2020年08月23日

出落ちを回避するには何が必要か

登場シーンに込めた力量の、
10倍の力量。


10という数字は適当。
もっと多いかも知れないし、もっと少ないかも知れない。
ただ1.5とかじゃない。
登場シーンより、その後の方がべらぼうに労力がかかる。

格闘技の入場シーンと、試合で、
どちらが本人の労力がかかるかという話である。

我々は彼の試合を書くのであり、
入場シーンはそのオープニングに過ぎない。

なんなら、入場シーンなしで、
試合だけを描けば本編だ。

極論すれば、
試合部分を先に書いてから、
入場シーンをどう工夫しようかな、
という書き方をしたっていいのである。


格闘技にたとえたのは、
試合が「対戦」だからだ。
相手があり、それをどう攻略するか、
相手は自分を攻略しようとしていて、
いかに裏をかかれないで裏をかくか、
などのストラグルがあるからである。

格闘技の場合は一対一だけど、
ストーリーの場合は三つ巴、N人巴であるわけだ。

しかも格闘技ならば入場シーンは順番だけど、
ストーリーの場合はそうではない。
試合中に入場するやつもいるし、
退場するやつもいる。

その全ての面白さがストーリーで、
入場シーンの力量の、やっぱ10倍では足りないかも知れない。


なんとなく、順番に書いてしまうから、
「登場シーンだけで力尽きる」が起こるのかも知れない。

先に試合を書いてしまってから、
どういう登場シーンにしようかな、
と考えたほうがいいかもしれない。

登場シーンだけ颯爽と描いておいて、
それに見合わない活躍しか結局書けないから、
出落ちになるのだよ。

登場シーンは未来への期待含みだから価値が高い。
点以上の線で価値がある。
その線を出さないと、ただの点に逆戻りするのだ。


登場シーンは、初登場シーンだけとは限らない。

既に登場している誰かの、
新たな設定が明らかになったり、
実はこういう人だったのだ、
と判明したシーンも含む。

それから何をするかがストーリーであり、
うおおおそうだったのかあああはストーリーではない。(一部の点ではあるが)

そういうものを何か必殺技のように考えがちだけど、
必殺技が出たからといって試合はそれで終わりではなく、
そこからどのような展開に変わっていくのかが試合である。
フィニッシュブローが出落ちではいけないわけだ。

ストーリーというのは、すべてにおける満足で終わるべきだ。
必殺技の謎すらすべて解明され、
何も疑問点がない状態で終了するべきだ。
そのようになっていなければならない。

ということは、
出落ちなんてこんなに比べれば1/100の力量しかないということになるわけだ。



まず本編をつくれ。
カッコイイ登場シーン集は、別につくっておけ。
本編を考え尽くしたあとに、
その登場シーン集からピックアップしたり、
その場でアレンジしたりして、
「あとで登場シーンをつくる」
をやってみるとよい。

過剰な期待をさせたら自分が詐欺だとわかるので、
過剰な登場シーンはやらなくなり、
自動的に出落ち詐欺を防げる。

あるいは、予定よりも派手な登場シーンを書き、
本編をそれに相応しくリライトするアイデアが浮かぶかもしれない。
それはそれでいいことだ。
(他の人物とのバランスを考えれば、
全員に対してそれをやらないといけなくなるがね)


レストランにたとえれば、
登場シーンはゲートのデザインである。
看板や入り口のインパクトや面白さは大事だけど、
本編は料理である。
あなたはシェフであり、看板屋ではない。

看板を作ってから料理をどうしようか、というのと、
料理を作ってから看板をどうしようか、というのでは、
後者の方が楽だね。

あ、ハコモノビジネスは、看板を作ってから、
中身を下請けに投げて中抜きするよね。
オリンピックとか。


最高なのは、看板と料理が渾然一体になることだが、
それは稀なので、分離してひとつずつやろう。

料理を先につくりなさい。
posted by おおおかとしひこ at 00:47| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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