2020年09月10日

常に「どこかへ向かっている感覚」があること

ストーリーを書く上で最も簡単で頻発する挫折は、
「どこへ向かっているか分からない」である。

裏を返せば、「どこかへ向かっている感覚」を、
必ず作ればいいのだ。


ストーリーは列車である。
分からなくなったらその行き先を確かめればいい。
極論すれば、
「どこへ向かっているか分からないが、
この列車は終着点に来れば止まる」が分かればいい。

ストーリーは車である。
分からなくなったら脇に停車して、
地図を見ればいいのだ。
なぜ出発したんだっけ、
どこへ最初は向かっていたんだっけ、
どこを目指してるんだっけ、
今どの辺なんだっけ、
を確かめれば良い。

「そもそもそこへ向かう必要あるんだっけ」
を感じることもある。

実際、
AとBとCで迷っているというよりも、
停滞の多くは、
その必要あるんだっけ、
そもそもそれをしてどうしたいんだっけ、
やる必要なくね?
などの、
意味不明に巻き込まれることだと僕は考えている。


だから、
出発の目的を再確認すればよい。
もし物足りなければ、
何かエピソードを足すなりして、
「どうしてもそこへたどり着きたい」
「どうしてもそこへたどり着かねばならない」
と、動機を強くしたり、
感情移入を強くすることを考えなければならない。

一番ありがちなのは、
作者自身が、
「そうまでしてたどり着きたくなっていない」
ことに尽きるのではないか?

ストーリーづくりというのは、
大変な労力やプレッシャーがかかるものであり、
それを乗り越えるだけの情熱を、
作者自身が失っていることが原因だと僕は思う。

逆にいうと、
面白いストーリーとは、
作者の情熱を随所に感じられるものである。

同じ炎を燃やし続けていては、
燃料がすぐに尽きてしまう。
上手な作者とは、
異なる燃料をくべつづけられる人のことを言うのかも知れない。

先程列車にたとえたが、
実はそうではなく、
ひとつの列車が走り始めたら、
横に走っている列車に飛び乗り、
勢いが落ちかけたらまた横に走っている列車に飛び乗り、
…を繰り返しつつも、
これまで乗っていた列車すべてを、
ゴールへと牽引することが必要なのかもしれない。

どんどん、必要なエネルギーは増えていくものなのだ。

その閾値のどこかで、
あなたのエネルギーが足りなくなったのだろう。


で。

あなたの情熱は、
おそらく新しい目的や動機を発見したときに、
再び燃やすことが可能になると思う。
従来の何かで停滞したということは、
従来の何かでは不十分だったのだ。

新キャラ登場、新ステージ移動、新章突入、
などがその呼び水となりやすいのは自明だろう。

ということは、
停滞している現在は、
新○○加入に備えて、一旦終わりのエピソードを書いてみたらどうだろう。
完結ではなく、停止でもなく、
一旦おしまいにするのだ。

学校にいたとしたら一旦廃校や夏休みになるとか、
誰かを追っていたら見つかるとか、
何かをしようとしていたら大雨で中止になったとか、
何かを買おうとしたら売り切れたとか、買ったら壊れたとか、
なんでもいいから、
一旦終わらせてみることは書けると思う。
一旦終わりなのでいつでも復活できるようにしておく。

で、新○○に突入し、
それでもだめなら別の○○に突入し、
を繰り返すと、
続きを書くことは可能だ。


問題は、
「それらの断片の集積が何にもならない」ことで、
新○○に何度もリセットしたくせに、
列車は全て乗り捨てで責任を取らなかった、
「ファイアパンチ」の例を観察するといいだろう。

「こんな結末になるんなら、
最初から読むべきじゃなかった」という後悔は、
あなたが提供するものの中で最悪の感情だろう。

最初に乗っていた列車から、
今のものまで、すべては牽引するべきだ。
そしてそれらを全て解決させるのである。

それは大変なエネルギーを必要とする。
だから面白いストーリーは偉大なのだ。

あなたの実力が、まだその偉大さに足りていないだけなのだ。

だから、無理やりにでも完結して、
終わる話を何本も書き、
どういう構えで入ってどう出て来ればいいかを何度も経験して、
実力を上げていくしかない。
そのためにはPDCAを回しやすい、
短編を沢山書くといいのである。

本格長編を挫折せずにいきなり書くことはかなり難しい。
そんなすぐに2万字とか書けるものではない。

5分〜15分の話を、何本も書いて、
どこかへ向かっている感覚の維持や、
新○○を維持しながら最初のものを維持する経験を、
バリエーション豊かに積むことだ。

毎回同じやり方でしか突破できないのは作者として未熟なので、
バリエーションを習得するべきだ。
posted by おおおかとしひこ at 00:05| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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