俯瞰してみよう。
1. ガワ
2. 中身
3. 意味
が三大要素だと考える。これを揃えなければならない。
そしてそれらは、さらに三大要素に分かれると思う。
1. ガワ
事件、世界観、人物
2. 中身
はじまり、決着、展開
3. 意味
不足、乗り越え、充足
これらの9つが全部面白くないと、
たぶん面白いストーリーにはならない。
その曼荼羅を紐解いてみる。
1. ガワ: 事件、世界観、人物
何を置いても事件である。
面白そうな事件じゃないと、面白くない。
恋愛ものを例にとる。
「転校生に恋をした」じゃ面白くない。平凡だからだ。
「どんな特別な恋か」が事件である。
「やくざの組長に恋をした?!」
「俺男なのに男に恋をした?!」
「ドSの女上司に恋をした?!」
とか、なんでもいいんだけど、新しく「面白そう!」と思えない恋愛は、
新しい恋愛ものとして書く価値がない。
定番の王道がやりたいなら、別の面白そうな事件を起こしなさい。
「この日常に、トラックに轢かれた男が異世界転生してくる」とかだ。
ミステリーを例に取ろう。
「密室で人が殺された」じゃ面白くない。平凡だからだ。
新しい密室、新しい殺され方、新しいトリックなら「面白そう!」となる。
「密室殺人が見つかったが、死亡特定時刻が50年前」とかだ。
勧善懲悪ものを例にとる。
どういう悪なら新しいか?どういうヒーローなら新しいか?
悪がどういう支配の仕方をするなら新しいか?
「ナチス的な組織が科学力によって日本を支配しようとしている」
は70年代の定番だが、当時は最新に新しくみんな興奮した。
今はそうでもない。
今の悪ってなんだろう。自粛警察?
「謎の種が中国郵便で送られてくる」というのはかなり面白い悪の事件だと僕は思ったね。
事件はなんでもいいんだ。
新しくて、ヒキがあれば。
まずそれが物語の入り口だ。
入り口がしょうもなかったら誰も入らない。
人はガワで物語を見ようとまずは思う。
世界観や人物は、ガワの最たるものだが、
その二つではストーリーは始まらない。
「世界に人が立っているだけ」にしかならない。
物語とは時間軸を持つ何かだが、
事件が起こらない限り、世界は安定して動かない。
「この世界観に立っている人物」が揺らがないと、
時間は発生しない。
それには、事件が起こらないといけない。
「家の鍵をなくした」「振り込みを忘れた」
などは現実の小さな事件としてはあるけれど、
これはフィクションのお楽しみの、
ストーリーという娯楽なのだ。
とびきり面白い事件を起こそうぜ。
「え、どうなるの?」というやつだ。
それがそう思わないのなら、
入り口のゲートが狭いのである。
沢山の人の沢山の興味を引く、第一手を思いつこう。
世界観は、魅力的であるべきだ。
遊園地やテーマパークが面白いのは、
その持つ世界観を売りにしているだけのことはある。
旅行が面白いのは、知らない世界観に直に触れられるからだ。
(バーチャル旅行はだいぶつまらないよね)
目だけでなく音楽もそうだよね。
ある音楽に浸るのは、ある世界観に触れるためだよね。
あなたの持つ独特な世界観や人生観は、
遊園地やテーマパークなみに面白い?
あなた一人が面白がってるんじゃなくて、
みんなを面白がらせることができる?
あなたの個性が売りにならないのならば、
また別の「特殊世界」を作る手もある。
新しいテーマパークを設計するつもりでいいんだよ。
「恐竜が生きた展示をされている」(ジュラシックパーク)は、
まさにそうやって作られたわけだ。
そこに新しい人生観や哲学はないけれど、
ただ面白そうじゃない?
