2020年08月15日

3Dの話、続き

3Dの絵でパンフォーカスというと、
実はVRもそうだなと思ったので補足。
わかりやすい写真を入手したので議論しよう。


VR空間内で物販をやっているコミケ的なやつ?に、
自作キーボードサークルが出店の図。

35EA868A-72A6-4700-8F76-91586B52C3EA.jpeg


これが「整理がされていない絵」だ。

現実というのはカオスに満ち、
どこを見て良いかフォーカスが定まらず、
全てが同時進行していて、
「これをこのように見れば良い」というガイドもない。

前記事での、
アングル、フォーカス、スポットライトなどは、
全てそれらを整理するためにある。

たとえば。

見てほしい自作キーボード店を目立たせるために、
全部をブルー系で統一するとしよう。
両隣はピンク、イエローと、
ブルーの補色系に統一する。
目立たせないために、彩度を落としたデザインにする。

その店に視線誘導するために、
「そこへ向かう人」を手前に立てる手がある。
絵の中に方向性をつけるわけだ。
(左の萌え絵看板に目が行きがちなので、
左手前に立たせて、「隠し」をしてしまう手が有効)
店員がいて、大袈裟にぴょんぴょん飛んでいて、
その絵の中で一番動く対象になってもいい。

また、背景の街はフォーカスがややボケて、
手前の客もフォーカスアウトにすると、
真ん中のレイヤーである「店」にフォーカスできる。
後ろの目立つ「P」もフォーカスがボケていれば目がいくこともない。

ついでに、全体をやや暗くし、
雲間から太陽がピンスポットで来たかのような、
鋭いライトを当てて、
テーブルの天面や自作キーボード本を光らせるとよい。

アングル(構図だけでなく、人物の動線、配置や色使いも含む)、
フォーカス、
スポットライトの3要素で、
この「ごちゃごちゃして分かりにくい絵」を、
「VRコミケみたいなところに、
自作キーボード店が出店したんだなあ」
が分かる絵にすることが可能になるわけだ。


これが、フィクションの力だ。

演出、作為ともいう。

フィクションとは、
「複雑な現実を、ある角度から切り取ってわかりやすくするために、
整理すること」に他ならない。

3D映画やVRは、その手段が、
2Dに比べて希薄なのである。
作為が希薄だからだ。


バカみたいにリアリティリアリティいうやつは、
この「フィクションとは整理である」が分かっていないのだ。
ごちゃごちゃした現実を、
そのまま取り出したって、
何も意味がないのだ。
この絵を見た第一印象のようにだ。


で、これは脚本論なので、
ストーリーでも同じだ。
焦点、プロットライン、テーマといったものは、
「カオスな現実から、
ここを見てくださいと示す」
ための作為の道具だ。

そしてその作為こそ、あなたの意志で選択された、
「あなたによって作られたもの」である。
posted by おおおかとしひこ at 23:10| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。