2020年05月30日

【自キ】なぜ自作キーボードはこんなに楽しいのか

「モノを取り上げられて、開発はITという触れないものになってしまった。
しかし人間には原始的なモノに触りたいし、
それを開発したいし改良したいという欲があるから」
という仮説。


料理という趣味もこれに似ている。
家族を食わせて食材を回転させる日々の家庭料理は傍においといて、
趣味としての料理のこと。

「あれとこれをこうしたらこうなるのではないか」
というアイデアが湧き、
実際にそれを実装して、
工程において失敗があればなんとかリカバリーして、
完成品として評価する。
そして反省して次へ活かすこと。

このPDCAサイクルが、
手で触って口の中でも触れる物体で、
設計やアイデアを試せるモノだから、
料理はおもしろいと僕は思う。

自作キーボードもおなじだ。

手で触れて、カチカチ出来て、
持ち運びできて、
キーマップを交換して動線を整理して、
しかも日々の入力に使える。

これが、触覚のないバーチャルキーボードだったり、
入力には使えないプラモやフィギュアのようなものだったら、
こんなには面白くないと思う。

触れて、しかもデジタル空間との境目になっているから、
面白いと思うのだ。


もともと自作キーボードは、
電子工作からはじまった、
エンジニアの趣味だと思う。
今時のエンジニアは、
ほんとに物理エンジンを削ったり組み立てることなんてしてなくて、
コーディングばかりだろう。

工場が中国やどこかに行ってしまったことで、
物理工作をする場所がなくなってしまい、
仕事といえばバーチャル空間で仕上げることしかなくなっていたと思う。
リモートで出来ちゃうことしか、
バーチャルで触っていなかったのだろう。
だからか、ITエンジニアは、
自転車やバイクやったり、山に登ったりする人が、
他の職業より有意に多いと思う。

実空間に触ることに飢えているというか。


そこに電子工作としての自作キーボードがやってきた。
ルブやバネ交換のスイッチ改造もやってきた。
3DCADを実空間にプリントするCNCや3Dプリントもやってきた。
さらにプログラミングでキーマップを作れ、
指の動線設計までできる。
いろんな工学の分野が集合した、
手作業の面白さに、飢えていた人たちが飛びついていると、
僕は思っている。

なんであんなにキースイッチサンプルをカチカチやるのが楽しいんだ?
なんでキーキャップを交換するのがあんなに楽しいんだ?
なんであんなにはんだ付けが楽しいんだ?
なんでKiCADからPCBを作って、組み上げるのが楽しいんだ?

それは、モノを使った、モノづくりに、
みんな飢えているからではないだろうか?


僕は映像屋さんなのだが、
Zoomムービーとかクソくらえだと思う。
バーチャル空間でできることなんか詰まらない。
実空間で切った張ったするのが映像だ。
その現場主義が大好きで、一生現場にいたい。
素材を編集してエフェクトをつけただけで納品なんて、
クソくらえだ。

それと同じ感覚が、
自作キーボードにはあると思う。

だって触れるんだぜ。
入力できるんだぜ。
そして改良して反省できるんだぜ。
そしてまだ最良のキーボードがわかってないんだぜ。

手の中に収まる、最も実際的な科学だと、
僕は思うわけだ。


触れないものをモニタの中でしか触らないエンジニアは、
ロボットアームで遠隔手術する外科医と、
似たような不満があると思う。

ほんものに触りたいという欲望が。


今回の自粛期間、Twitterやいろんなところで、
自作キーボードのことはたくさん見た。
でも、触らないとわかんないよなあ、
なんてことを常に思うわけだ。

6/2から遊舎工房が開いてくれたら、
まずはカチカチ触りに行きたい。

目の前の物体を工夫して改良すること。
これは人類の進歩そのものだというのに、
我々はサービス業やらIT業務やらで、
この原始的進歩から遠ざけられまくっている。

だから、手の中にある進歩をこそ、
我々は楽しみ、尊ぶのだと思う。
posted by おおおかとしひこ at 19:14| Comment(0) | カタナ式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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