世界観はそうやってつくる。
「よく知らないけど、フィンランドを舞台にした話は面白そうだ」
と思ってもいい。
それは、フィンランドの持つ世界観に魅力があるからだ。
じゃあどういう具体物が出てくると面白そうなのかは、
それから徹底的に調べればいいだけだ。
世界観を作るには、少しの思いつきと、
徹底した調査力が必要だ。
資料は沢山集めなさい。沢山ネタを蓄積しなさい。
テーマパークは一個の景色だけじゃなくて、
「様々に移り変わる、一つのコンセプトに貫かれた、
バリエーションを楽しむ」ことだと知りなさい。
そういう、「一つのコンセプト」と、
「さまざまなバリエーション」を思いつくことが、
世界観を作るということである。
人物のいないストーリーはない。
ストーリーは人間に関するものであり、
人間が出ないストーリーはない。
(ロボットのみ、昆虫のみ、などのストーリーはあり得る。
それらが擬人化されれば、それはストーリーになってしまう)
詰まらない人間より、
面白い人間の方が面白い。
あなたは様々な物語で、
魅力的な人物像を沢山見てきただろう。
彼らが物語を牽引し、
彼らに会うためだけに物語世界に没入することも、
何度も経験しているはずだ。
そんな人物像を創作しなさい。
これも事件や世界観と同様、
平凡だと詰まらない。
「え、面白そう!」と思える人物を創作できるかが鍵だ。
「そういうキャラよくいるよね」とがっかりされたらおしまいだ。
先が読まれるし、引きつけ力が落ちる。
世界観は思いつきと調査力でなんとかなるが、
人間だけは作家力できまる。
人生経験や、どうやって人間を見てきたかで決まる。
コツはない。
あるとしたら多面性とかギャップとかかな。
また、人間は、その人一人で生きていない。
周りの人間関係が存在する。
人と間と書いて人間だ。
人間を描くには、小さな社会を描くべきで、
仲間たちやいざこざを面白く書けなければ、
人間を描いたことにはならない。
さて、これらはガワである。
中身ではない。
洋服だ。
人を惹きつける外側の部分である。
洋服だから、流行がある。
流行のを真似すると、イケてると勘違いされやすい。
だから、中身はそのままで、
ガワだけ変えることも可能である。
時代やTPOにあわせてだ。
○○女体化なんてのは、ただの洋服チェンジなわけだ。
あなたは流行の服に詳しくなるべきだし、
ある時代のある服について詳しい人は強い。
また、ガワには流行があるため、
ただ珍奇で奇抜な服は、受け入れられにくい。
ある程度流行に合わせたスタイリングが無難で、
定番を取り入れるのも無難である。
パリコレは新規性と珍奇性と逆張りを披露する場だが、
それはあの場だけで、街にはいない。
あなたは、正確にいうならば、
次の流行を生む場にいる。
次の流行服を作る立場にいる。
今受けるものは、次の受けるものにはならないぞ。
あなたが真に心が震え、これは来る、と思うものだけが、
その候補であることは覚えておきなさい。
で、ガワだけではガワでおしまい。
あなたは服のデザイナーではない。
中身と服の、両方のデザイナーだ。
事件がその世界と人に起こってから、
どうするかを考えなければならない。
2. 中身: はじまり、決着、展開
事件はまずその始まり方が面白くないと、
入り口として面白くない。
だから意外な起こり方がよい。
とてもヒキがあるからだ。
しかしやれば分かるが、
後先考えずに事件を起こしても、
満足のいくラストまで行かないことがほとんどだ。
とても面白そうな入り口なのに、
ケツまで読んだらクソみたいに詰まらない、
「ファイアパンチ」「アイアムアヒーロー」「GANTZ」
などを挙げておこう。
いずれも長期連載で、瞬間最大風速狙いなのか知れないが、
トータルで見ればなんじゃこりゃなものである。
そう、つまり、はじまりと終わりは、
共に面白くならなければならない。
はじまりは事件で、
終わりは決着である。
その決着の仕方が見事でないと、満足ではない。
入り口で期待した、すごいワクワクが、
出口で得られないものは、
すべて竜頭蛇尾、羊頭狗肉である。
あなたの作るストーリーは、
竜頭竜尾、羊頭羊肉であるべきである。
そうである作品は名作と呼ばれる。
ひとつだけあげれば、「バックトゥザフューチャー」かな。
あなたは入り口詐欺か?
決着まで楽しめる良作名作をリリースしたいのか?
決着を考えるとき、
入り口とペアで考えるとよい。
途中の展開はすっ飛ばして、
最終的にこういう満足いく決着に至るのだと。
その出口が確定するまで、面白く満足のいく出口を考えよう。
入り口の出落ちにならぬように。
むしろ出口の方が面白く、
尻上がりになるように。
「ラピュタ」なんかはそうだよね。
間の展開はどうしよう?
