2020年08月30日

リライトで一番気をつけるのは、気持ちである

わりとないがしろにされるので。
最終的にはここになるんだよね。


なんだかんだいって、
ストーリーとは主人公の気持ちの変遷の記録だ。

事件やその解決や、
他の登場人物のサブストーリーや、
伏線や解消や、
あっと驚く仕掛けを隠しておくとか、
色んなことで具体化されるものなのだが、
結局、
「どういう気持ちからはじまり、
どういう気持ちへ変転し、
どういう気持ちで『end』を見るのか」
に集約される。

そして観客は、
「主人公の気持ちの流れ」に同調して最後まで見る。

主人公が笑えば笑い、
主人公が悲しめば悲しみ、
主人公が怒れば怒り、
主人公が成長すればその感覚を味わい、
主人公が死にそうになればアドレナリンが出て、
主人公が満足した結果で終われば、
その旅の意義を総括して満足する。
(感情移入がうまく行ってれば)

だから、バッドエンドは不満足だし、
主人公よりも他が目立つ話はダメなのだ。

主人公の旅が、
観客の気持ちをコントロールするのである。

主人公の気持ちの上下を、
観客は同調して、一体化して楽しむジェットコースターが、
物語である。
(なぜそうなるかというと、
興味の持てる事件があり、
感情移入している主人公がいて、
最終的にどうなるか気になるからだ)


リライトはだから、
そこに一筋の傷もないように、
滑らかにつくるべきだ。



第一稿には、気持ちが飛んでしまっているところもある。
なんでこうなるのかわからないところもある。
作者の思い込みが強く、観客がその意図を汲めないところもある。
あるいは無理のあるところもある。

また作者の力量不足で、気持ちが繋がらず、
あとで繋げたいが今回はできなかった、という部分もある。

第n稿では、
色んなものの辻褄を合わせようとして、
主人公の気持ちが脇に置かれることがよくある。

あるいは、
主人公の気持ちは既にわかっているから新鮮ではなく、
新鮮なほうのリライトに注力した結果、
主人公の気持ちがぶつ切れになることもよくある。


流れよう。

主人公の気持ちが滑らかに、
そして上下するように、
リライトしよう。

主人公の気持ちが滑らかに上下するように、
設定や場面すら変更するのがリライトだ、
と言っても過言ではない。

逆にいうと、
「ここでこういう気持ちになると面白い/良いぞ」
を、あなたは計画するべきで、
そしてその通りになるように苦労するべきなのだ。

1ミリでも気持ちが離れたら、
退屈という魔が襲ってくる。

気持ちさえ離れなければ、
緩急は緩急として楽しめる。


滑らかに繋ぎ、そしてなるべく上下に振れるように。
そのジェットコースターを楽しむのは、
主人公からストーリーを見ている時だ。

120分の話なら、120分それが続くのが理想だ。


「この場面で俺はこういう気持ちになりたい」
と、作者は最も厳しい観客でなければならない。

そのように主人公を追い込み、行動させ、
七色の気持ちに上下させよう。

経験したことのない、新しい気持ちでもいい。
経験したことのある、よくある気持ちでもいい。
経験としては知っているが、ここまで強いとは思わなかったという、
原始的で強い気持ちでもいい。

それらはうまく組み合わされ、
あるいは同時進行し、
あるいは一点に強く集約されることもある。

そのようなコントロールを効かせるために、
リライトをするのだ。


そしてその120分は、無駄ではなかったのだと思わせる、
何かしらのテーマを残して、
ああ、この気持ちのジェットコースターは○○○として記憶される、
という風に満足させなさい。
posted by おおおかとしひこ at 08:31| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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