武術の世界では、「武器は手の延長」などとよく言われる。
剣、槍、棒、トンファー、ナイフ、薙刀。
弓や銃の世界でも、的に手が触れる感覚になるのがベストだそうだ。
武器に使われず、振り回されず、
自分の意思を遂行するのに一切の抵抗がないように。
体の一部になり、手を伸ばすことが武器を伸ばすことと同じになるように。
ボールと一緒に寝るサッカー選手のように。
最近、その近くまで来ている。
微調整後のサドルプロファイルキーキャップが到着。
エンドゲーム感が益々増す。
日本語の論理配列は、カナ配列薙刀式。
(DvorakJにて実現、QMK煮詰め中)
英字配列はqwerty。
キーマップはデフォ、Lower、Raise、Adjustの4レイヤーで、
制御系、数字テンキー配置、記号系に加えて、
左手LowerをBlenderのショートカットに割り当てている。
物理配列はMiniAxe。
これ以上にコンパクトで美しいキーボードを僕は知らない。
(対抗は、Gherkin、Nomu30、コルネ、TreadStone32)
格子配列の潔さ。
左右分割で、肩や腕や手首に優しい。
ケーブルは有線だが、microBで端子が統一されているため、
マグネットアダプタが付けられる。
モバイル時のセットや片付けが非常に楽。
コンパクトで軽いし。
ホットスワップ対応なので、適宜キースイッチを入れ替えられるのは最高だ。
打鍵フォームは、肩幅に腕を開き、
机の手前ヘリに上腕を乗せて、
手首を浮かすか浮かさないかのギリギリの、
すり足状態にしている。
自由な動きも出来るし、考えるときにもいい。
上から突き刺す伝統的なタッチではなく、
パンタグラフで培った撫で打ちで打つ。
横方向にも撫でるし、前方向にも撫でることが多い(前滑り打法)。
平面方向の動きがあるので、
すり足のフォームと相性が良い。
キースイッチは、Kailh Speed Silver。
ルブ済み、バネ(デフォルトの40g)ルブ済み。
ボトムハウジングの中底に、
シリコンシート0.4mm厚を2枚敷き、底打ちを静音化。
(Gateron Ink Silent Blackより柔らかい)
スピード軸なので、アクチュエーション1.1mmと半分だ。
シリコンシートによってトラベリングディスタンスを3.5-0.8=2.7mmに。
つまりは、
「普通のスイッチに比べて半分で動作する。
バネは軽めで、底打ちしないタイピングぐらいには重いバネ。
万が一底打ちしてもフカフカのクッションあり」
という挙動をする。
これが撫で打ちと相性がいい。
舐めるように打てるので、
空中に字を書いている感覚になる。
ケースは3Dプリント、自作設計ナイロン製。
トップアクリルとPCBの隙間を充填したことで、
スイッチのぐらつきが圧倒的に減り、高級スイッチのようになる。
そしてキーキャップは、自作設計3Dプリント。
天面は吸盤のようにスフェリカルで抉れている。
(キーによってスフェリカル具合を変えている)
タイプライター風にマッシブなので、
打鍵に高級感がある。
スカートレスなので反響音がせず、非常に静か。
プロファイルはサドルプロファイルと命名した、3D曲面。
自転車のサドルのように、
手前と真ん中が盛り上がり、他は坂のように落ちている。
人の指が「球を掴む」ようにできていることから、
指の中央にキーの中央に当たりやすいようにした。
指を軽く握ると、
たとえば小指は30度ぐらい内側を向く。
小指の指紋部分、一番力の入るところに当たるようにするには、
キーキャップを30度ぐらい傾けるべきだ。
顕著なのは親指で、4指に比べて真横に掴むように付いている指だから、
まるで掴むように打てるよう、
斜めの角度についている。
上から見ればわかるが、重心位置はステムの軸よりはるかに内側で、
1U距離よりはるかに掴みやすい距離になっている。
これにより、
親指の指紋部分(指の真横や微妙に斜めではなく、一番力の入るスイートスポット)
で、
スペースキー(薙刀式で多用するシフトキーにあたり、左右ともに置いた)
を打てるようになった。
勿論、親指シフト系など、親指を多用する論理配列にも効果的だろう。
エンドゲームとは、
キーボードが消えてなくなることだ。
それはつまり、キーボードが手の延長になったことと、
同じである。
僕の手の延長の一つは青色のボールペン
(ぺんてるの中性)で、
やっとそれに近づいてきたかもしれない。
色々な要素を練った。
qwertyローマ字ブラインドタッチの挫折から始まり、
カナ配列薙刀式を開発した。
タイプウェルB、530字(変換後)/10分の文字打ちから、
タイプウェルSS、1300字(変換後)/10分になった。
HHKBへの期待と失望からすべては始まり、
物理キーボードをここまで自作した。
(MiniAxeという巨人の肩には乗ってるけれど)
単純価格はルブ材なども含めて3万くらいだけど、
パーツや組み合わせの試行錯誤に50万は使ったかもしれない。
今このキーボードを失ったら、
自分の一部が失われる痛みがある。
(作ればいいんだが)
それくらい、やっと手の延長になってきた。
レシピは公開した。
薙刀式は無料公開中だ。
QMK薙刀式MiniAxe移植版も煮詰めたら無料公開予定。
ケースとキーキャップはいずれ公開する。
(プリント料は有料ですが)
qwertyでもHHKBでもリアルフォースでも納得のいかなかった人、
参考にされたい。
2020年06月13日
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