2020年08月19日

問題をスタックする

一本線の物語では、Aという問題を追いかける。
だけど大抵途中で緊張が途切れ、詰まらなくなってくる。

もちろん飽きずに緊張感を保てるのがベストだけど、
それが難しい場合、
問題Bへ目先を変えることが、稀によくある。


Aの問題(未解決)
 Bの問題

のように、問題をスタックしておくわけだ。


Bの問題を追いかけて、また困ったら、
問題Cへ目先を変えて、

Aの問題(未解決)
 Bの問題(未解決)
  Cの問題

という風にすることもある。
これは容易に、

Aの問題(未解決)
 Bの問題(未解決)
   …
     Xの問題

というマトリョーシカ構造になり得る。


しかし人間の頭はそんなに沢山覚えられないので、
「いつまでたっても話が進まない」
としか認識できないだろうね。
「1、2、たくさん」の原理から言うと、
Cくらいまでが精々だろう。

さらにこれは、解決を雪崩式にすることが期待される。
積まれたタスクは、一個一個解決するのではカタルシスがなく、
一気に解決する名案こそが気持ち良い。
ぷよぷよの連鎖のような気持ち良さが、
積まれたスタックには要求される。

つまり、
ひとつの問題を追いかけ、緊張感を持続させたまま、
興味を失うことなく最後まで糸を繋ぐか、
ひとつの問題に飽きる前に別の問題を発生させて、
最初の問題をスタックさせ、
さらに別の問題を発生させて、
複雑な様相を呈した上で、
たったひとつの冴えたやり方で一気に解決するかの、
大きくはふたつのやり方があるということ。

前者を一本型、
後者をスタック連鎖型と呼ぶことにしよう。


たいていの初心者がやってしまうことは、

・一本型で、途中でうまくいかなくなり挫折する
・スタック型にしてごまかしたはいいが、そのあとの連鎖が組めず挫折する
・スタック型にするが、連鎖にならず、逐次解決で後半がだれる
・スタック型で、中盤でB以降解決して、やっとA一本線に戻ったが、その解決がしょぼい
・スタックをたくさん組み、複雑な事件を連鎖的に解決したように見えるが、
実はまだ解決していないスタックが残っていて忘れてる

などだろうか。

最後のパターンはプロでもよくあることだろう。
「アキラ」「ガンツ」あたりは積まれた問題がだいぶ残ってるような気がする。
「エヴァンゲリオン」においては、積みすぎて全貌がよくわからない。
あれ解決したんだっけ、が多すぎて。

これを「完全でないストーリー」と呼ぶと、
ストーリーには完全性、
つまり、出した問題は全て解決することが必要である。

アキラやエヴァは長年人の心を引きつけてはいるが、
それはサグラダファミリアのような魅力なのかも知れない。

ストーリーの魅力は完全性であると、
僕は思う。
思い残すことなく、二度と生まれ変わらない、
100万回生きた猫のように。



ということで、問題をスタックすることは、
善でも悪でもない。
後半まで全部面白く、完全であればよい。
こういう手もあると知っておくことは、
選択肢を広くする。

ちなみにB以降をサブプロットという。
Aが事件解決ものだとして、Bがラブストーリー、
というのは典型的なパターンだ。

登場人物全員が目的を明確に持っている場合、
それらは登場人物の数だけサブプロットを持つことになる。
全員、というほどではないが、ドラマ風魔はそれに近く、
それがうまく昇華されたから、名作だと僕は考えている。
posted by おおおかとしひこ at 02:00| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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