2020年08月28日

あなたの言いたいことを並べてもストーリーにはならない

あなたには言いたいことや描きたいことが沢山あったとする。
それはランダムでややこしいことになっていて、
しかしある順番で並べると、すっきりと全体が分かりやすくなったとする。
あなたはゴールにたどり着いた、と思い、
書き始める。

それは間違いだ。
それはスタートに過ぎない。


なぜなら、
それはまだ「あなたの言いたいことがまとまった」
だけに過ぎないからだ。

「受け取る人の心を変えていく」ことを、
まだ何一つ出来ていないからである。

コミュニケーションでいえば、
一方的な押し付けにすぎず、
相手の顔を見ていないやり方だ。

対話はそうではない。
相手の感情を引き出し、心を動かす。


一体どんなものだろうと初手で興味をひき、
おやなんだか面白そうだぞと足を止めさせ、
どうせしょうもないんだろという疑いを、
何かしらの軽い出来で黙らせて、
どうやらこれは本格的に面白そうだぞと座り直させて、
次々に起こることで翻弄し、
いつの間にか感情移入どっぷりにさせ、
結末を予測させ、裏切り、
あることとその裏のことと両面から考え直させ、
いよいよ決着か、とドキドキさせて、
そうだと拳を握らせて、
よかったよかった、
いやあ見て満足したわーと、
思わせなくては、
ストーリーではない。


それは、あなたの言いたいことを順番に並べただけでは、
実現しないだろう。
言いたいことは押しで、
上に書いたものは引きだ。

引き込みから入って、押したり引いたりをしていくのである。

だから、
押しと引きは半々か?

そうではない。
ほとんどは面白い、引きのあるストーリーだろう。
あなたの押し付けなどなくてもいい。

精々、
低温でじっくり焼き上げ、焦げ目をブーストした熟成肉のストーリー
〜あなたの言いたいことを添えて〜
の分量だろう。

クレソンとかミントとか、その程度の分量だ。

ということで、
あなたの言いたいことを、
一次元の形で並べ終わったところで、
まだ何もはじまっていない。

そこで完成だと思うやつは、
まだ何も完成させたことがない童貞だ。
posted by おおおかとしひこ at 01:42| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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