2020年06月04日

どこで事情を挟むか

色んなパターンがある。


冒頭から
そのことが起こった直後
いったん落ち着いたとき
わざと伏せる


冒頭から

ややこしい事情は後回しにしたい。
これを描いていると立ち上がりのスピードが遅れるからだ。
だからなるべく複雑な事情の説明はあとまわりしにして、
さっさと話をはじめるべきだ。

これをあとに説明するという意味で後説などという。
対照的に、前説もある。

つまり、事情から立ち上げて、
感情移入を作りながらやっていく方法だ。
僕はうまく行けばこちらで行ったほうがいいと思う。

話は現在のことであり、過去のことではないからだ。
オンで進めるべきで、オフにするべきではないと思う。

もっとも、説明が下手だと後説のほうがマシだったりするので、
前説は腕がいる。
「そのストーリーを楽しむのに最小量の感情移入はなにか」
と自分に問うといいだろう。
(そして初心者は大概多めにしてしまい、
ちょっと覚えると削りすぎてしまう)

そして重要なことだが、冒頭における感情移入や事情は、
あくまで「芽」であり、本体ではないことに気づこう。
このあとやってくる本体の呼水の役目であることに気をつけたい。



そのことが起こった直後

「一体何なんだこれは?!」
に対する答えとか、
「実は○○なんだ」とか、
「このことをみんな覚えててくれ」とか、
色々なやり方はあるにせよ、
「今起こったことがなんなのかわからない」
のはストレスだから、
すぐに説明が入ると分かりやすくなる。

知りたいときに教えるのが一番いい関係を築けるわけだ。
また、それをわざと伏せることで、
謎を引っ張る方法がある。
後述。


いったん落ち着いたとき

すぐに説明できる余裕がない時は、
「あとでくわしく」と断りを入れれば、
多少は待ってくれる。
よくあるのが、
食事をするとき、車や列車の中などの、
「少し落ち着いて話せるシチュエーションになったとき」
が使われる。
「あの時のあれ、実はこういうことなのさ」
という感じだ。
回想シーンに入りやすいのはこれだろうか。
込み入った事情の場合、
感情移入に持って行きやすいから、
初心者のうちはおすすめの方法かな。
しかし多用すると、過去の方がドラマチックになってしまい、
現在に戻ってきたときにしょぼくなることは注意されたい。
次がドラマチックになることが、良くできたストーリーである。

たくさん説明するまでもない事情のときは、
「さっきから考えていたのだが…○○なんじゃないか?」
と別の人間が迎えにいく方法もあるよ。




わざと伏せる

わざと伏せておくと、気になる楔が打たれて、
ずっと気がかりになることがある。
それが出てきたときに、
「ああ、あれのあれか!」
なんて伏線が解消した気にもなるものだ。
また、強烈なものを長く伏せると、
「あれはいったいどういうことなんだ?」
とすごく気にもなる。
多くのミステリーはこれを用いる。

謎の男の謎の行動、その真の目的は、
なんてのは良くあるものだ。

ずっと敵だったと思っていたが実は味方だった
(あるいはその反対)、
なんてのもよく使われる。

「そういう事情だったのか…全部の謎が繋がった」
というのは、後半によくあるよね。



事情は、目的の下地になる。
こうだからこういう行動をする、
という背後関係のようなものだ。
それが感情移入に値すれば味方だと思い、
それが唾棄すべきものだと思えば敵に思えるだろう。

感情移入は、正と負があるから、
それを事情を出すタイミングでコントロールできる、
ということも覚えておくといい。


それ今説明する必要ある?
そう思ったら、じゃ、いつどこで説明するのがベストだ?
と自問自答しよう。
バリエーションを使えるようになっていると、
答えの候補が沢山あることに気づくだろう。

その中で、最も面白いタイミングを狙えば良い。
posted by おおおかとしひこ at 00:16| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。