2020年06月13日

【薙刀式】手の延長がエンドゲーム

武術の世界では、「武器は手の延長」などとよく言われる。
剣、槍、棒、トンファー、ナイフ、薙刀。
弓や銃の世界でも、的に手が触れる感覚になるのがベストだそうだ。

武器に使われず、振り回されず、
自分の意思を遂行するのに一切の抵抗がないように。
体の一部になり、手を伸ばすことが武器を伸ばすことと同じになるように。
ボールと一緒に寝るサッカー選手のように。

最近、その近くまで来ている。

微調整後のサドルプロファイルキーキャップが到着。
エンドゲーム感が益々増す。
211B284D-8666-41C5-957D-C03506989EA5.jpeg



日本語の論理配列は、カナ配列薙刀式。
(DvorakJにて実現、QMK煮詰め中)
英字配列はqwerty。

キーマップはデフォ、Lower、Raise、Adjustの4レイヤーで、
制御系、数字テンキー配置、記号系に加えて、
左手LowerをBlenderのショートカットに割り当てている。


物理配列はMiniAxe。
これ以上にコンパクトで美しいキーボードを僕は知らない。
(対抗は、Gherkin、Nomu30、コルネ、TreadStone32)

格子配列の潔さ。
左右分割で、肩や腕や手首に優しい。

ケーブルは有線だが、microBで端子が統一されているため、
マグネットアダプタが付けられる。
モバイル時のセットや片付けが非常に楽。
コンパクトで軽いし。

ホットスワップ対応なので、適宜キースイッチを入れ替えられるのは最高だ。


打鍵フォームは、肩幅に腕を開き、
机の手前ヘリに上腕を乗せて、
手首を浮かすか浮かさないかのギリギリの、
すり足状態にしている。
自由な動きも出来るし、考えるときにもいい。

上から突き刺す伝統的なタッチではなく、
パンタグラフで培った撫で打ちで打つ。
横方向にも撫でるし、前方向にも撫でることが多い(前滑り打法)。
平面方向の動きがあるので、
すり足のフォームと相性が良い。


キースイッチは、Kailh Speed Silver。
ルブ済み、バネ(デフォルトの40g)ルブ済み。
ボトムハウジングの中底に、
シリコンシート0.4mm厚を2枚敷き、底打ちを静音化。
(Gateron Ink Silent Blackより柔らかい)
スピード軸なので、アクチュエーション1.1mmと半分だ。
シリコンシートによってトラベリングディスタンスを3.5-0.8=2.7mmに。

つまりは、
「普通のスイッチに比べて半分で動作する。
バネは軽めで、底打ちしないタイピングぐらいには重いバネ。
万が一底打ちしてもフカフカのクッションあり」
という挙動をする。

これが撫で打ちと相性がいい。
舐めるように打てるので、
空中に字を書いている感覚になる。


ケースは3Dプリント、自作設計ナイロン製。
トップアクリルとPCBの隙間を充填したことで、
スイッチのぐらつきが圧倒的に減り、高級スイッチのようになる。

そしてキーキャップは、自作設計3Dプリント。
天面は吸盤のようにスフェリカルで抉れている。
(キーによってスフェリカル具合を変えている)
タイプライター風にマッシブなので、
打鍵に高級感がある。
スカートレスなので反響音がせず、非常に静か。

プロファイルはサドルプロファイルと命名した、3D曲面。
自転車のサドルのように、
手前と真ん中が盛り上がり、他は坂のように落ちている。
人の指が「球を掴む」ようにできていることから、
指の中央にキーの中央に当たりやすいようにした。

指を軽く握ると、
たとえば小指は30度ぐらい内側を向く。
小指の指紋部分、一番力の入るところに当たるようにするには、
キーキャップを30度ぐらい傾けるべきだ。

顕著なのは親指で、4指に比べて真横に掴むように付いている指だから、
まるで掴むように打てるよう、
斜めの角度についている。
上から見ればわかるが、重心位置はステムの軸よりはるかに内側で、
1U距離よりはるかに掴みやすい距離になっている。
C4074E07-B411-4C4D-BA7F-47A7446CBA4C.jpeg

これにより、
親指の指紋部分(指の真横や微妙に斜めではなく、一番力の入るスイートスポット)
で、
スペースキー(薙刀式で多用するシフトキーにあたり、左右ともに置いた)
を打てるようになった。

勿論、親指シフト系など、親指を多用する論理配列にも効果的だろう。



エンドゲームとは、
キーボードが消えてなくなることだ。

それはつまり、キーボードが手の延長になったことと、
同じである。

僕の手の延長の一つは青色のボールペン
(ぺんてるの中性)で、
やっとそれに近づいてきたかもしれない。


色々な要素を練った。

qwertyローマ字ブラインドタッチの挫折から始まり、
カナ配列薙刀式を開発した。
タイプウェルB、530字(変換後)/10分の文字打ちから、
タイプウェルSS、1300字(変換後)/10分になった。

HHKBへの期待と失望からすべては始まり、
物理キーボードをここまで自作した。
(MiniAxeという巨人の肩には乗ってるけれど)

単純価格はルブ材なども含めて3万くらいだけど、
パーツや組み合わせの試行錯誤に50万は使ったかもしれない。


今このキーボードを失ったら、
自分の一部が失われる痛みがある。
(作ればいいんだが)

それくらい、やっと手の延長になってきた。



レシピは公開した。

薙刀式は無料公開中だ。
QMK薙刀式MiniAxe移植版も煮詰めたら無料公開予定。
ケースとキーキャップはいずれ公開する。
(プリント料は有料ですが)

qwertyでもHHKBでもリアルフォースでも納得のいかなかった人、
参考にされたい。
posted by おおおかとしひこ at 16:35| Comment(0) | カタナ式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。