ストーリーを書く上で最も簡単で頻発する挫折は、
「どこへ向かっているか分からない」である。
裏を返せば、「どこかへ向かっている感覚」を、
必ず作ればいいのだ。
ストーリーは列車である。
分からなくなったらその行き先を確かめればいい。
極論すれば、
「どこへ向かっているか分からないが、
この列車は終着点に来れば止まる」が分かればいい。
ストーリーは車である。
分からなくなったら脇に停車して、
地図を見ればいいのだ。
なぜ出発したんだっけ、
どこへ最初は向かっていたんだっけ、
どこを目指してるんだっけ、
今どの辺なんだっけ、
を確かめれば良い。
「そもそもそこへ向かう必要あるんだっけ」
を感じることもある。
実際、
AとBとCで迷っているというよりも、
停滞の多くは、
その必要あるんだっけ、
そもそもそれをしてどうしたいんだっけ、
やる必要なくね?
などの、
意味不明に巻き込まれることだと僕は考えている。
だから、
出発の目的を再確認すればよい。
もし物足りなければ、
何かエピソードを足すなりして、
「どうしてもそこへたどり着きたい」
「どうしてもそこへたどり着かねばならない」
と、動機を強くしたり、
感情移入を強くすることを考えなければならない。
一番ありがちなのは、
作者自身が、
「そうまでしてたどり着きたくなっていない」
ことに尽きるのではないか?
ストーリーづくりというのは、
大変な労力やプレッシャーがかかるものであり、
それを乗り越えるだけの情熱を、
作者自身が失っていることが原因だと僕は思う。
逆にいうと、
面白いストーリーとは、
作者の情熱を随所に感じられるものである。
同じ炎を燃やし続けていては、
燃料がすぐに尽きてしまう。
上手な作者とは、
異なる燃料をくべつづけられる人のことを言うのかも知れない。
先程列車にたとえたが、
実はそうではなく、
ひとつの列車が走り始めたら、
横に走っている列車に飛び乗り、
勢いが落ちかけたらまた横に走っている列車に飛び乗り、
…を繰り返しつつも、
これまで乗っていた列車すべてを、
ゴールへと牽引することが必要なのかもしれない。
どんどん、必要なエネルギーは増えていくものなのだ。
その閾値のどこかで、
あなたのエネルギーが足りなくなったのだろう。
で。
あなたの情熱は、
おそらく新しい目的や動機を発見したときに、
再び燃やすことが可能になると思う。
従来の何かで停滞したということは、
従来の何かでは不十分だったのだ。
新キャラ登場、新ステージ移動、新章突入、
などがその呼び水となりやすいのは自明だろう。
ということは、
停滞している現在は、
新○○加入に備えて、一旦終わりのエピソードを書いてみたらどうだろう。
完結ではなく、停止でもなく、
一旦おしまいにするのだ。
学校にいたとしたら一旦廃校や夏休みになるとか、
誰かを追っていたら見つかるとか、
何かをしようとしていたら大雨で中止になったとか、
何かを買おうとしたら売り切れたとか、買ったら壊れたとか、
なんでもいいから、
一旦終わらせてみることは書けると思う。
一旦終わりなのでいつでも復活できるようにしておく。
で、新○○に突入し、
それでもだめなら別の○○に突入し、
を繰り返すと、
続きを書くことは可能だ。
問題は、
「それらの断片の集積が何にもならない」ことで、
新○○に何度もリセットしたくせに、
列車は全て乗り捨てで責任を取らなかった、
「ファイアパンチ」の例を観察するといいだろう。
「こんな結末になるんなら、
最初から読むべきじゃなかった」という後悔は、
あなたが提供するものの中で最悪の感情だろう。
最初に乗っていた列車から、
今のものまで、すべては牽引するべきだ。
そしてそれらを全て解決させるのである。
それは大変なエネルギーを必要とする。
だから面白いストーリーは偉大なのだ。
あなたの実力が、まだその偉大さに足りていないだけなのだ。
だから、無理やりにでも完結して、
終わる話を何本も書き、
どういう構えで入ってどう出て来ればいいかを何度も経験して、
実力を上げていくしかない。
そのためにはPDCAを回しやすい、
短編を沢山書くといいのである。
本格長編を挫折せずにいきなり書くことはかなり難しい。
そんなすぐに2万字とか書けるものではない。
5分〜15分の話を、何本も書いて、
どこかへ向かっている感覚の維持や、
新○○を維持しながら最初のものを維持する経験を、
バリエーション豊かに積むことだ。
毎回同じやり方でしか突破できないのは作者として未熟なので、
バリエーションを習得するべきだ。
2020年09月10日
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