2020年08月18日

サムライスピリッツの功罪(漫画「鬼滅の刃」-21巻評)

ずっと気になってたが、
鬼滅の殆どの剣技、単なるエフェクト合戦だよね?
だから剣戟に緊張感がないんだよな。


るろうにでも気になったのは、
サムライスピリッツ(以下サムスピ)の影響だ。

要するに必殺技が、
理屈のないエフェクトになってしまう現象だ。

旋風列斬と水月刀のなにが違うというのだ。
ただのエフェクト違いではないか。

その前のスト2までは、一応の「技の理屈」があった。
波動拳は気の弾、
ソニックブームは音速の衝撃波、
昇竜拳は回転アンドジャンプするアッパーだから威力が高い、
竜巻旋風脚は回転蹴りの連続技。

こうしたものがサムスピにはなかった。
エフェクト違いだ。

鬼滅の刃は、とてもサムスピっぽい。
必殺技が絵の違いだけで、技の違いになっていない。


必殺技は男子にとって大切なものである。
真似しなきゃいけないからね。
それが何故必殺なのか、
その原理を知らなくては使えない。

いわば必殺技は科学の入り口だ。

何故それが威力があるのか、
たとえトンデモゆで理論だろうが、
理屈があるべきだ。

だが、水の呼吸も雷の呼吸も火の呼吸も、
なにが違うのか全然わからない。
○の型は太刀筋の違いとか、
直線とか曲線とか、全体攻撃とか、
やっぱりゲームっぽい。

水は形を持たない力とか、
雷は乾いたところでしか使えないとか、
水や雷の性質に応じた何かであって欲しかった。
水を火で蒸発させたり、
火を水で消したりするのは、
こうしたエレメンタルバトルの基本なのだから、
それを使って欲しかった。

なのにそれがなく、単なるエフェクト違いでしかない。

なのでサムスピをやってる感じになってしまう。


無限城の戦いでは、
こうした技の繰り出し合いのバトル(Aストーリー)よりも、
圧倒的に回想(Bストーリー)が面白くなってしまった。

作者の興味もBにしかなく、
Aにはないことがありありとわかってしまう。
Aはあれでしょ、すごいエフェクト描いて時間稼ぎすればいいよね、
みたいになってしまっている。
ドラゴンボールではそうしたときも空間の動きが面白くて、
見てるだけで楽しかったが、
女作者ゆえの空間把握のなさから、
ただ「ガガガガガガ」とやってるようにしか見えない。

俺たちは、
「6をひっくり返せば9になるー!」「なにー!」
という筋肉バスター破りのようなものが見たいというのに。
エフェクトの大小を見たいのではない。


ゲームを一次パクリ元に選んだ感が、
るろうにでも鬼滅でも強かった。
「呼吸」もジョジョの波紋やんけ。
まだジョジョは一次パクリ元を、
仙道呼吸法や琉球空手の息吹などの実在のものから引いていたから、
ファンタジーとして成立した。
ファンタジーの元をファンタジーにしちゃいかんよ。

嘘は、まず本当を知ってから構築するべきだ。

剣技がどのようになっているか、
古流剣術を調べてから必殺技をつくるべきだ。

たとえば一刀流がどういう技術があり、
柳生心眼流がどういう技術があるか調べると、
色々必殺技が科学ベースで思いつけるのに。

たとえば車剣ですら、非常に合理的な身体技術だ。
これを応用すれば回転系の技はすぐに出てくるだろうに。

青年漫画であるが、「シグルイ」の虎眼流のようなリアリティ
(決してリアルではなく、本当っぽい嘘のこと)を、
少しは見習えばいいのに。


そうしたことをせずに、
サムスピベースにしよっと、
という「剣術知らんやろコイツ」感がとても強く、
僕はこのバトルになにひとつ思い入れを感じなかった。

鬼滅の刃は人間ドラマか?
バトルものか?
バトルものにおいて、必殺技が詰まらないのは致命的だ。

単なるエフェクト違いなのに中二的勢いだけで走り切った車田正美や、
とんでも理論を貫くゆでたまごを見習うべきだ。
posted by おおおかとしひこ at 02:22| Comment(2) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
散々言われてますけど原作は絵が下手クソすぎるので戦闘シーン自体なにやってるかわからない致命的さがあります。

文字だけの小説媒体ならともかく、絵に対する説得力が弱いので男からするとアニメで良いじゃんってなりました。

そういうところからヒットする前の原作は女性読者が支えていたって感じはしますね。

特にこの漫画の良いところって鬼に焦点当てて、鬼側を完全悪にしていないところにあると思いますし。

アニメ始まった当初も、鬼の話はどうでもいい派と、それがいいんだろ派がいましたなあ。

Posted by あ at 2020年08月18日 03:08
あさんコメントありがとうございます。

ああ、大体そういう論争があったんですね。
妖怪退治ものは、
「何故妖怪になったのか/退治されるときにどう成仏するか」
がキモになるので、その意味ではエピソードはきちんと出来ていると思います。
ただ死ぬ直前くらいに急に挿入されるので、お涙頂戴のタイミングでしかないのが残念です。
鬼太郎とかだと途中でわかったりして、後半戦はそれをどう成仏させるのか、
みたいな展開を作るものですが。

絵はうまいと思いますよ。だって回想部分のエピソードはよく描けているし。
「戦闘でなにが起こってるかの認識」が下手なんだと思われます。
それをエフェクトの出し合いという意味で書きました。

「突きを下がってかわさずに潜り込み、鍔元で胴を叩こうとするも、
脇差で受けられる、足を絡めて投げようにも太刀の引き切りを恐れて一旦距離を取る」
みたいな、具体的攻防がそもそも想像されておらず、エフェクトを出し合っているだけの認識なのでしょう。
Posted by おおおかとしひこ at 2020年08月18日 08:12
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