3Dにキーを配置するのは、
平面にキーを物理配置することより合理的だと考えられている。
指は長さが違うし、平面には動かないからだ。
どういったものがあるか、俯瞰してみたい。
僕は二つの流派があると思う。
1. 凹型
2. 凸型
真ん中の中指は長く、両端の人差し指、小指は短い。
だから、キー面は凹に凹むべきと考えるのが凹型。
Kinesis Advantage、マイクロソフトナチュラルキーボード、
サーフェスエルゴノミックキーボード、
などが既製品として存在する。
自作系では、
日本では魔王さんのClosseum60、40が嚆矢だろう。
ぜろけーさんの3Dキーキャップもある。
開発中だが、ゆかりさんのLime40、
ynakさんのColomba42もだ。
NGM designさんはDactylを改良しようとしている。
海外では、
Dactyl ManuformとThe DMOTEだろうか。
いずれも、3Dプリントケースを先行して作り、
そこにキースイッチをはめ込み、
空中配線、1U単位PCB、PCB曲げ加工、
などで結線していくスタイルを取っているため、
組み立て難易度が高く、普及はしていない。
3Dキーキャップは、
平面キーボードに3D曲面キーキャップをつけてしまおう、
という大胆なアイデアで、
いまやClaw44の標準キーキャップの雰囲気すらある。
自作系では、Kinesisの単純なお碗から脱して、
縦にコラムスタッガードしたり、
中指や薬指のキーの列を下げたり、
中指列を縦に回転したりして、
より指の運動角にキーを合わせようとしている。
コラム方向はいわゆるシリンドリカルタイプで、
上段は上り坂、下段は下り坂になっている。
親指系は単純な平面ではなく、
「横についている」指の角度に合わせて、
どっちに捻るか、捻られた先はお椀にするか、
それとも凸面か、などの試行錯誤が続いている。
僕が思うのは、これらの凹型のベースになっている打鍵法は、
「指を突き刺すような打ち方」で、
撫で打ちではないということだ。
キーに対して、
主に鉛直方向に指を運動させるのが前者、
主に(鉛直軸に対して)平面方向に動かすのが後者だ。
前者に対しては凹型が向く。
しかし後者は、あるキーを撫でたあと指が隣にぶつかってしまう。
だから僕は、凸型が合理的と考えた。
上に挙げた3Dキーボードの中で、
唯一パンタグラフ機構なのがサーフェスエルゴノミックだ。
これは撫で打ちしやすい。
凹の曲率が緩く、広々としているからだろう。
パンタグラフということも相まって、
ストロークが短いことも影響している。
しかし撫で打ち派にとって、
凹型がベストなのか?
凸型でもいいんじゃないか、と思ったのが、
最近僕が開発している、サドルプロファイルである。
大元はハンセンライティングボールという、
初期の球型のタイプライターに着想を得ている。
「指は球を掴みやすいように出来ている」
というのが発想の源だ。
これと親指シフトの発想、
「親指は掴む方向に一番力が入りやすい」
と組み合わさってできている。
掴む方向は指を突き刺すタイピングだが、
「掴んでいる球の表面を撫でるようにタイピングする」
というのが、サドルプロファイルの発想だ。
上段は大きな球を掴む形、
中段は中位の球を掴む形、
下段は小さめの球を掴む形。
指の伸ばし加減で掴む球の大きさを変える。
親指はそれらのどれとも合う角度に。
そうすると、中指が高めに、
人差し指や小指は低めになる。
あとはテント角やチルト角を微調整して、
最近完成に近づきつつある。
(発売するとしたら9000円台かなあ。1万円超えたくない)
こういう方向でまだ誰も考えてないし、
面白いと思ったし、
撫で打ち派の僕はこっちでないと逆にしんどいしで、
僕は実用としてこれを開発して、
実際に使いながら評価しつつある。
で、どんどん高速入力に対応できていることは、
日々実感している。
(先日は1800字(変換後)弱/10分も出したし)
あとは疲労度との兼ね合いで、微調整にもう少しかかりそう。
「撫でる」打ち方は、撫でるのがメインではない。
打鍵ストロークをなるべく短くして、
打鍵と打鍵の軌跡を最短曲線に縮めようという動きのことだ。
押す→戻すというシリンダー的動きと、
指を次のキーへ動かすという動きを、
立体曲線で考える派閥のことである。
それが結果的に「撫で続ける感覚」になる。
鉛直方向の移動距離(アクチュエーション2mm)
<水平方向の移動距離(1U19mm)
だからで、後者を重視しているわけだ。
Lime40の開発も、もう一年半くらいやってるよね。
3Dの開発はなかなか困難だ。
試行錯誤のループが回しづらい。
僕は粘土でモックをつくったが、
それを3DCADに起こすのは目視だしなあ。
あと、キーは打ってみないと分からないから、
実際に作る→フィードバックのループがかかる。
感覚を数値化するのは難しく、
触ってみて初めて発見する問題のパラダイムもある。
(撫で打ち派は、凹型は指がぶつかる、
というのも、触って初めてわかったこと)
僕はノーパームレストで使える方向性で考えているが、
ColosseumもLime40もパームレスト前提だ。
またその相性でも打鍵感は変わってくる。
左右分割距離、ハノ字の角度、
テント、チルトでも打鍵感は全然変わるし、
どの範囲に心地よさを落とし込むかは、
公式がないからやってみて調整するしかない。
ということで、
3Dをめぐる状況を俯瞰してみた。
Lime40とColomba42は開発記をずっと追っかけているが、
なかなか悩まれているようだ。
どこかで触ってみたいなあ…
最強のキーボードは何か?
その答えはまだ決まっていない。
だから今が一番たのしい。
こんなに真剣に「ベストプロダクトを追求している」業界は、
今日本にないんじゃない?
たいていはクレーム対応やコストダウンで疲弊してるよね。
2020年07月29日
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