なかなか興味深い。
昭和初期のタイプライター教則本がスパルタ過ぎる
https://dailyportalz.jp/kiji/typewriter_textbooks_spartan
印字機構などは実物を見たことがないのだが、
大体は想像通りだった。
これホコリ吸ったりしたらメンテ大変だなあ。
僕的には、現在の物理的打鍵法との差異が気になった。
タイプライターの鉄則は、
・指を立てて、突き下ろす系の打鍵
・打ったらすぐ引く
・等間隔リズム
・全指同じ強さ
ということか。
これは僕には辛い。
・指を寝かせて、腹で撫でる系の打鍵
・打った指は大体押しっぱなしで次とロールオーバー
・アルペジオで加速する
・変荷重前提
と、今までやってきたことは、
全部逆のようだ。
タイプライターの物理的制約により、
独特の打鍵法になったことはよくわかった。
「指を突き下ろす系の打鍵」は、
キーをテコでハンマーに繋げて、物理的にぶつからないための軌道だし、
「打ったらすぐ引く」を打ちやすいフォームでもある。
また、すぐ引かないとジャムるわけだ。
ロールオーバーは不可能だろう。
それゆえ、「等間隔リズム」が解だと思う。
ロールオーバーの変化球リズムはジャムの原因。
全部を等間隔で最短にする打鍵法が必要だ。
指によって得意不得意があるだろうが、
「全指同じ強さ」で打たないといけないので、
すべての指、すべてのキーを等価にして、
等間隔で打つ、
という特殊技能が必要だということ。
もしこれが可能であるならば、
物理機構も配列も、どうでもいいのでは?
と思ってしまう。
配列とは、「全指が等価にならない」前提で作られているのだな、
と、逆に理解できる。
小指や薬指は弱いし、
左右交互は速いし、
アルペジオはさらに速いし、
段越えは遅いし、
右手は左手より器用だし、
よく出る言葉は速く打てるべきで、
マイナーな言葉は運指が悪く遅くても合理的と考える。
配列とは、
全指等価の前提を、
「人間はそうではない」ところへ、
どんどん近づけていったものだということだ。
しかし、
いまだに突き下ろし系と撫で打ち系の、
二大流派が存在するようだ。
自作キーボード界隈でも、最近ようやく認知されてきた。
https://skyhigh-works.hatenablog.com/entry/2020/08/01/130531
突き下ろし系の人は、
点による打鍵だから、キーキャップにはそんなに影響されない。
(なんならSAやDSAが一番いいかも)
撫で打ち系の人は、
より複雑な平面移動も含むので、
今僕はそのへんを吸収できる、3Dキーキャップを作っているのだなあと。
あとタイプライターの打鍵姿勢で興味深かったのは、
前腕が水平になっているところ。
(机が日本の机よりかなり低めの、タイプライター専用机。
椅子が高い方かもしれないが)
これが一番疲れないんだろうなあ。
前腕が異常に短く見えるのは、
相当ハノ字になってるからだろう。
手首がどれだけ疲れたのかは、記録があるのかもね。
いずれにせよ、「タイピストに打たせる」
という女中扱いだったはずで、
(ヘミングウェイが自ら打つ作家として有名だったけど、
自分でタイプする人は、プロ作家においても少数派だったはず)
13年前、僕が脚本を書いたとき、
手書き原稿なんで今から清書しますといったら、
「タイピストに打たせますのでまずFAXを」
と言われ、それが常識的だったらしく、
まあ、タイピングというのはそういう扱いなわけだ。
しかし今では不景気により、
タイピストを雇う金すら枯渇してるけどね。
(Google音声入力が、インタビュー文字起こしのタイピストの仕事を、
どんどん奪っているだろう)
高級特殊技能から、
誰でも打てる技能への民主化。
それが配列運動の正体かもしれない。
薙刀式は、そういう意味で、
誰でも打てるカナ配列を目指した節はある。
JISカナや飛鳥や新下駄がバリバリ打てるレベルの人は見向きもしないかもで、
親指シフトやqwertyに疑問を持つ人は、
乗り換え先の候補にしていただけるとありがたい。
あるいは、作者の僕みたいに、
qwertyをマスターするのが辛い人
(新下駄のkouyさんも、qwertyは難しい配列だと発言している)は、
さっさと薙刀式をやってみるといいかもだ。
薙刀式の仮想敵は、わりとまじめにフリックなんだよね。
あれだけ楽で誰でも使えるようなものでありたくて、
しかもフリックの弱点、
短い文章(〜3000字)までしか打てない、
を凌駕して、
1万字から2万字程度は打てることを想定している。
2020年08月02日
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