2020年08月19日

「映画でも見に行こうか」という気分が分からない

僕にとっては、ある特定の作品を見ることが「映画を見ること」で、
「映画館に行き、なんでもいいから映画を見ること」ではない。

その作品が映画フォーマットを持っているから「映画を見る」だけで、
それが漫画なら漫画を見る、
それが狂言なら狂言を見る、
のように言い換えるにすぎない。


年に何本しか見ない人にとっては、
映画が、作品によってだいぶ出来不出来があることに、
ひょっとしたら気付いてないのかもしれない。

大画面、大音量、ふかふかの豪華な椅子、
なんかワクワクする建物の内装なども含めた、
映画館体験が重要で、
作品内容なんかはおまけなのかもしれない。

スイッチと個々のゲームソフトに入れ替えればわかるかな。
あるいは、
遊園地とディズニーや富士急などの個々のスペース
(あるいは個々のアトラクション)に入れ替えればわかるかな。

僕にとっての1800円は、
特定の作品を見るための料金に過ぎず、
映画館入場料ではない。


興行主からは、そう見えていないのでは?
というのが本題だ。

コロナで映画館から人が遠ざかっているから、
みなさん映画館に来てください、
というのはとてもわかる。

でも違うと思う。

僕は映画館だったらなんでもいいわけじゃない。
空調を快適に効かそうが、
いい椅子を用意しようが、
4Kスクリーンだろうが、
ドルビーアトモスフィアだろうが、
作品がクソならクソだ。

逆に、ある作品が最高ならば、
TV放映だろうが、スマホで見ようが、
誰かの聞き語りだろうが、
なんだっていい。
もちろん映画館が最高の環境であることは認めるが、
それは優先順位ではない。
その作品が最高かどうかでしかない。

ケツの痛くなる椅子で、小便くさい劇場で、
地下鉄の音がガンガン鳴ってたって、
その作品が最高ならば最高だ。


この意識が、興行主にあるかだと僕は思う。
たぶんないんじゃないか。
チェーン店で、番組の提供が決まっていて、
それを自動的にかけるだけだからだ。

だから「映画館に人が来ない」と、
大雑把に嘆くしかできないのでは?

○○は人が来たが△△は来ない、
●●は出来のわりに人が来たが、
▲▲は出来のわりに人が来ない、
などと嘆くべきでは?


興行主が興行内容に文句をつけない現在のシステムは、
興行主の顔色を見ながら作品内容に偏向が生じるシステムよりは、
健全であると思う。

でも興行主が作品内容に無批判なのは、
健全じゃないと僕は思う。


興行のシステムがどうなってるかは詳しく知らない。
チェーンに入らないと供給を受けられず、
チェーンに入ったら独自プログラムが組めないのかも知れない。

でもそれは、興行主の人間的自由を奪っている。
ぶっちゃけAIでもできるし、
なんなら東宝のサーバーから一斉配信でも、
いまどきなら出来るはずだ。
(それをネットでやってしまったのがネトフリなどだろう)

じゃあ、やっぱり、映画館いらないんじゃん。

「そこへ行く」意味がないじゃん。


もしそこにしかない、そこ独自のセレクト作品があれば、
それを見に行くことはやぶさかではなくなる。

どのショッピングモールに行っても、
東京と同じブランドしか並んでないと、イライラするのに似ている。
わざわざここまで来て?と思ってしまう。

そうではなくて、
ほんとうに必要なものは、
「その素晴らしい作品を、そこに見に行く」だと思う。


たとえば「午前十時の映画祭」は、
大変いい試みだと思った。
残念ながらほとんどの作品を僕はスクリーンで見てたので、
ほぼ行くことはなかったが、
若者たちにはいい企画だったと思う。
コロナで新作がないからといって、
アキラやナウシカをやるのもいいと思った。
「それを、そこに見に行く」になってたからだ。

そういった、誰もが知ってるメジャーじゃなくて、
こんないいの知ってる?というチョイスでも良かったと思うけどね。


ミニシアターは、チェーンではない、
独自の仕入れで勝負する映画館である。
しかし、かつてあった「ぴあなどで網羅的情報を得る」
がやりにくくなり、
シネマライズも潰れ、
独自路線配給は風前の灯だ。

僕は、チェーン映画館だとしても、
小さなスクリーンでいいので、
館主の自由になるハコをひとつつくり、
「俺はこれが面白いと思う」を流すといいと思う。

DVD上映でもかまわない。ちゃんと金が成立するようにしてね。

そうすると、
作品内容とはなんぞや、
ということを、
もっとみんなが考えだすと思うんだ。

そうじゃないと、
年に数回しか映画館に行かずに終わると思う。
内容なんてどうでもいいから。


僕は遊園地のアトラクションには興味がないが、
マニアなら「あそこのあれにあれが稼働」を仕入れて、
そこに行くのだろうと思う。
それは、アトラクションの内容について、
よく知らないと出来ないことだろう。

こうした人たちが増えて、
マニアでない、誰でもがそれを語れるような、
成熟した空間に、
映画館はなるべきだと思う。

ただの新作を祭りのように毎週流してるだけの、
配信末端では、なにも面白くないと思うがね。
posted by おおおかとしひこ at 01:56| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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