2019年の江戸川乱歩賞、三次通過作品です(最終候補に漏れました)。
死蔵するのももったいないので、ネットで読めるようにしました。
いつものてんぐ探偵が30分テレビシリーズだとすると、
この長編は夏休み劇場版みたいなつもりで書きました。
妖怪「不老不死」をめぐる、シンイチと、宿主たちの大冒険。
一人は引きこもりで、人工知能に自我を移そうとした男。
一人は余命いくばくもない、世紀の難曲を弾きこなそうとする男。
一人は後継者が育っていない、孤独な女やくざ。
彼らの共通点は、永遠の命を欲しがったこと。
てんぐ探偵ページの特別長編として、全四章構成で見れます。
https://ncode.syosetu.com/n0683dj/89/
ご堪能ください。
劇場版長編というより4分割スペシャルのような感じでしたね。
科学を発端として答えの出ない哲学的問いかけ「人間の証明」が争点に挙がったことで、今回は真っ白な頭の状態の自分とは違う角度、つまり一定の思想をもった自分の観点からこの話を読んでいたように思います。
これがどう作用したかというと、科学で言うところの「巨人の肩」が、この作品からは感じられなかったということです。
昔の誰かが残した何かが未来を切り開く、その全ての糸はシンイチが束ねる……この作品世界の巨人の肩の上、巨人の眼の裏側にシンイチを見てしまいました。
不老不死、科学、短命、やることが残っている……話を読みながら、ふとかの有名な数学者ガロアを思い浮かびました。
数世代にわたる長き挑戦はそれひとつでドラマになるが、それが別の巨人の肩に吸い上げられていく様を、私の思想はカタルシスとしての昇華を拒否しました。
頭真っ白な状態で読む感想であれば、「壮大な出だしだった為期待しながら読み進めたものの、不老不死はベールであり、本当の闇はそこにはなく、はぐらかされた気分」といったところでしょうか?
軽いものでも「あのシリーズの新作出るまで死ねない!」って人は結局いますからね。
ピアニストと黒薔薇は一話完結型の方がよかったかもしれません。いやぁ黒薔薇には震えました。あの彼女なら落ちた心の闇を鏡越しにドスで切るぐらいやりそう。
余談ですが、『てんぐ探偵』を読んでいて初めて「シンイチはともかく抱えられた人間は飛翔のGに耐えられるのか?」という疑問を抱いてしまいました。
科学を題材に取り上げたからでしょうかね?
いつものてんぐとどう変えるか、
いやいつもどおりでいいのでは、
などと迷いながら書いていたことを思い出します。
人工知能や科学はあくまでガワで、
結局は「自分の続きをしにいく」という責任の取り方について書いたつもりです。
それにしては人工知能殺人事件が面白いガワ過ぎたというところでしょうかね。
黒薔薇よりもピアニストよりも面白い話にしないと納得が訪れなかったのでしょう。
オムニバスは出来の分散のコントロールが難しいと、書いてみてわかりました。
本編はまだまだ続くので、シンイチの冒険の行方をお楽しみに。
なお天狗の力は「認識をまげる」ので、なんでもアリとしておきましょう。