3DCADの話なのだが、
物づくりの根本であるところの、「手の感覚」のことなので、
脚本論にて論じる。
アップル製品の角Rは曲率連続が云々のページでよく目にする比較
https://mobile.twitter.com/HighOctaneToys/status/1270334365008969728
角を丸めるとき、
直線→円の一部→直線
とするのが、比較的簡単な丸めだ。
(数学的計算が楽なので、デフォルトのフィレットとして3DCADにはついている)
ところがこうして丸めた角は、
何故かあんまり気持ちよくないことが知られている。
(自分で3Dプリントしてみるとよくわかる)
アップル製品の角のRは、実はこれで作られていない。
曲率を変化させた、特殊な角の丸めになっている。
これはアップル信者かつ3DCAD使う人じゃないと知らない、
かなり特殊な情報である。
(このへんに図としてまとめてあり:
https://trinity.jp/166014/
このへんにさらに詳しい話あり:
https://www.google.co.jp/amp/s/gigazine.net/amp/20170127-apple-icon-shape
)
しかし触ってみた感触を考えれば、
数学的な丸い角よりも、
アップルの角のほうが、断然いいのだ。
木を削って丸めた角は、概ねこうなっている。
あるいは、
スキーのジャンプ台の着地ポイントもこうなっている。
(サイクロイド曲線と数学的にいいます)
これだと、直線から円弧に突入したときに、
ガクッといかずに滑らかにいくんだよね。
この、
「ガクッといかずに滑らかにいく」
という感覚こそ、
触覚である。
言葉になりづらいこの感覚は、
アップルによって、サイクロイド曲線という数学的な所に落ちたわけだ。
さて、脚本論である。
僕は手書きを薦めている。
タイピングは清書に留めなさいと。
それは、
「体を使った感覚で書いたものには、
温度や実感や間が宿りやすい」と思うからだ。
たとえば、
書いてて疲れて一休みするところは、
大抵中だるみする嫌なポイントなのだ。
そこを、書いてて疲れないように書けると、
中だるみがなくなることが、
経験的にわかっている。
体からの信号を無視するべきではない。
書いてる時の体感覚が、
見てる時の体感覚と、繋がっている。
これは、タイピングではなかなか得られない感覚である。
現状のデフォルトでは、
思考の速度に一致しない糞qwertyや、
一覧しづらく視界が狭くなる糞エディタや、
コピペが自由だったりするせいで、
体のリズムにならないのだ。
(僕がこれだけタイピング研究をしているのも、
体や思考のリズムに沿うタイピングは存在するのか、
ということを考えているのだ)
だったら手書きが一番コストが安いので、
バンバン手書きで書くべきである。
また、セリフやト書きも、
書き終えたシーンを口に出して読んでみることをお勧めする。
体のリズム、思考のリズムになっているかを確認できる。
書いたときにつぎはぎしたところは、
読むとき、見るときに、
必ずつぎはぎになるだろう。
書いたときに勢い良い部分は、
見るときに必ず爽快なシーンになるはずだ。
また、
体のリズムで書いているときは、
何が滑らかで何がギクシャクして、
何は言わなくてもよくて、
何は言わないとダメか、
ということが把握しやすい。
僕はストーリーとは触覚に近いと考えていて、
それを理論化できないかなあ、
などと妄想しているのだが、
この3DCADの例を見て、
そんなことを思い出した。
今すぐMacショップにいき、
角を触ってみたまえ。
マカーは角を撫でてみよ。
その滑らかさが、あなたの書くべきストーリーの感触である。
もし暇ならば、フィレット(直線→円→直線)との差を、
粘土でも捏ねて確認することだ。
たとえば安い金属部品はそうなっていて、
人の手で削った木工やMacは、異なる曲線なのだ。
さらに脱線しておくと、
僕はIllustratorで描かれた曲線が好きではない。
ベジェは手が描く軌道ではないと感じている。
あくまで微分して作図するのが楽な曲線に過ぎないと考えている。
だから絵を描くときはフォトショ派なんだよなあ…
2020年06月11日
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