚を組むことに。

ある日エイドリアンとポーリーが大喧嘩をする。
それにロッキーは思わず手をあげそうになってしまう。
ボクサーの拳を恐れる親友を見て心を痛める。
その日からエイドリアンは家を出て、
ロッキーと暮らすようになる。

日々のトレーニングで少しずつ進歩していくロッキー。
しかし試合前夜会場へ忍び込むと、
垂れ幕の似顔絵の、パンツの色が違うことに気づき文句をいう。
しかし「誰もそんなところを気にしていない」と言われる。
試合前夜、ロッキーはエイドリアンに言う。
「俺は恐らく試合に負ける。
しかし最後まで立っていたい。
最後まで立っていた男に、俺はなりたい」と。

【三幕】試合

全米注目の試合が始まった。
アポロの実力は凄いが、ロッキーの根性もすごい。
勝負は最終ラウンドまでもつれ込む。
試合終了のその瞬間まで、
ロッキーはどんな猛攻にも耐えて生き延びた。
判定の結果はアポロ。
しかし観客は、真の勝者を知っていた。
試合に負けたが、勝負に勝ったのはロッキーだ。
勝利者インタビューで、
ロッキーは「エイドリアン見てるかー」と叫ぶ。
愛する女の名を叫ぶただの男。
それが俺だ。



ロッキーの構成

【一幕】30分弱

地下試合、ファイトマネーをぼられる
ペットショップでエイドリアンに粉をかける
マフィアの借金取りをさせられる

(事件)ロッカーが勝手に使われている
ミッキーと大喧嘩、引退を考えたことはあるのかと聞かれる

マフィアの借金取り、指を折ってこいと言われるが、
嘘をついて指は折らなかった
アポロを尊敬しているとテレビを見て言う

(第一ターニングポイント)
アポロの試合相手が怪我、相手にロッキーを指名

【二幕前半】30分弱

エイドリアンとデート、引退をほのめかす
エイドリアンと結ばれる
試合のオファーを受ける

一人特訓(有名な生卵はここ)
ポーリーの精肉工場を借りる
テレビのインタビューに答える

(ミッドポイント)
インタビューをテレビで見て、自分の扱いの小ささに劣等感

【二幕後半】30分弱

ミッキーにトレーナーについてくれと頼む
エイドリアン家を出てロッキーと暮らす

特訓(フィラデルフィアの美術館、ロッキーステップはここ)

試合会場で自分の扱いの小ささに凹む

(第二ターニングポイント)
勝てないにせよ、最後まで戦う男になりたい

【三幕】30分弱

試合、ロッキーは最後まで立つ死闘
判定はアポロだが、観客は真の勝利者を知っていた

ラストの勝利者インタビューで、
ロッキーは「エイドリアン」と叫ぶ




どちらも同じ物語の、
プロット面と構成面から記述している。

プロットは、「それが、なぜ、どうして起こるか」
を書くべきだ。因果関係とも言える。
なぜロッキーが相手に選ばれたのか、
なぜ観客はロッキーを勝利者だと思ったか、
なぜロッキーは最後にエイドリアンと叫んだのか、
感情曲線や因果関係が深く描かれるべきだろう。


それに対して、構成は、
「何に何分かけるのか」
「ブロックのクライマックスは何か」
に重点をおくべきだ。
第一ターニングポイント、ミッドポイント、
第二ターニングポイントは、特に抑えるべきところだ。
構成上の重要点として、
物語のはじまり、「事件」がどこかも見ておくべきだろう。

今手元にロッキーの分析表がないので、
正確でないかもしれない。
なにせ記憶だけで書いてるので。

構成表には、各ブロックの尺も入れたほうがいいと思う。
(今手元に資料がないが、10分単位、5分単位で入れると、
より詳細な構成表になる)
あるいは、試合関係のことは赤、プライベート関係のことは青、
などに色分けして図式化してもいい。

僕は構成は、リズム表だと考えていて、
ストーリーそのものではないと考えている。

人物関係図を入れたり、誰がどこに住んでいる、
という地図も、構成表の基礎資料になるだろう。


つまりプロットは、何が起こるかの因果関係、
構成は、それがどういう空間と時間で表現されるか、
という表のことだ。

因果関係を変えずに空間を変えることはできる。
たとえばフィラデルフィアでなくニューヨークにもできる。
精肉工場ではなく、スプリング工場にもできる。
因果関係を変えずに時間を変えることはできる。
たとえば第一ターニングポイントを試合のオファーにすることができる。
その場合、一幕後半にスケートのデートが来るだろう。
二幕後半を支える、もうひとドラマが必要になるかもだ。

そうすると因果関係を崩さずに、
その因果関係を面白くするプロットを足すことになる。
こうして、構成は因果関係の「見え方」を変える。

あるいは、因果関係を変えた結果、
それを見せるためのベストの構成は変わり得る。
たとえばアポロが主人公になることも出来る。
そうすると、構成はまるで変わるだろう。



構成は、
全体のストーリーの配分を見て、
その配分を変えるとどうなるかをみるための道具、
プロットは、
全体の因果関係を見て、
その因果を変えるとどうなるかをみるための道具、
だと言えるかも知れない。

これらを混同しては、
これらの道具のいいところを使ってないということだ。
道具の使い方を理解して、使いこなそう。



そして、このプロットを考えれば考えるほど、
これは、ボクシング映画ではなく、
一人の男が自信を取り戻す話だということがわかる。
ボクシングは、それを表す小道具にすぎない。
ボクシングはモチーフであり、
自信の回復がテーマだ。
ボクシングを「通して」、自信の回復を「描く」のだ。
描かれた絵がボクシングで、その示す意味が自信の回復だ。

だからロッキーを「ボクシング映画」と言う人は、
映画に対する理解が足りないと、
僕はまず思うことにしている。
posted by おおおかとしひこ at 08:03| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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