実はこの要素が、最後まで悩む要素である。
入り口から入って、
どういう経緯を辿るのか、
面白いジェットコースターの設計をしなければならない。
一本線の面白さと、複数線の面白さが必要で、
これらは熟練者ほど手練手管である。
ここに時間をかけたものほど面白くなる。
いや、面白いものは、面白くなるまでここに時間をかけたものだ。
シチューの煮込みだね。材料を放り込んでもシチューは出来ない。
長いことじっくり根気よくやれるかが重要だ。
ほとんどの素人は、ここで投げ出すだろう。
心配するな、プロもここで根を上げる。
「展開に正解はない」と、
僕は格言をつくった。
順目と逆目という言葉がある。
どっちに転んでも面白いときはどっちでもいいが、
どっちかだと詰まらないときは逆をいきなさい。
迷路にはまったら、ブロックごと取り替える勇気も必要だ。
ここの理論は僕はまだ出来ていないので、
多くを語れない。
試行錯誤の経験だけが、展開を面白くする。
3. 意味: 不足、乗り越え、充足
そうやって出来たものは、
意図したものにせよ、
そうでないものにせよ、
意味が発生する。
「こういう事件が起こり、
このように展開して、
このように決着した」
という顛末がレポートされると、
人はそこに意味を見出したくなる。
それが凄いもの、超越したものであればあるほど、
「それはどんな意味(意義)であったのか」
を定義したくなるものだ。
レバノンの大爆発は凄かったが、
「あれは何故そうなったのか」
「誰かが仕掛けたのか」
「一体なんだったのか」
などを、みんな知りたがる。
それは、意味を確定させたいのである。
すごければすごいほど、そわそわするので、
安心したいのだ。
意味とは、ストーリーから日常に戻るときの、ラベリング効果なのかもしれない。
「○○○を知りたければ○○○」
というラベルを貼って、
記憶アルバムに残すのであろう。
こうして記憶を圧縮するのが人間である。
あなたのストーリーには、意味がある。
正確にいうと、なかったとしても、意味を見出されてしまう。
シミュラクラ現象に似ている。
だとしたら、正確にあなたが定義するべきだ。
物語にはテーマの描き方の定番がある。
主人公に不足しているAがある。
主人公は、それを手に入れるために何かしらの冒険をしなければならない。
危険を乗り越え、成功して、Aを手に入れ、
充足する。
というパターンだ。
これを入れておくと、
「この物語はAを大切だと考えている」という意味になるわけだ。
さて、
ガワと中身とAの関係はなんだろう?
Aは具体でなく、抽象的な何かだと、これまでのことと矛盾しない。
具体的なガワと中身を使いながら、
Aの話をしているのだ、
という風にわかればよい。
これが、物語の間接話法である。
具体的なガワと中身のことをモチーフ、
Aをテーマという。
中身は具体的な形をしていながら、
抽象的なテーマを表すための道具だったのである。
早よ帰れや、というために、
お茶漬け食べていかはります?と聞くのと同じだ。
お茶漬けが具体的モチーフだ。
で、
ストーリーの全ての要素が、
これを言うために注意深く選ばれ、
巧妙に構成されていたのだ、
となるものが名作である。
その結論なら、あれはいらんし足りないものもあるし、
を凡作という。
その結論なら、それは誤解を招くよな、の構成は、
は失敗作という。
(ファイアパンチは失敗作である)
あなたがストーリーを書くならば、
この9つの要素がすべて面白くならなければならない。
そして全てが絡み合い、
その組み合わせしかあり得ないものになっているべきだ。
大抵の初心者はガワのあたりで挫折する。
大抵の中級者は中身を詰めきれない。
あるいは、陳腐な結論になり竜頭蛇尾で終わる。
(そんなしょうもない結論のために、こんな壮大な準備必要?
たとえば、「ウィーアーリトルゾンビーズ」は、
事故現場に行って野原で解散するために、
そんな冒険や楽曲の大ヒットが必要だったか?
ゾンビという「生きてるけど死んでる感じ」から、
「生きてる実感を得ること」というテーマは想像されるものの、
その実装にまったくなっていない。ゲーム壊れただけだしな)
大抵の上級者はケツから作るので、ガワが魅力的じゃない。
これら全部を乗り越えて、
名作をつくりなさい。
2020年08月08日
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