というものがある。
オタクの早口を思い浮かべよう。
オタクは何故早口になるのか?
それは「言いたいことが沢山あって、
湧き出てくるからで、
なるべく沢山のことをいいたい」
からである。
それは、「知識の豊富さ」によるところも大きい。
ずっと一人で調べてきた、長い時間も、
そこに含まれる。
だからその知識が分かりそうな人に出会うと、
それが一気に流れ込むのである。
あれも知ってる、これも知ってる、
全部面白くて大事な知識、
だから全部教えてあげなきゃ。
オタクの早口は、つまりは親切心なのだ。
(知識量でマウントを取りたいやつは別)
そしてこの現象にはもう一つ別の面がある。
「相手が理解していないことを、確認していない」だ。
相手のキャパを超えた情報量は意味をなさないのだが、
オタクは知識の整理で手一杯で、
相手のキャパオーバーを確認する余裕がない。
こうして、
必死に早口で喋るオタクと、
話が終わるまで待ち、二度と話さないであろうという、
悲劇の断絶が起こる。
オタクはせっかく親切にしたというのに、
また理解されない孤独に戻るわけだ。
これと同じことが、
あなたのシナリオでも起こっているかも知れない。
つまり、
親切心(か何か)によって、
沢山沢山盛り込んで、
結果観客がおいてけぼりになっているということ。
リアルな対面ならば、
相手の顔を見ればその塩梅はわかるし、
演劇でもいい役者は観客の温度を見ながらやるものだ。
だが映画はそうではない。
観客の顔を見ることはできない。
だから、
あなたは、書き手であるとともに、
観客の代表にならなければならない。
あなたが書いたものを、
受け手がどう受け止めているかを、
感じながら書かないといけない。
この矛盾に慣れない限り、
書くということはマスターできない。
説明文でも、
ここちょっと分かりにくいかなあと思ったら、
説明を足すこともあるよね。
例え話にしたりね。
説明文でもそうなのに、
物語文がそうでない理由などない。
早口のオタクのようなシナリオとは、
たとえば、
・事件を噛み砕く間もなく次の事件が起こる
・登場人物の気持ちを推し量る前に次に行ってしまう
・味わい、しゃぶり尽くそうとする前に次に行ってしまう
・落ち着いて考えようとする前に次に行ってしまう
・情報量が多くて整理できない
・付帯状況が多すぎて何が大事なのか見えない
などだろうか。
あなたが思ったものを、どんどん書きまくったが故に、
受け止めきれないものになっているのだ。
あなたがそのシナリオに掛けてきた時間は、
鑑賞時間の2時間に比べて、
はるかに多い。
数ヶ月、半年、年単位なんてざらだ。
だから、それらを全部ぶち込みたくなる気持ちはわからないでもない。
でもそれは、2時間で理解する面白さか?
ということだ。
短編を書け、と僕は散々言っている。
○○の尺に丁度いい内容というのがあって、
上手なストーリーテラーは、
それに十分な内容に、噛み砕いてくれるというものだ。
早口のオタクは、
「相手が理解する時間」を0として見積もっている。
簡単なことで、間をつくればよい。
相手「…」
という一行を挟んで、
「理解している時間」を含もう。
ついでにいうと、
「理解している時間」の他には、
「感情が湧き上がり、それに共感する時間」
「これから先を想像する時間」
なども存在する。
それらがシナリオに入っていれば問題ない。
ない場合は、監督が実景を挿入したりして、
間を作ることもよくあるよね。
あなたは100%内容を理解して書いているから、
最高効率で書くべきだと無意識に思うのかもしれない。
鑑賞時間とは、
「理解、共感、反応、想像」
の時間でもあることを念頭に入れるべきで、
「わかってる人同士の最短時間会話」
ではないことを思うこと。
一番簡単なテクニックは、
その場にわかってない人を放り込むことで、
「え?」
「いったいどういうこと?」
「そんなバカな…」
「ということは…○○ってことですか?」
など、
観客の理解、共感、反応、想像などを、
かわりにやってくれる時間をつくることが出来る。
しかし毎回やることも出来ないので、
「もしこの場にそういう人がいたら?」
を想像しながら場面を描くことも想像しよう。
もちろん、
「観客全員がわかっている」確信があれば、
ガンガン早口にして回転を上げ、
バンバン面白く展開していけばよい。
その、
「理解や共感と、テンポが合っている」
感覚は、
とても気持ちのいい話にしかない。
すべてのストーリーテラーが、
すべてのストーリーで出来ることとは限らない。
想定観客層が違えば、ズレもあるかもだ。
しかしながら、
あなたが書くものを見るのは、
色んな人であるわけだ。
平均的な観客の想定はどうすればいい?
それが上手なのが、名作と呼ばれる一連のものである。
もしあなたがそのストーリーを語るとして、
そのテンポでやるかを想像すると、
その語り手と自分の差異が、実感できると思う。
2020年08月16日
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